上司に恵まれ、今の自分 障害者の自立支援に情熱 ユーユー・カイカン運営会社リプロ会長/ユーユーハウス社長 佐野幸男さん

「障害のある人の親亡き後の自立を支援するために情熱を傾けていきます」と語る佐野さん=四日市市智積町で

 四日市市智積町の天然温泉健康ランド「ユーユー・カイカン」は、昭和62年、松下電工と富士電機、東芝、本田技研の4労組が出資して温泉施設「健康センター湯遊快館」として誕生した。来館者減少による営業不振で、4労組から経営を移譲された生協リプロサービスが平成6年、「ユーユー・カイカン」と改称して再開した。

 平成8年、勤務していたリプロサービスから独立して「リプロ」を設立し、オーナーとして経営の立て直しに乗り出した。歌謡ショーや大衆演劇、落語、中国雑技団公演などの企画に加え、年会費を払えば半額で入館できるお得な会員制度導入でリピーター率を飛躍的に伸ばした。

 利用客は、自然庭園をイメージした露天風呂や漢方薬湯、炭酸泉、サウナなどで疲れを癒やし、レストランホールで昼食や演劇を楽しむ。それまで1万5千人ほどだった月間来館者数を翌年には約2万5千人、その後も毎年記録更新を続け10年で月平均3万人に増やした。

 鈴鹿市南若松で9人きょうだいの末っ子として生まれた。幼少時は、友達と近くの海で魚釣りをしたり、潜って貝を採ったりと、いつも真っ黒に日焼けして遊んでいた。中2の時、「月謝くらいは自分で稼ぎたい」と決意し、卒業までの2年間、朝夕の新聞配達を続けた。「ご苦労さん」と声を掛け、おやつをくれる人もいた。「あの時のふかし芋は最高においしかった」と懐かしむ。

 神戸高校を卒業後、就職した岡田屋(後のジャスコ、現イオン)で12年間勤務した。岡田屋での卓越した営業実績と誠実な人柄を買われ、スーパーサンシに入社した。サンシでは、宅配事業システムの稼働に携わり、困難の末、軌道に乗せた。その後も、必要とされる数社で新たな挑戦を続け、大きな成果を残してきた。「各企業で素晴らしい上司に恵まれ、今の自分がある」と振り返る。

 5年前、長男武さん(46)にユーユー・カイカンの経営を引き継いだ。65歳で会長に退いた後、社会貢献事業の一環として、障害のある人たちに雇用の場を提供できないかと考えた。サービス業のユーユー・カイカンでは雇えなかったこともあり、農業に着目した。

 障害者就労継続支援A・B型事業所「ユーユーハウス」を設立し、退職金を使って菌床シイタケの栽培を始めた。現在は、ヒラタケやイチゴの栽培も手掛けるようになり、22人の障害者が指導員らと共に個々の特性を見いだしながら、生き生きと働いている。

 収穫した農作物は、ユーユー・カイカンの土産物売り場や市内9店舗のJA四季彩で販売している。「なかなか収益は上がりませんが、農業技術を身に付けてもらうことで、障害者らの親亡き後の自立を支援する活動に情熱を傾けていきます」と語る。

略歴:昭和20年生まれ。同38年県立神戸高校卒業。同年岡田屋入社。同50年スーパーサンシ入社。平成6年リプロサービス入社。同8年リプロ設立。同年ユーユー・カイカン社長就任。同22年会長就任。同年ユーユーハウス設立。