和風スープ評判に 「多くの人との出会いに感謝」 「伊藤鰹節店」社長 本格魚介系ラーメン専門店「きみちゃんらーめん」店主 川村公博さん

「『一麺入魂&おもてなし』の心を尽くしていきたい」と話す川村さん=四日市市東阿倉川で

 四日市市東阿倉川の「伊藤鰹節店」は明治25年、同市北条で初代伊藤寅吉氏が乾物屋「節寅」の屋号で創業した。義父で3代目の故吉郎氏が有限会社「伊藤鰹(かつお)節店」とし、平成25年に事業を引き継いだ。削り節などの乾物類と調味料を中心とした食品卸業に加え、ラーメン専門店2店舗を展開している。

 四日市市山分町で2人きょうだいの長男として生まれた。幼いころからいたずらっ子で、小中学校時代は教室の入り口に黒板消しをはさんで先生を驚かせた時は「お前だろ。お前しかおらん」と叱られた。遅刻して立たされるなど「今度は何をしでかすか」と両親を心配させた。

 朝明中学校から四日市南高校に進んだ。大学進学では、父勝義さん(73)、母栄子さん(71)と、これまでの不真面目な生活を改め、大学4年間は休まず、真面目に勉強すると約束し、名古屋商科大学に入学した。アルバイトで貯金し、2週間で地球を一周する旅を体験し、視野が広がった。

 卒業後は四日市商工会議所に就職した。入社から2年後、4年4月4日の4並びを記念して第1回市民参加型イベント「オープンバザール四日市」の事務局を務めた。5年からはイベント当日に有給を取り、雑煮やわんこそば、ラーメンなどの模擬店を出し、中でもラーメンが大人気だった。

 13年に商工会議所を退職し、伊藤鰹節店に入社した後も、バザールに加えフリーマーケットなどへ出店した。かつお節を扱う仕事柄、産地の異なる良質の本節をブレンドした納得の和風スープを完成させた。

 「うまい」「きみちゃん、店出せよ」と友人らから勧められた。不動産業を営む同級生が諏訪栄商店街の空き店舗を見つけ、背中を押され、出店を決意した。友達が器やユニフォームをデザインしてくれ、一人娘の誕生日に合わせて24年6月9日、「きみちゃんらーめん」をオープンした。

 地場産品にこだわり、特注の麺とかつおだしが効いたスープ、自家製煮卵とチャーシューの本格魚介系ラーメンが特長。「お酒の締めにぴったり」「癖になる味」と評判が口コミで広がった。冗談を連発する店主の人柄に引かれ常連客も多い。

 タウン誌主催のラーメン総選挙で優勝し、伊勢新聞社主催のうまい店ランキングで2位に選ばれた。同市浜旭町に2号店の塩浜店を26年に開店。27年には手狭になった諏訪栄の本店を増床した。ヘルシー志向に合わせ試行錯誤して完成した東海初のコンニャク麺のラーメンを4月から提供している。

 座右の銘は「謙虚・感謝・努力。人生の喜び、幸せは人との出会いと経験の数に比例する」。「本業の鰹節店とともに、ラーメンを通じて多くの方々との出会いと交流の輪の広がりに感謝です。市内3店舗目の開店を目標に、『一麺入魂&おもてなし』の心を尽くしていきたい」と目を輝かせた。

略歴:昭和42年生まれ。名古屋商科大学商学部卒業後、四日市商工会議所入所。平成14年に伊藤鰹節店入社し、25年に社長に就任。