カワウソの赤ちゃん人工哺乳 伊勢シーパラ、前例なく奮闘

 4月10日に2頭のツメナシカワウソの赤ちゃん(雄)が生まれた、伊勢市二見町江の水族館「伊勢シーパラダイス」は、体調を崩した赤ちゃんの安全を優先するため人工保育に切り替え、24時間態勢で飼育員が育てている。生まれたばかりの初乳段階での人工保育は同館初の試み。担当飼育員の奮闘ぶりを紹介する。

 ツメナシカワウソの国内飼育数は少なく、わずか9頭。中でも同館は平成3年から飼育を始め、全国の水族館や動物園の中でも最長の飼育記録(20年)を持つ。現在は今回出産の2頭を含め5頭が暮らしている。

 「ズリ」(雌、推定9歳)と「ブブゼラ」(雄、推定7歳)のペアにとって今回は4例目の出産。これまで2例は赤ちゃんがうまく育たず、「今度こそ元気に育ってほしい」と飼育員は強く願っているという。

 そんな赤ちゃんに変化があったのは18日。1頭の体重が増えず、左目の炎症と脱水症状が疑われ、人工保育を開始。3日後にはもう1頭の元気消失と鼻血を確認し、母親から離した。

 飼育担当の小野田忍さん(41)によると、日本では初乳段階での人工保育の前例がなく、参考にする情報やデータがない手探り状態。おなかを壊すだけで命に関わるため、排せつ物の状態や鳴き声などを観察し、少しの変化も見逃さないようにと緊張する日々が続く。

 食事はネコ用粉ミルクを使用。濃度や与える量は体重の増加を見ながら調整し、哺乳瓶の乳首も人間と動物用の6種類を用意して、どれが赤ちゃんに一番合うか試してから使っている。

 仕事が終わると、いつもはスタッフルームにいる赤ちゃんを小野田さんが自宅に連れ帰り、3時間おきにミルクを与えて食後に排せつを促す。苦労のかいあって現在、健康状態は良好で体重も順調に増えているという。

 約2カ月後には離乳となり、魚をすり身にして与える予定。小野田さんは「次の大きな壁は離乳。そこを越えれば安心だが常に気は抜けない。1日も早くお客さんに見てもらえるように頑張りたい」と話した。