-伝統の茶文化後世に 生産から販売ワンストップで- 製茶販売業「まるは茶業」社長 萩村健さん

【「伝統のお茶文化を後世に引き継いでいきたい」と話す萩村さん=四日市市水沢町で】

四日市市水沢町の「まるは茶業」は、茶農家だった祖父の故拙夫さんと父昇さん(68)が、県内外から仕入れた茶葉を製茶して、全国に向けて卸売りをする個人事業として昭和51年に創業した。

平成10年、健さんは伊勢茶の中でも特に高級なかぶせ茶の加工とインターネット販売を手掛ける会社「茶人(ちゃじん)」を起業。同23年に家業と合併し、「まるは茶業」の社名で、大手飲料メーカーの契約栽培の取りまとめなど、伊勢茶の消費拡大を図るための新規事業に乗り出し、業績を伸ばしている。

水沢町で3人きょうだいの長男として生まれた。幼少時から活発で、小・中時代はソフトボールやテニスに打ち込み、四日市高校では山岳部に入部した。3年の春、山岳部の東海地区大会で登った穂高岳で、天候悪化のために遭難しかけた経験がある。「凍えるほどの寒さの中で、山の怖さを実感した」と振り返る。

家業を継ぐかどうかは決めていなかったが、いつかは会社経営をしたいと、愛知学院大学の商学部に進学した。在学中に「茶人」を設立し、3年生になった時、早く社会に出て働きたいという気持ちが強くなり、大学を中退した。

「茶人」の仕事に打ち込む傍ら、家業のまるは茶業の社員としても働いた。地場産品の素晴らしさを広く知ってもらおうと、かぶせ茶をはじめ、万古焼きの急須や湯飲み、茶道具などお茶に関連する約2万点もの商品をそろえ、インターネット販売を始めた。ネットを通して知名度が上がり、海外からも注文が入るようになった。

平成25年、地場産品を使った商品作りに取り組む県立四日市商業高校と連携して、かぶせ茶のペットボトル「泗水の香り」を開発、販売した。同28年には抹茶を入れた焼き菓子「茶娘和子(ちゃっこわーず)」の商品化に協力。「生徒らが、商品開発から販売実習までを体験するマーケティング授業が、社会人になって生かされればうれしい」と話す。

3年後の東京五輪・パラリンピック出場選手らに提供する食材の調達基準になるとされる農業・食の国際安全認証GLOBALG.A.Pと、FSSC22000などを、中小企業として唯一同時取得した。現在は審査員、コンサルタントとして月10日間ほど、認証取得を希望する全国各地の農場などに出向いて審査、指導をしている。

国・県の助成を受けて、新商品の技術開発や革新的なものづくりに力を注いできた。今年4月には、東京五輪・パラリンピック向けのプレミアム伊勢茶の開発事業者として県の委託を受けた。「かぶせ茶の生産全国1位の地で、卸業だけでなく生産から加工、販売までをワンストップで提供できる企業を目指し、伝統のお茶文化を後世に引き継いでいきたい」と語った。

略歴: 昭和54年生まれ。平成10年茶人創業。同11年愛知学院大学中退。同年まるは茶業入社。同23年まるは茶業に社名変更。同29年県茶業青年団団長。