2017年8月24日(木)

▼「登校できない状況の生徒を最大限に支援しなければならない」というのは、いじめ被害者とされる県立高三の女子生徒を指すのだろう。続く「子どもたちが安心できる状況をつくることも大切」は、いじめ加害者を含むかどうかはともかく、生徒全体ということになるか。あちらも立ててこちらも立て、鈴木英敬知事も大変だ

▼いじめ防止対策推進法制定のきっかけになった大津市が昨年、小中学生5千人を対象にアンケート調査した。「どんな理由があってもいじめは絶対によくないと思うか」の設問に大半が「そう思う」。続けて「いじめられる人にも原因があると思うか」と尋ねると、六割が「そう思う」。いじめはよくないと答えたうちの半数以上が、いじめられる側にも原因があると考えているということである

▼いじめ撲滅を目指してきた大津市でこうだ。県はもっと比率が高くなるか。アンケート回数を増やし、いじめを見逃さない体制は万全とする県教委だが、子どもらに真の理解が進んでいなければ、いくらでも上手の手から水は漏れる。慢心すれば失敗するというのがことわざの趣旨である

▼教職員でも本音は似たような比率ではないか。だから、法は「対象生徒が心身の苦痛を感じているもの」といじめを定義した。いじめの原因を被害者側に求めるのは誤りという判断である

▼鈴木知事は子どもを肯定的に見て信じることと、危機管理で厳しく見るのとは全く別として、教員には厳格に分けて考えることを求めている。肯定的に見て信じるばかりでは危機管理はできないと言っているようではある。