プラス思考で一段ずつ 転機は稲盛氏、倫理の教え かじ宗社長 板倉光弘さん

「仕事への熱意が顧客満足度向上につながる」と話す阪倉さん=四日市市久保田の「かじ宗」で

 四日市市久保田の「かじ宗」は、昭和35年に父清美さん(84)が創業。平成17年、34歳で父の跡を継ぎ、現在は、東邦ガスの代理店として四日市と桑名の2店舗で住宅のリフォーム、新築、増築とガス機器の販売、修理、施工などをしている。

 前身は、農機具や馬のひづめなどの製造をしていた江戸時代にさかのぼる。その後、時代とともに業態を変えながら、祖父の代には建築金物や石炭、コークスなどの燃料販売を手掛け、父が建築金物と店舗用器材全般を扱う「かじ宗」を興した。

 2人きょうだいの長男として四日市で生まれた。幼少時から、忙しく働く両親の姿を見てきた。高校時代、付き合いを優先させて、家族そろって夕食を囲むことが少なかった父親に反発した時期があった。自分は「仕事も家庭も大事にするぞ」と心に決めた。

 高校卒業後は家を離れて日本大学に進み、理工学部建築学科を修了した。総合住宅機器メーカー「クリナップ」に就職して4年間、営業マンとして経験を積んで実家に戻った。ガス機器などの販売だけでなく、家全体を考えていくことで家業を拡大できるのではと、猛勉強をして1級建築士の資格を取得した。

 その資格を生かし、顧客のニーズに合わせた「快適で夢のある空間づくり」の提案が喜ばれ、信頼につながり、実績を上げてきた。5年前には、桑名店を出店し、3人だった従業員も11人に増やした。そんな仕事ぶりに母智恵子さん(74)は、言葉にこそ出さないが、応援してくれていることを感じてうれしかった。

 年数回は、家族水入らずの旅行を楽しみ、仕事を忘れて、じっくりと3人の子どもたちと向き合ってきた。長男は21歳、次男は20歳、長女は17歳になった。「子どもに跡を継いでくれとは言わない。それぞれが自分の意思で、これと思う生き方をしてくれたら」と願っている。

 人生の転機は2年前、京セラ創業者の稲盛和夫氏の講演をきっかけに、倫理の教えに出合ったこと。「良き考え方を持って生きること。仕事に熱意を傾けること。能力は2の次」の言葉に深く感銘を受けた。以来、毎朝、近くの神社に詣で「今日一日、喜んで、進んで働きます」と唱和して仕事に取り掛かるようになった。

 「できない理由を述べるより、できる方法を考える」というプラス思考で一段ずつ上がっていく精神を学び、「相手ではなく自分が変わることで、あるがままを素直に受けとめられるようになった」と話す。

 子育てが一段落してからは妻美江さん(50)が事務の仕事を手伝うようになった。「仕事への熱意が顧客満足度の向上につながり、社員と家族の幸せにつながっていくと確信しています」と目を輝かせた。

略歴:昭和35年生まれ。同58年日本大学理工学部建築学科卒業。平成27年四日市西倫理法人会監査役就任。