三重県 職員月給引き上げへ 3年ぶり、賞与は5年連続

三重県人事委員会は12日、県職員の月給を平均0・09%、賞与を年間0・05カ月分、それぞれ引き上げるよう、鈴木英敬知事と前田剛志県議会議長に勧告した。引き上げの勧告は月給が3年ぶり、賞与は5年連続。勧告通りに引き上げると、総額で年間7億円の負担増となる見通し。鈴木知事は「県の厳しい財政状況などを総合的に勘案して対処する」としている。

人事委員会は従業員50人以上の県内事業所から163の事業所を抽出し、県職員の給与と比較。県職員の月給が民間より482円(0・12%)、賞与は0・06カ月分それぞれ低かった。

このため、人事委員会は「公民較差の解消」を理由に引き上げを勧告。ただ、月給の引き上げ分は「平均367円と少額のため、月給表の改訂には至らない」とし、地域手当の引き上げで調整している。

勧告が適用されれば、平均年収は2万7千円増の648万3千円(平均44・6歳)。警察官や教職員を含む2万1496人が対象で、月給は4月分、賞与は12月分からの適用を求めている。

県は財政難を理由に平成29年度から全職員の賞与と管理職の月給を削減している。これに対し、勧告は「給与勧告制度に基づかない減額措置で、地方公務員法に規定する給与決定の原則とは異なり遺憾」としている。

また、勧告では職員不祥事や事務処理のミスが相次いでいることを受けて「懲戒や分限の処分などによる厳正な対応と、原因や背景を分析した再発防止の取り組みの徹底が必要」としている。

人事委員会の竹川博子委員長は「県議会と知事には給与勧告制度の深い理解と勧告の実施を要請する。県民には人事委員会の役割や給与勧告制度の意義を深く理解してほしい」などとする談話を出した。

鈴木知事は「人事委員会勧告の趣旨を尊重するとともに、国や他府県の動向、県の厳しい財政状況など、諸般の情勢を総合的に勘案し、県民の理解が得られるよう適切に対処する」とのコメントを出した。

■時世逆行の勧告 不祥事続きの県は〝英断〟を

<解説>傷害事件や障害者雇用の水増しといった不祥事ばかりが目立つ県に対し、人事委員会が勧告したのは給与の引き上げ。「ご時世は知らぬ存ぜぬ」で通すどころか、逆行とも捉えられかねない認識にはあきれる。

給与引き上げの勧告は「民間の実態調査」を根拠としているが、しょせんは50人以上の企業から一部を抽出しただけ。本来の意味で給与の実態を把握していないことは、もはや周知の事実ではないか。

調査の詳細を尋ねても、人事委員会は「企業名や給与は調査対象の許可を得ていないので公表できない」との一点張り。県職員の事務処理ミスが相次ぐ中、この回答では調査結果を信用するわけにもいかない。

委員長名の談話は、何よりも給与の引き上げを優先しようとする姿勢が透けて見える。「信頼回復の要請」は通り一遍の一文だけ。直後に勧告の実施を求める記述が平然と並ぶさまは「中立」を標榜する組織が書いた物とは思えない。

民間との「較差」があるとすれば、給与ではなく職員の意識だろう。今後は県が勧告の是非を検討するが、不祥事が相次ぐ中での給与引き上げは、さらなる信頼低下を招きかねない。知事の〝英断〟が求められる。