天皇陛下の御退位に寄せて 鈴木英敬三重県知事謹話

本日、天皇陛下が御退位されるにあたり、常に国民に寄り添い歩んでこられた陛下に、180万県民を代表して衷心より感謝申し上げます。

国際情勢や社会の在り方が刻々と変化した平成の時代にあって、陛下は、常に平和を念願してこられました。私は平成23年に知事に就任して以来、全国戦没者追悼式や新年祝賀の儀に欠かさず参列し、陛下の変わらない誠実なお姿を拝見するたびに、我が国の平和と一層の繁栄のために力の限りを尽くす決意を新たにしてきたところです。平成の御代は戦争のない時代として歴史に刻まれることになると思いますが、平成に続く令和の時代が恒久の平和の時代となるよう、陛下のお姿やお言葉を胸に、責任ある行動でしっかりと取り組んでまいります。

陛下は、皇居での御公務はもとより、皇后陛下とともに全国各地をくまなく御訪問され、広い御心と優しいまなざしで国民に接してこられました。とりわけ、大きな自然災害に際し、被災地の状況にもお気遣いされながらお見舞いになり、被災された人々の手を握られ、励ましのお言葉をかけられる陛下のお姿に、私たちはどんなに励まされ、勇気をいただいたことか、誠に感謝の念に堪えません。皇太子時代の昭和34年、伊勢湾台風の避難所をお見舞いに御来県された時が初めての被災地訪問であったことを思いおこすと、三重県との深い御縁を感じるとともに、感動で胸が熱くなります。

「あまたなる 人らの支へ 思ひつつ 白木(しらき)の冴(さ)ゆる 新宮(にいみや)に詣(もう)づ」

この歌は平成26年3月、陛下が式年遷宮を終えた神宮を御参拝になった際、多くの人々への感謝の気持ちを詠まれたものです。伝統を大切に守りながら、生き生きとした形で現代に生かそうと努められた陛下の御心は、「令和」の2文字から読みとれる、伝統を重んじつつ、新しいことにも果敢にチャレンジし、新時代を創っていくという決意にも通じるものがあるのではないでしょうか。

今月17日から19日まで、天皇皇后両陛下が「神宮に親謁の儀」を執り行うため御来県されました。光栄にも、両陛下として地方への最後の行幸啓であり、ちょうど60年前の昭和34年4月17日から18日にかけて、神宮に御成婚の奉告をされるため初めてお二人で御来県されたことを思いおこすと、感慨もひとしおです。沿道などで熱烈な歓迎の気持ちを示していただいた約6万人の人々に、両陛下がお車の窓を開けられ、鉄道からはお立ちになってお応えになった情景は感動的でありました。
私は帰京の途につかれる直前を含め5回にわたり、両陛下の御言葉を賜る機会をいただき、伊勢湾台風や国体、斎宮歴史博物館などでの思い出とともに三重県の取り組みを御説明したところ、両陛下は、三重県との数々の思い出を楽しそうに懐かしがられ、深く関心をお寄せいただくとともに、瀧原宮や松阪牛など、三重の自然や食の素晴らしさについても大きく話題が広がりました。はからずも、平成の時代に、陛下に地方の取り組み概要を御説明申し上げた最後の知事になり、大変身に余る光栄であり、感激で胸がいっぱいです。御熱心にお聴きくださったお姿をしっかりと心にとどめ、新しい令和の時代が、夢や希望に満ちあふれ、多様性や包容力が大切にされる時代となるよう取り組んでまいります。

むすびに、天皇皇后両陛下が、幾久しく、お心穏やかで健やかにお過ごしになることを心からお祈り申し上げます。