-「家族との空間心地良く」 海外での経験生かし創業- 「エスパスホームデコア」社長 吹戸研一さん

【「インテリアならエスパスと言われるような店を目指したい」と話す吹戸さん=鈴鹿市末広南の「エスパスホームデコア」で】

 鈴鹿市末広南のインテリアショップ「エスパスホームデコア」は、「家族と過ごす空間を心地良く、心豊かに」をコンセプトに平成17年に創業。家具、インテリア、服飾雑貨など約1万5千アイテムをそろえ、同23年には津市渋見町に2号店をオープンした。

 松阪市で4人きょうだいの長男として生まれた。少年時代の一番の思い出は、中2の夏休みに父の勧めで行った米・カリフォルニア州でのホームステイ体験だった。広大な牧場とプールのある屋敷での3週間は新鮮な驚きにあふれ、夢のような日々だった。世話をしてくれたホストに自分の思いや感謝をうまく伝えられなかった悔しさから「もっと英語を勉強しよう」と決意した。

 三重高校から神奈川県の東海大に進学。経営学科で学ぶ傍ら、英会話研究会に入って英語劇に打ち込み、2年の時、4大学コンテストで初優勝を果たした。「仲間と心をひとつにしてやり遂げた充実感とともに、自分に少し自信が持てるようになった」と懐かしむ。

 卒業後は米・ポートランド州立大に留学し、経済学部を修了した。26歳で帰国後、空調機メーカー「ダイキン工業」に入社。グローバル戦略本部に配属され、4年後に欧州駐在員としてベルギーに出向した。エアコンが普及していないポーランドやチェコなどの代理店と連携してルート開発に力を注いだ。

 日本では旅行や外食など、家から離れて休暇を楽しむ人が多いが、ベルギーの人々は休日になると友人や隣人を招いてホームパーティーを開くことが多く、家はくつろぎの場であり、コミュニケーションの場でもある。壁紙や床、家具、照明などで自分好みに演出したリビングとテラスをオープンにして食事や会話を楽しむ文化に心引かれた。

 駐在員になって3年目、ホームセンター「ミスタージョン」を経営する父から呼び戻された。やり残したことは多かったが、任期を残して退社、帰国した。同様に呼び戻された弟2人と家業に入社した。父の指導の下、大型店舗の運営や商品開発など小売業のノウハウを学んだが、競合店の増加で業績は下降し2年後に「コメリ」と資本提携した。その後、一役員として5年間勤めて退社した。

 新規事業の起業に向けて、国内外の店舗を回って模索を続け、米発祥で日本未上陸の人気インテリアショップ「Crate&Barrel」のような店を目指そうと決めた。前職で培った人脈と営業力で、日本ではなじみのなかった欧州からの家具や雑貨の仕入れルートを整え、他店にない品ぞろえをして創業した。

 当初はコスト面で輸入家具の売れ行きが伸び悩んだが、国産家具への切り替えや贈答品、服飾雑貨などのアイテムを増やすことによって、3年ほどで事業を軌道に乗せることができた。その3年後には津市に2号店を開店した。スタッフと共に、来店者の要望に添った品選びを手助けしている。

 妻美穂子さんと長男大輝さん(19)、次男亮太さん(15)、長女瑞季さん(11)の5人と、愛猫きなこのにぎやかな家族。「経理を手伝い、心安らぐ家庭を作ってくれる妻に感謝状を贈りたい」と話す。

 「父が与えてくれたホームステイ体験をきっかけに、視野が大きく広がった」と振り返る。「今後は、店内にカフェを併設して、ゆっくりと品選びができる環境を整え、インテリアならエスパスと言われるような店を目指したい」と展望を語った。

略歴: 昭和40年松阪市で生まれる。平成3年米・ポートランド州立大経済学科卒業。同4年ダイキン工業入社。同10年「ミスタージョン」入社。同17年エスパス創業、社長に就任。同27年津南ロータリークラブ入会。