「犯罪被害者は泣き寝入り」 三重・朝日町女子中学生致死事件遺族 支援条例制定を訴え

【事件で亡くなった女子生徒の遺影と共に被害者支援を訴える父親(左)=四日市市の市総合会館で】

朝日町で平成25年8月、帰宅途中の中学3年生の女子生徒=当時(15)=が当時高校3年生の元少年(22)=犯行時(18)=に襲われて死亡した事件で、被害者の父親(49)が七日、元少年の両親に対する損害賠償訴訟の和解成立を受けて会見した。父親は県内の被害者支援体制の遅れを指摘し、「被害者は泣き寝入りを強いられている。一日も早く支援条例の制定を」と訴えた。(県警・小林 哲也)

朝日町埋縄で帰宅途中の女子生徒を空き地に連れ込み、わいせつ行為後に窒息死させたとして、強制わいせつ致死の罪に問われた加害者の元少年は27年10月、懲役5年以上9年以下の不定期刑が確定した。被害者遺族は損害賠償命令制度に基づき元少年に慰謝料など約1億円の損害賠償を求めて訴えを起こし、津地裁は同年6月、元少年に7700万円の賠償を命じる決定を下した。

一方、元少年だけでは支払い能力に限界があるとして遺族は同年10月、元少年の問題行動を把握していながら積極的に指導監督していなかった監護教育義務違反があったとして、元少年の両親にも3200万円の損害賠償を求めて提訴。今年5月24日、金額は非公表ながら元少年の両親が請求額の一部を分割で支払うとして、津地裁四日市支部で和解が成立した。

遺族の代理人である國田武二郎弁護士(70)は会見で、和解理由について「極めて低額ではあるが、遺族の気持ちをくんで相手側に謝罪の場を用意してくれた裁判所の努力と、親の経済的能力を踏まえてやむを得ないところ」と説明した。

■  ■

父親は会見で、犯罪被害者支援に向けた条例制定を求め、鈴木英敬知事に5枚つづりの手紙を送ったことを明らかにした。

会見には当初、被害者の母親である妻も同席する予定だったが、体調不良を理由に欠席したという。父親は事件後から現在も、夫婦で病院に通い、処方薬を服用していることを明かし、「悔しい思いをしている人は全国にたくさんいる。事件がなくならないなら法整備をしっかりしないといけない」と語った。また國田弁護士も「被害者遺族は五年経っても元の生活を取り戻すことができず、心身にダメージを負ったまま生活し、経済的困難にも直面している」と呼び掛けた。

犯罪被害者支援条例は、犯罪に巻き込まれた被害者や遺族らに対して、支援金支給や相談窓口を設置するなど、各自治体の裁量で独自に制定している。

兵庫県明石市が制定した条例は、被害者の経済的負担軽減を目的に、「30万円を超えない範囲での支援金支給」「50万円を超えない範囲での無利子資金の貸し付け」といった経済支援のほか、「加害者に対する損害賠償請求権に係る債務名義を取得した犯罪被害者等が請求権の立替え払いを請求した場合、上限を300万円として立替え支援金を支給する」といった訴訟に関する立替え支援金を盛り込んでいるのが特徴だ。

県内では松阪市が2月、犯罪被害者に支援情報を提供し、公益社団法人「みえ犯罪被害者総合支援センター」へとつなぐ「犯罪被害者支援窓口」を、県内市町としては初めて9月に設置する意向を表明。しかし、県をはじめ自治体レベルでの条例制定の動きは見られないのが現状だ。

手紙には、「被害者に対する救済が三重県では非常に遅れている」などと記されていたという。鈴木知事は県庁で開いた七日のぶら下がり会見で、「手紙を重く受け止め、条例の制定について検討する」と前向きな姿勢を示し、「すぐに担当部に確認し、今回の事案を重く受け止めてしっかり検討するよう指示を出した」と説明した。

知事の受け止めを聞いた父親は、「気持ちを確実に受け止めてくれて希望の光が見えた。積極的な見解を示してもらえてうれしい。そうこうするうちにも犯罪は増えており、待ったはきかない状況。一日も早い条例制定を望む」と語った。

条例制定に向けて、課題となるのは各種助成を踏まえた一定の財源確保だ。実は朝日町事件発生前の平成23年ごろにも条例制定に向けた動きがあったが、そのときも財源などの問題から頓挫した経緯がある。事件を風化させないためにも、形だけの検討ではなく具体的な行動が求められる。