竹内浩三の「愚の旗」復刻版完成 三重県・伊勢出身の詩人、出版、印刷、和紙業者が再現

【「愚の旗」復刻版を完成させた制作委員会のメンバーら=伊勢市役所で】

【伊勢】太平洋戦争で戦死した伊勢市出身の詩人、竹内浩三(1921―45年)の詩や小説などを収めた作品集「愚の旗」の復刻版が完成した。昭和31年に出版された原本を再現しようと、地元の出版社や印刷業者、和紙職人らが力を合わせ実現した。

「愚の旗」は、竹内の親友だった中井利亮が遺作を編集。私家版のため一般には出回らず、ファンの間では「幻の本」とされるという。復刻は、2021年の竹内生誕100周年に合わせた企画で、伊勢市の出版社「伊勢文化舎」や印刷業者の有志らが、春に事前調査を始め、9月から制作に取り組んできた。

原本に可能な限り近づけようと、試行錯誤。印刷の一部を、現在では珍しい活版印刷で刷るため、今も活版を手掛けるイトウ印刷(同市船江)の伊藤敏治さん(59)が担当。一字一字活字を組んで版を作り、行間や文字間など細部まで原本に倣った。表紙内側の「見返し」部分は、伊勢和紙を製造する大豊和紙工業(同市大世古)が協力。松竹梅の透かしが入った見返しを再現するため、伊勢型紙の技法を取り入れて和紙をすいた。表紙は、当時の素材に似た、糸の入ったクラフト紙を使用し、原本に近い質感や色あいを出すためさまざまな加工を重ねた。

制作委員長を務める千巻印刷産業(同市宮後)の塚本誠社長(49)は「思った以上に手間がかかったが、印刷文化の継承につながった」と話す。副委員長で北浜印刷工業(同市村松町)の山中武専務(49)は「復刻版を通し、竹内作品の世界をそのまま感じてほしい」と話している。

復刻版は、縦20㌢、横17㌢。竹内の略年譜や作品解説などを新たに加えた192㌻。初版300部で、価格は8640円(税込み)。12月中旬に発刊予定で、予約を受け付けている。

また、復刻のプロセスや竹内に関する資料などを紹介する企画展を、12月15―28日に市立伊勢図書館で開催。12月2、16の両日には、講演と詩の朗読会もある。

問い合わせは伊勢文化舎=電話0596(23)5166=へ。