大観小観

2016年6月25日(土)

▼警察が堅苦しい集団というのは偏見だ。法が定めた懲戒処分は免職、停職、減給、戒告の四種類。その下に、不問に付すのもどうかという軽い場合を訓告、注意などと内部規定で定めている。森元良幸県警本部長はその「訓告」について「懲戒処分に次ぐ重い措置」

▼ものは言いようで、機知に富んでいる。非番に私用車で追突事故を起こして逃走した巡査長に対する処分。発表しなかった理由について今度は警務部長が「当初当て逃げとして捜査していた」。初動捜査を誤ったということか。正直でもあるようだ

▼発表基準に当たらなかったというのだが、基準は、職務上の行為などの懲戒処分と「私的な行為での停職以上の処分」。追突された四十代女性が車のナンバーを覚えていて、逃げていた巡査長を即日特定できたのだが、ひき逃げならまた違ってはいなかったか。当て逃げの見込み捜査を引きずって「停職以下≠フ処分」が早々に決まったと見える

▼このところありがとう、よくやったの歓呼に包まれた上、警察にはやさしい議員ぞろいの県議会で、まさか身内の処分に甘い体質を、真正面から突っ込まれるとは思わなかったのかもしれない

▼東北大震災応援の大阪府警の警察官が地元女性と交際し、ついに殺人に至った事件に驚いたが、サミット応援部隊の警察官も、地元女性と続々カップルを誕生させた。誰が数えたか十組に上ったといううわさがもっぱら

▼全世界、どこにでもある話なのは進駐軍と地元女性との関係に変わらぬが、警察官必ずしも身持ちが堅いわけでなし。大人たちは少々心配している。

2016年6月24日(金)

▼サミット協力宿泊施設に経営向上支援の名目で補助金を支給することに、県議会常任委員会で三谷哲央委員が「損失補償か」と尋ねた。関係者の宿泊が想定よりも少なかったことの対応策だが、県は「補償ではなく、あくまで今後に向けての取り組み」

▼証券業界を揺るがした損失補_(ほてん)問題を思い出す。山一証券破綻へと突き進んだが、きっかけは大和証券。「損失補償ではなく、あくまで損失の補_」というのが釈明で、当時は事前の損失補償は違法だが、事後の損失補_は違法でなかったためだが、旧大蔵省から行政処分を受け、のち禁じられている

▼主幹事交代をちらつかせて損失補_を迫る顧客と証券会社との力関係に、黙認する旧大蔵省、蚊帳の外の国税庁の摘発が複雑に絡み合った。「あくまで今後に向けての取り組み」の対象がサミットに協力した施設だけというのも分かりにくい

▼いつぞや南紀みかんに入れたパンフレットに有害物質が含まれていると名古屋保健所から指摘されて県農水商工部が全品回収を指示。JAの紹介に県環境部がパンフレットの回収だけでいいと回答し、億単位の損害がゼロになった。指示の根拠を追及され農水商工部が地元産品振興名目で一億円を堪忍料≠ニして交付した

▼「話が違う」と協力施設から強烈な逆ねじでも食らったか。当時の県農水商工部長が、サミットの寄付金集めで功績の石垣英一副知事というのも因縁である

▼「うたげの裏で悪魔がほほ笑んでいた」というのは、史上最高益を達成しながら損失問題で退任した日興証券社長(当時)の弁である。

2016年6月23日(木)

▼少し前だが、人脈の偶然が重なって、三十年ほど前に務めた会社の同僚から連絡がきた。会いたいという。放っていたらまた連絡がきて会うことにした。人なつこい営業で、企画、行動力は抜群だった

▼かつての同僚らの品定め、三十年の歴史、きわどい話まで、意外に盛り上がって数時間があっという間に過ぎた。近いうちぜひもう一度という。放っておいたらまた連絡が。やはり時のたつのを忘れたが、話が社会・政治問題になったのは、さしもの懐古談もネタ切れになったからか。端々に左翼≠ニいう言葉が出てくる。昔の「あいつは赤だ」の使い方だ

▼そう断定するにはなかなか鋭い視点、考察がある。そうとばかりは言えんだろうとやんわり否定するには骨が折れる。つい力を入れ二度、三度。「あんたも左翼だなあ」と言われたのには苦笑した。ぜひまた会おうと別れたが、それっきり連絡はない

▼米大統領選見聞記で、オーダーを取りに来た飲食店店員と客が議論を始めたというのを読んだ。論破するでもなく熱くなるでもなく、淡々と五分間、「勉強になった、ありがとう」。仕事はどうした、場所柄をわきまえろ、という人もいない

▼「世間を騒がせる」が何より罪深いとされる日本では同調が善、異論は悪の雰囲気がある。ネット空間でだけ、一方通行の本性をさらけ出す。参院選公示後の津市を歩いた。変化はない。仕事柄喫茶店で知人と選挙を語ったが、周りには見かけない。サイレント・マジョリティーか。あれもだめ、これもだめの主権者教育で十九、十八歳にも伝統は引き継がれる気がする。

2016年6月22日(水)

▼日本学生支援機構第一種奨学金を借りて返済に苦しむであろう三十五歳未満の若者を助成する県の「学生奨学金返還支援事業」の対象が「条件不利地域の居住」。時代を反映してか、県の新規施策も貧困ビジネスの発想に似てきた

▼南部地域活性化策から生まれた事業だが、露骨に学生の弱みにつけ込む施策はやめにして、奨学金返済困難者そのものを救う独自の奨学金制度を整備する考えはないのかと議会に問われ、昨年は含みのある答弁をしていた

▼成長産業や基幹を担う中核的人材の確保と若者地元定着へと構想は拡大。「地域と若者の未来を拓く学生奨金返還支援事業」の事業名になったが、精査の過程で八千百十六万円に縮小。知事査定で南部地域限定という元のもくあみに。予算は大幅に削られ四百三十万円。名称にだけ若者の希望を育む趣旨が残った

▼鈴木英敬知事は財政状況を理由に「条件不利地域に絞って創設」。奨学金返済という困窮事情≠ナもない限り、誰が条件不利地域≠ナ頑張ると思うか、という本音が透けて見える

▼戦前の南米の移民施策を連想する。知事は経済産業省時代に参画したプロジェクトを「たこ部屋」と表現した。明治の北海道開発に伴う非人間的強制労働環境を指し、労働力は囚人施設からかり出された。甘言で東北から集められた人も。一度入ると出られないのが語源とも言われる

▼定住者増も囚人施設配備にあったという。知事の発想の原点はともかく、定住環境も整備しなければ居住義務の切れる八年後は出所後故郷へ逃げ帰った北海道の二の舞にならぬとも限らない。

2016年6月21日(火)

▼内宮参拝した安倍晋三首相が神楽殿を出たところで、鈴木英敬知事が靴べらを差し出した(本紙参院選企画『陣営の戦略』)。厳寒の日に懐で暖めた草履を信長に出す秀吉のエピソードを思わせてほほえましい

▼墨俣の一夜城にしろ朝倉浅井連合軍との戦いでしんがりを引き受ける話にしろ、秀吉の逸話には、真偽はともかく死にものぐるいの覚悟が伝わってくる。天下統一に天皇の権威を利用した。信長が足利将軍を担ぎ出したことに倣ったのだろう

▼就任以降初めて国政選挙で旗印を鮮明にしたことについて、鈴木知事は「今回は大きく状況が違う」と伊勢志摩サミット開催やリニア中央新幹線を挙げた。サミットで世界経済のリスクを「世界のリーダーと共有した」として、安倍首相が消費税増税再延期の理由づけにした手法に似ていなくもない

▼サミット開催地として、安倍首相は第一に広島、第二に神宮の地を描いていたという説がある。鈴木知事は首相の声かけで急きょ開催地に名乗りをあげたと浜松市長に話したという

▼サミット後の日米首脳会見は、大半を元米海兵隊員の沖縄女性暴行殺害事件に深い哀悼の意をささげた。オバマ米大統領広島訪問へ引きずる懸念を断ち切ったとされる

▼オバマ大統領のスピーチは情の国日本でおおむね好感。犠牲者を悼み責任論を回避する構成は直前のベトナム訪問と同じ。参院選を最優先する安倍首相の期待通りでもあろう

▼サミット効果に沸く県民とは別のところで、日米首脳の思惑が渦巻く。鈴木知事も両首脳からの教訓をしっかり見据えて行動しているに違いない。

2016年6月20日(月)

▼参院選への本紙企画で、選挙区の前回選の野党候補の合計得票は自民党候補を上回るが「単純計算では」の前提付きなのがおもしろい

▼「あの頃は厳しかった」と岡田克也民進党代表。もうこりごりだが、といって自民にも行きたくない。そんな第三極を求める有権者意識があったことが「単純計算では」の前提の意味に含まれる。単純計算ではいきませんよ、の反語でもあろう

▼市民団体「市民連合みえ」を介した民進、共産、社民の「ブリッジ協定」が、苦心の「野党共闘」体制の核心とか。重鎮の後継相手に大接戦を演じた北海道5区衆議院補選をお手本にしたのに違いない。「この戦いを教訓に(参院選を)工夫」すると岡田代表。市民が前面に出る戦いに有利、不利の両面があり「総括して、次に進めたい」

▼北海道5区の野党共闘候補は解釈改憲≠ノ反発した市民団体がまず推薦し、旧民主党が続くなどの経過をたどり、無所属で出馬した。このため政党候補に比べ選挙用の車やチラシなど、宣伝戦に大きなハンディを背負い、半面未成年者から主婦、学生、サラリーマンなど幅広い層が「自分たちの選挙」だと、それぞれ勝手連的に活動。政党も加えたジグソーパズルの大小ピースを埋め、一体感を作り出したと同候補は書いている

▼互角の戦いをするためには政党候補に他党が推薦する与党と同じ共闘体制を作ることが必要なことを市民も政党も学んだとも言う。岡田代表の「教訓」とは違うのか。理想と現実の間には多少のギャップ、段階は付きものということか。政党が答えを出す番はとうに来ている。

2016年6月19日(日)

▼裁判員制度実施前に本紙ら地方紙と最高裁などが共同で周知のためのシンポジウムを開いたが、その中で市民代表委員が懸念材料としてあげたのが、裁判員の身の安全問題だった。開始七年目。「よろしく」などの裁判員への声かけで暴力団幹部らが逮捕され、安全対策がほとんど手つかずだったことが浮き彫りになった

▼市民代表委員となった歌手のあべ静江さんは、家などに張り込まれる熱狂的ファンの恐ろしさを語り、学校法人大川学園理事長の大川吉崇さんは、用地買収に伴う反社会勢力の介入体験を語った。ともに警察への相談が何に役にも立たなかったとして、裁判員の安全対策は急務と説いたが、検察官の委員からは楽観論が出され、裁判官の委員が同調した

▼実施後も、守秘義務や出頭義務、現場写真の精神的被害などの問題点はあげられたが、身の安全は顧みられてこなかった。あべさんの指摘は一昨年の握手会傷害事件や先のタレント刺傷事件を、大川さんの指摘はまさに今回の声かけ事件を予言したというべきか

▼同じ暴力団関係で過去五件、裁判官裁判に切り替えられたという。警察が組織的犯行と判断し、報復の恐れがあるとして申請した結果で、今回は個人的犯行だからその恐れはないとして申請しなかった

▼刑事ドラマの「桜の代紋を背負った」のせりふではないが、暴力団担当刑事らと接すると、その目線は刑事ドラマそっくりで、いかに市民感覚とかけ離れているか痛感させられる

▼裁判員の安全問題に限らぬが、自身は法や組織に守られ、裸同然の市民の心理を理解することはできまい。

2016年6月18日(土)

▼教員の長時間労働などに対する山口千代己教育長の県議会一般質問の答弁が八分に及んで、質問者の杉本熊野議員が「ちょっと長すぎ」(本紙「記者席」)。続けて「それでは長時間労働は解決できない」。皮肉か諦めか

▼「ごていねいでしたけれども」(杉本議員)。何がいま大切かの本質が分からず、とんちんかんなことに精を出しているということでもあろう。ビルド、ビルドばかりでスクラップがない、だから時間外が増えると言っているのに、その削減にはまたまた「何よりも校長の役割が重要」(山口教育長)。校長にも総勤務時間があるなどとは考えたこともないのである

▼小学校の女性教員増加はかつて「教育上の大問題」とされたが、女性管理職が県の8・7%を大きく上回る20・3%。中学校が7・9%と低いのはなぜかを問われ「小学校教員の女性割合が65・7%、中学校は44・2%」。時世時節である

▼女性活躍行動計画には女性が大半を占める非正規職員問題も入っているらしい。県教委が非正規雇用から正規への転換を検討するのに対し、県は「人材育成」「研修への参加」

▼二年前は「非正規はコピーなど単純作業。判断はすべて正規」だと、能力向上を押さえ込むマニュアルを大量に作成して差別化を図っていたが、風向きが変わった。正規職員へ転換や同一労働同一賃金などと言われないため、新マニュアルの作成に取りかかったかのかもしれぬ

▼教員出身のせいか、杉本議員は教育長に比べ知事ら県部局への笑顔が目立つ。隙だらけなのが県教委、油断も隙もならぬのが県―ご参考までに。