-必要とされる町の工具屋 父の営業姿勢を継ぎ真心で- 「門脇商店」社長 門脇匡伸さん

【「『真心を持ってお客さんに接する』ことを第一に、社員とその家族の幸せを守り続けていきたい」と話す門脇さん=四日市市新正で】

 四日市市新正の「門脇商店」は、父篤さん(83)が、母美代さん(80)、叔父らと昭和48年に創業した。四日市と鈴鹿を中心に、車両部品の大手メーカーや中小工場などに機械・作業工具や鋼材などを販売してきた。
平成10年、会長に退いた父から経営を引き継いだ。車両部品の多様化に伴い、樹脂製品のニーズにも対応するようになり、父の代からの顧客との関係を大切にしながら北中勢地区に販路を広げ、業績を伸ばしている。

 同市朝日町で1人息子として生まれた。幼少時は、仲間と田んぼでザリガニを捕ったり、川で魚釣りをしたり、自然豊かな環境で元気に育った。小中時代は冬休みになると、岐阜県荘川村に住む親戚の家へ家族で出掛け、父と竹スキーを楽しんだ。

 両親に家業を継ぐようにと言われたことはなかったが、いつの頃からか自分が跡を継ぐのだろうと漠然と思っていた。名古屋市の愛工大学名電高から同大経営工学科に進み、「人生初めての1人暮らしを経験した。食事作りや掃除、洗濯など、自分でやってみて初めて親のありがたさを実感した」と振り返る。

 勉学の傍ら、旅行会社のツアー企画と添乗員のアルバイトをした。夏場は沖縄・与論島など南の島へのツアー、冬は岐阜や長野へのスキーツアーを企画し、参加した他大学の学生との交流を通して視野が広がった。大学卒業後は名古屋市の工具会社などで修業し、24歳で門脇商店に入社した。

 父は注文を待つだけでなく、普段から御用聞き感覚で企業の休憩時間に出向き、メンテナンスの担当社員らと雑談したり、時には私的な相談を受けたりしていた。営業に行く先々で、「門脇さんだから安心」「すぐに届けてくれるのでありがたい」などの言葉を掛けられるたび、「単品でも即配達」をモットーに、利益を度外視してやってきた父の仕事への姿勢が顧客の信頼を得ていることを実感した。

 初めは、父のやり方が時代に逆行しているのではと感じていたが、事業を拡大せず現状維持という父の信条が少しずつ理解できるようになった。その思いを引き継ぎ、困ったときに一番に電話してもらえるような充実のサービスで必要とされる町の工具屋を目指そうと思うようになった。

 母から経理事務を引き継いで共に働く妻昌子さん(48)と、高1の長女、中2の長男の4人家族。土日も忙しく、一緒に過ごすことは少ないが、子どもたちには好きなことを見つけて友達を増やし、大きく成長してほしいと思う。「子育てと仕事を両立し、温かい家庭をつくってくれる妻に感謝です」と話す。

 「『真心を持ってお客さんに接する』ことを第一に、社員とその家族の幸せを守り続けていきたい」と笑顔を見せた。

略歴: 昭和38年四日市市で生まれる。同60年愛知工業大学経営工学科卒業。同年名古屋市の工具会社入社。同62年門脇商店入社。平成5年中小企業家同友会北勢支部入会。同15年門脇商店社長就任。同28年県機械工具商組合理事長就任。