-人とのつながり大切に 施設入所者との交流が転機- 「奏のお店」代表 黒田恵美子さん

【「多彩なイベントを企画し、多くの方々が集う場にしていきたい」と語る黒田さん=津市東丸之内で】

 津市東丸之内のファッション&カフェ「奏のお店」は、戦後間もなく父の故米一さんが同市津新町で開業した靴店「サカエヤ」が前身。昭和64年に夫の故建二さんが2代目となり、同市大門店と西丸之内店、大型商業施設内に店舗展開し、平成25年に大門店と喫茶店を併合した「奏のお店」をオープンした。

 「普通は洋服に合わせて靴やバッグをそろえますが、当店ではまず靴選びから勧めます」―。何より履きやすさを大切に、1人1人の足の形と用途に最適なカジュアルからフォーマルまでを取りそろえている。

 洋服は綿、麻、ウールなどの天然素材と個性的なデザインにこだわり、着やすさと家庭で洗えることを重視している。バッグは使いやすさを追求したカジュアルなリュックやタウンバッグ、おしゃれなハンドバッグまで、幅広い年齢層に対応している。

 「新しい靴で旅行に行ったが快適だった」「すてきな服ね、どこで買ったのと聞かれてうれしかった」などの声が何よりのご褒美だと話す。買い物の合間にティータイムを楽しんでもらえるよう、茶葉の鮮度にこだわった紅茶と薫り高いコーヒー、自慢の手作りスコーンや軽食を提供するカフェを併設している。

 津新町で2人姉妹の長女として生まれた。人懐こい性格の妹とは対照的に人見知りで、「恵美子は商売には向かないね」が両親の口癖だった。運動が得意で、小学時代は校内一、足が速かった。中学では卓球、高校生になってからは弓道に打ち込んだ。将来は福祉に関わる仕事をしようと、京都の同志社大に進学、文学部社会学科で学び、社会福祉士の資格を取得した。

 卒業後は、県職員として津市高茶屋の精神障害者施設に配属された。素直な感情をぶつけてくる入所者との触れ合いから、心を開いてしっかりと受け止めることに喜びを感じられるようになった。幼少時から苦手だった、人と親しく交流することが楽しくなると同時に、人とのつながりを大切に、信頼関係を築きながら商売に励む両親の仕事への興味が湧いてきた。

 公務員を4年で退職して、両親の店を手伝うようになった。中高の同級生だった夫と結婚し、4人の子どもに恵まれた。子育ての傍ら、夫と共に本店やテナント店、喫茶店を行き来する毎日。忙しいときは子どもたちの世話や学校の行事にも参加してくれた母の助けがうれしかった。

 公務員から自営業に転身して46年。「商品を介して、人と人とのつながりを強く感じられる販売の仕事が大好き」と話す。「今後は、趣味や特技を持つお客様を講師に迎えて、ハーバリウムや飾りずしの講習会など多彩なイベントを企画し、多くの方々が集う場にしていきたい」と目を輝かせた。

略歴: 昭和22年生まれ。同44年同志社大文学部卒業。同年三重県庁入庁。同48年「サカエヤ」入社。同64年「奏のお店」代表に就任。