<まる見え>ラッコも〝少子高齢化〟 国内水族館、繁殖試み 〝お見合い〟も交尾に消極的

【愛らしいしぐさで人気を集めるラッコ=鳥羽市鳥羽3丁目の鳥羽水族館で】

愛らしい姿としぐさで水族館ファンを魅了するラッコ―。国内の水族館では〝少子高齢化〟が進み、飼育数が激減している。国内でラッコの飼育が始まって35年。かつて100百頭を超えた飼育数は約9割が減って十頭余りとなった。全国各地の水族館が繁殖を試みるが、高齢化や交尾への消極化で難航している。

ラッコをペアで展示する神戸市立須磨海浜水族園。雄の「ラッキー」(19歳)と雌の「明日花」(18歳)の2頭を飼育している。ラッコが暮らすアラスカの環境に近付けようと、照明や水温を調整する工夫を凝らし、繁殖を促してきた。

だが、ラッキーは国内の雄で最高齢。明日花も繁殖の適齢期を過ぎて頭打ち状態だ。他館のラッコと〝お見合い〟をしようにも長時間移動など環境変化の負担が大きく、見通しは厳しい。

飼育担当の野路晃秀さん(30)は「2頭は仲が良く相性も悪くないが、繁殖行動には至っていない。高齢なので繁殖できる見込みは薄いのかもしれない」と話した。

ラッコは昭和57年に国内で初めて伊豆・三津シーパラダイス(静岡県沼津市)で展示された。同59年には鳥羽水族館で赤ちゃんが生まれてラッコブームに火が付いた。だが、乱獲などで野生の生息数が激減し国際取引が規制されると、米国からの輸入は平成10年、ロシアからは同15年を最後に途絶えた。全盛期の同六年に全国の28施設で122頭飼育されていたが、年々減少し、現在は八施設の12頭まで減少している。

水族館同士でラッコを貸し借りし、ペアを作る「ブリーディングローン」など繁殖に取り組むが、適齢期を過ぎたラッコの〝高齢化〟が進み、国内での繁殖は平成25年のアクアワールド茨城県大洗水族館(同県大洗町)を最後に例はない。

国内での繁殖が困難となっているのは高齢化だけが要因ではない。野生下から離れ〝水族館生まれ、水族館育ち〟の個体が増え、世代交代が進んだ結果、繁殖行動を覚える機会が減り、雄の積極性が失われたり、雌が雄からのアプローチを攻撃と勘違いして敵対したりして繁殖行動に結び付かないのだという。

夏の行楽シーズンに入った三重県の鳥羽水族館(鳥羽市鳥羽3丁目)。雄のラッコ「ロイズ」(12歳)と雌の「メイ」(13歳)がじゃれ合い、「夫婦なのかな」と子どもが目を細めた。

ロイズは平成28年3月、サンシャイン水族館(東京都)から、ブリーディングローンの一環で鳥羽水族館に〝婿入り〟した。メイの鼻をかむなどしてアプローチするが、メイからの抵抗で諦めてしまい、交尾にはつながっていない。

全国でのラッコの繁殖計画を取りまとめる同館の飼育員石原良浩さん(56)は「繁殖が難しくなってきているのが現状。だが、雄と雌がそれぞれ抱える課題を乗り越えた先に繁殖がある。国内でこれまで飼育してきた約300頭のうち約200頭が繁殖で生まれた個体で、飼育と繁殖の知識や技術は世界的にも高い。繁殖の期待はある」と語った。