県職員の宿泊費なぜ定額? 県職労と交渉紛糾で実費精算断念

【宿泊料の実費精算を断念した県庁=津市広明町で】

県職員が出張の際に受け取る宿泊料を巡り、県と県職員労働組合(県職労)の交渉が紛糾している。県は宿泊料の支払いを定額払いから実費精算に切り替えることを県職労に提案したが、強い反発を受けて断念した。民間では実費精算がもはや常識だが、県職員は一泊当たり1万3100円という「実態とはかけ離れた宿泊料」(県職員)を定額で受け取っているのが現状だ。県職労は実費精算を拒んだ理由に「手続きの煩雑さ」を挙げるが、職員からは「宿泊費を浮かせて懇親会などに回している」といった声も聞かれる。

県が実費精算への切り替えを県職労に提案したのは今年3月。移動費などを含めた出張旅費の全般的な見直しの一環だった。県が出張旅費の見直しを提案するのは約10年ぶり。出張旅費を、より実態に近い金額にすることが見直しの目的だった。

それもそのはず。地方なら5000円程度で一般的なビジネスホテルに宿泊できるのに対し、県職員は出張先での宿泊料として、一泊につき1万3100円を受け取っているのだ。宿泊施設の選択は職員らに委ねられており、領収書を提出する必要もない。

この状況、民間とは〝ずれ〟があるようだ。複数の県内企業に取材したが、宿泊料を定額にしているケースはなかった。ある東証一部上場企業の担当者は「実費精算が常識でしょ」と一蹴。インフラ関連の会社員は「定額払いとは、うらやましい限り」と皮肉った。

ただ、県と県職労の交渉は紛糾した。「手続きが煩雑」「職員を信用していないのか」と強い反発を受けて、県は宿泊料の実費精算を断念。代わりに宿泊料を都市部で1万900円、地方で9800円に減額することを提案したが、この交渉も難航しているという。

宿泊料を実費精算にしている自治体は全国的に少ない。県が昨年度中に全国の都道府県を調べたところ、宿泊料の実費精算を導入しているのは長野、島根、山口、高知の4県だけだった。国家公務員も定額で受け取っている。

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領収書に基づく実費精算なら明々白々だが、公務員はなぜ実態と差が生まれる定額払いなのか。ある県職員は「宿泊費を浮かせて懇親会に回している。出張先では関係団体との懇親会に出席することが多いが、なかなか経費では請求できない」と明かす。

定額払いの宿泊料が「カラ出張」につながったという指摘も。ある県職員は「出張の書類に署名して提出するだけで、出張旅費がどんどん上司の机に集まっていった。あのとき領収書の提出が必要だったら、簡単に虚偽の請求はできなかっただろう」と振り返る。

一方、名張市では平成26年9月に旅費の規定を見直し、一泊につき1万2900円の定額だった宿泊料を、実費精算に切り替えた。出張後は宿泊施設の領収書に加え、出張先の会議で受け取った出席者名簿などの提出も義務付ける厳格さだ。

きっかけは同じ年の7月に発覚したカラ出張。市の用地対策室長=当時=が京都市への出張と偽り、大阪市の「あべのハルカス」に行っていた。市人事研修室の担当者は「当時は全国ニュースにもなり、強い危機感を持って対策に臨んだ」と説明する。

県が支出する宿泊料は年間で約1億円にも上る。財政難の県にとっては高額だ。県職労だけでなく、税金を支払う県民に対しても説明責任があることを県は忘れてはならない。このまま放置しては、名張市のようにカラ出張で「痛い目」を見ることになりかねない。