「御浜町の課題」かんきつの振興など、官民一体で活性化を 担い手不足深刻

【企業として「地域に貢献したい」と話す垣内さん=御浜町で】

【南牟婁郡】任期満了(10月9日)に伴う三重県御浜町長選が25日に告示される。今のところ、立候補を表明しているのは再選を目指す現職の大畑覚氏(67)のみで、32年ぶりの無投票となる見通し。告示を前に、御浜町の課題を探った。

御浜町は温暖な気候を生かし県内でも有数のミカンの産地だ。昭和50年代に極早生温州ミカン「崎久保」が栽培され始め、市場で高値で売り出された。50年から平成3年までの17年間に県道沿いに甘夏を中心とした一大生産団地が造成された。

町は「年中みかんのとれるまち」とキャッチフレーズを掲げており、町内では年間を通してポンカンや不知火(しらぬい)、甘夏など20種類以上のミカンが栽培されている。

だが、町内では高齢化や人口減少とともに農家の担い手が減っている。農林水産省が公表した農林業センサスによると、平成17年に約940人いた町内の果樹類従事者は、27年には約620人と減少が続いている。

町農林水産課によると、町内のかんきつ生産量は昭和62年の2万6563トンをピークに減少し、平成29年は8265トンにとどまった。29年度の耕作放棄地は185万平方メートルに拡大している。

町は、基幹産業である一次産業の担い手を確保しようと、22年から県やJA、近隣の熊野市、紀宝町と「元気なミカンの里創生プロジェクト」を立ち上げ、就農フェアを開催。町内では24年から28年の五年間で30人が法人に就職したりミカン栽培を始めたりしていが、大畑氏は「作る場所がある割に新規就農者は少ない」と話す。

このほか、地方創生交付金などを活用した新規就農者への助成や、28年に「かんきつ振興協議会」を立ち上げ、行政と事業者、農家と話し合いの場を設けているが、まだまだ担い手が不足しているのが現状だ。

担い手が減る一方で、同町上市木の「かきうち農園」は4年前から毎年、独自の取り組みで地元の高校や大学を卒業した新入社員や若手を採用している。垣内清明代表取締役社長(47)は「知らない会社の商品は誰も買わない。知ってもらうには情報発信が大切」と語り、自ら合同企業説明会に赴き、自社や農業の良さをPR。「就農者を応援したい」とインターンシップも積極的に受け入れている。

京都で会社員をしていた垣内さんが12年にUターンして営農を始め、23年に法人化した。0・7ヘクタールの畑から始め、現在は12ヘクタールの畑でせとかやハウスミカンなど15種類、年間約350トンを生産し、ジャムやジュースなど加工品の開発にも取り組んでいる。

また、同町、紀宝町、熊野市の紀南地域のかんきつ農家の約七割がJAに出荷するのに対し、同社は「味覚や欲しい商品は人それぞれ違うため、顧客対応できるように」と、産地直送にしており、販路も観光施設や百貨店など多岐にわたる。

垣内さんは「農業は栽培して出荷するだけではなく、新商品の開発や営業、企画などさまざまな仕事ができ、可能性は未知数」と話し、「担い手確保のためには農商工などが連携して受け皿を作るなど、地域全体で取り組む必要がある」と語った。

大畑町長は、道の駅「パーク七里御浜」(同町阿田和)を観光集客の拠点とするまちづくりを目指している。同駅の交流広場駐車場には、地元産のかんきつ類などの販売を想定した「地場産品直売所」が今年3月に完成。一度は運営者が決まっていたが辞退しており、来年3月1日の開所に向けて運営者を再募集している。特産のミカンを使ったかんきつの振興など、官民一体となって町の活性化に取り組めるかが課題だ。