-木工職人育成に意欲 地元材使用で林業活性化も- 木の家専門店「公輝(コーキ)」社長 川口公伺郞さん

【「大工職人の育成に力を注ぎ、将来は同業者に優秀な人材を派遣するビジネスモデルとしたい」と話す川口さん=津市一身田で】

 津市一身田の木の家専門店「公輝」は、大工職人だった祖父の故道生さんが終戦後に創業した住宅建築請負業「川口組」が前身。祖父亡き後、父隆志さん(64)と伯父たち3人が引き継ぎ、建築業に加え官公庁の道路整備などの土木事業にも進出した。

 平成10年に父が独立して「公輝」を創業。同28年、会長に退いた父から経営を引き継いだ。現在は、木造注文住宅やリフォーム、店舗の設計・施工を手掛け、北中勢地域を中心に業績を伸ばしている。

 津市で5人きょうだいの長男として生まれた。幼少時は活発な性格で、通っていた仏教系の幼稚園の読経や座禅の時間が大の苦手だったと振り返る。小中学時代はソフトボールやバスケットボールに打ち込んだ。

 家業を継ぐようにと言われたことはなかったが、長男としてやはり父の仕事を継ぐべきだと考え、高校3年の夏休みから受験勉強に励んだ。愛知工業大工学部に進学し、建築工学部で設計や意匠を学ぶ傍ら、アルバイトで貯めたお金で仲間とスキーに出掛けるのが楽しみだった。

 卒業後は、父の紹介で津市の建築設計事務所「アーキ設計」に入社。先輩らの指導を受けながら、雑務から図面描き、顧客との打ち合わせなどの実務と学びを重ね、6年目に1級建築士の資格を取得した。さらに2年の経験を積んで退社、「公輝」に入社した。

 入社後は、それまで無かった設計部門を増設し、設計・施工会社として事業の幅を広げた。施主の要望を取り入れながらながら、住宅完成まで一貫して携わることができるようになった。家づくり相談会も開いている。

 間取りや収納、水回りなど施主の思い描くマイホームにさまざまな提案をしながら図面を描き上げ、県産のヒノキやスギの無垢材をふんだんに使って、木を知り尽くした熟練の大工職人が施工する。「やっぱり木造にして良かった」「木のぬくもりに癒やされる」と喜ばれ、新築やリフォームを考えている親戚や知人を紹介してくれる顧客も多い。

 妻裕美さんと長男瑚太朗さん(6つ)、次男琳太朗さん(3つ)の4人家族。息子2人はプラレールが大好きで、大きくなったら新幹線の運転手になるのが夢だという。休日は、家族で東京や京都の鉄道博物館に出掛ける。「2人の成長が何より楽しみ。居心地の良い家庭を作ってくれる妻の労をねぎらいたい」と話す。

 地元の木を使うことで林業の活性化を図り、山林を荒廃から守る保全活動につなげたい。需要と供給のバランスによって豊かな山を守るサイクルが成立すると考えている。「今後は減少している大工職人の育成に力を注いで、より多くの受注に応えるとともに、将来は同業者に優秀な人材を派遣するビジネスモデルとしたい」と意欲を語った。

略歴: 昭和53年生まれ。平成13年愛知工業大工学部卒業。同年「アーキ設計」入社。同18年1級建築士資格取得。同19年「公輝」入社。同年津青年会議所入会。同28年「公輝」社長就任。