大観小観

2017年1月19日(木)

▼ウィッツ青山学園高校の廃止認可申請は妥当という伊賀市意育教育特区学校審議会の答申を受け、岡本栄市長は「早い時期にきちんと指導できていればこんなことにはならなかった」と反省の弁

▼株式会社による学校設置を認め、学習指導要領によらない多様なカリキュラム編成が教育特区の特徴だったが、青山学園高の問題発覚後、ひたすら「学習指導要領からの逸脱」を非難し続けるしかなかった。地方公共団体と民間との連携で、文科省の枠にはまらない新しい学校像を築いていく意欲も根気もなかったということだろう

▼意育教育特区学校審議会にしてからが、東京地検特捜部が運営会社に家宅捜索に入るまでは、開催は年一回程度。全日制の生徒は集まらずに経営が悪化しても、サポート校を全国展開して通信制の生徒を急増させても市は関知せず。学校法人化を目指す計画を了解しながら、計画が白紙になったことも知らなかった

▼市にとって学校は地域振興の道具≠ナしかなかったのだろう。現在の公教育は青少年の教育を丸ごと支えることなどできなくなってきているが、教育委員会は落ちこぼれた若者をいかに復学≠ウせるかを唯一の正義≠ノしている。青山学園高を居場所とする若者の気持ちなどは分かろうとしないのではないか。市教委を青山学園高の所管をするのはそもそも矛盾ではなかったか

▼伊賀市は旧上野市の時、享栄学園から大学設置を持ちかけられ手痛い裏切りにあった。今度は二度目の裏切り≠フつもりか。三度目があるとすれば、裏切られる側に問題があることが鮮明になる。

2017年1月18日(水)

▼間が悪いときというのはあるものだ。年始の仕事始め式で、津市の前葉泰幸市長が「今年は合併後の特例措置から自立し始める年」と幹部職員に訓示した直後、合併特例債の看板事業である屋内総合スポーツ施設「サオリーナ」事業関連の幹部職員が公費を使って自家用車に給油をしていた不祥事が発覚した。市民アンケートで「住みやすい」の回答割合が微減した

▼「総合的に判断して住みやすい」が八割というのは潤沢な資金源であった競艇収益を生活基盤整備に充ててきた遺産だが、「まちに活気がある」「働く場が多い」「交通の便が良い」の三項目を半数近く否定。中でも美里▽一志▽美杉―の三地域が高かったのは、合併後の市政運営に「こんなはずでは」という郡部の人が多いということだろう

▼見返りに道路整備の要望を受け入れ、ごみ処分場の建設が進む美杉地域で否定回答が多いのは、地域格差の拡大を象徴しないか。津市の広報紙『広報津』の市長コラムで再選前の前葉市長が実績に掲げていたのは合併特例債を使った箱物建設がほとんどだった

▼「これから四年間で合併後の特例措置が徐々になくなっていく」という年頭訓示は、合併時に計画した事業を、合併特例債を使って推進していれば実績として胸を張れた時代ではなくなることへの危機感の表明に見えなくもない。「未来へ向けた施策を着実に進めていく」とは怠ってきた否定三項目などへ取り組まなければならなくなったという決意の表れか

▼微減が合併特例債に依存した市政運営のツケかどうかは来年以降の調査で、よりはっきりする。

2017年1月17日(火)

▼過剰残業問題は、電通から三菱電機へ、さらに関西電力へと波及し、産業界に戦々恐々の波が―。三菱電機社員は大幅な業務量増で適応障害を発症し休職。復職間もなく解雇された

▼上司から残業時間の過少申告や時間数を「バラバラにしろ」などと指示されていた。会社は「過少申告はなかった」とコメントしたが、神奈川労働局は書類送検。塩崎恭久厚労相は「虚偽申告を指示するなど言語道断」と批判した

▼関西電力は、課長職の男性が過労自殺した問題で社長が敦賀労働基準監督署に呼ばれ、管理職の勤務実態の調査を求められた。労働基準法上、残業代支給対象外の管理職への指導は異例

▼各社の社長はこの流れに軒並み賛同というが、経済同友会、日本商工会議所などのトップは業種、職種で事情は異なるという見解。建前と本音が透けていないか

▼衣料専門店ユニクロを運営するファーストリテイリングが、過剰労働を指摘した週刊文春を訴えた名誉棄損裁判で全面敗北したのは平成二十六年。国内店長の月三百時間を超す労働、中国委託先企業で十代女子工員の深夜二、三時に及ぶ労働環境などの指摘にカリスマ経営者≠ヘ「そんな恥ずべき行為はしていない。不適切な労働実態があれば真摯に正していく企業だ」と語っていたという

▼四年前校長二人が相次いで自殺した名張市の議会のやりとりで、教育長は教職員の過労自殺が少なくないと答弁したが、県教委は「死亡の報告は受けるが、自殺かどうかなど、死因は調査していない」。労働基準法の対象外で、過剰労働対策に余裕があるのかもしれない。

2017年1月16日(月)

▼雪が溶けた昼の津市の道路でキリギリスが固まっていた。触っても動かないが、足を踏ん張っている。死んでいるようではない。そもそもキリギリスかどうかの自信もないが、イソップ童話「アリとキリギリス」は元は「セミとキリギリス」というから、キリギリス科内の違いくらいは気にしなくてもいいか

▼働き者のアリが、遊びほうけたキリギリスの受難の冬に助けを拒んだとか、温かく迎えたなど、筋は各国で変化し、教訓として伝わるが、アリの大半が実は働き者ではない。北海道大学大学院の長谷川英祐准教授によると、瞬間で七割が働いていないという。卵を守るなどの重要な仕事をしているアリに疲れがでると、休んでいたアリが取って代わる。エサが多くなるにつれ、働くアリが増えていく

▼他の群れとのエサ争いが始まると、大柄な兵隊アリが真っ先に逃げ出す。硬いエサを砕くという役割があり、成長に手間ひまがかかっているので傷ついては損だからだ。動きが遅く、とんまがいるコロニーが栄えるともいう。うろうろしてより効率的な道順を見つけたりする

▼一匹一匹の能力が優れ、体もがっしりしている集団が大きくなるのは当然だが、それは小規模組織まで。ひ弱なアリが増えすぐ倒れ、どんどん取り替えることで大組織になっていく

▼頭で考えて未来を切り開いていく人間と、システムとして変化に対応するアリの社会とは似ているようであり、似ていないようでもある。「アリとキリギリス」は人間の目線で虫を見た教訓だが、虫の世界から見ても、人間なりの教訓が生まれそうな気がする。

2017年1月15日(日)

▼「バスに乗り遅れるな」は、時流に取り残されることを恐れて挙国一致体制を進めて昭和初期の新体制運動のスローガン。大政翼賛会結成へつながったが、日本人の国民性を実によく表す言葉としてしばしば使われる

▼高度経済成長まっしぐらの影で公害を招いたこともその一つ。四日市公害は重工業地帯を目指す県市の施策が生んだ負の遺産だが、循環型社会を推進する県の重点施策が県のリサイクル製品認定という土壌埋め戻し材フェロシルト事件として繰り返された

▼自然エネルギー推進の勢いはいまやすさまじい。日本の構成比はまだ低いが、世界では技術革新が進み、エネルギー当たりのコストはとうに原発を下回っているという。新ビジネスとして注目もされている

▼その一方で、青山高原で風力発電のプロペラが落下した。絶滅危惧種の野鳥が飛来する松阪市の沼に浮体式水上太陽光発電所が設置されるなど、自然環境を破壊していると県議会で指摘された。全国では倒産に伴う風力発電施設の放置や、住宅地への騒音、低周波数被害、野鳥の追突死など。太陽光パネルでは光の反射が住民生活を脅かし、周囲の気温を上げている

▼伊賀でメガソーラー(大規模太陽光発電所)の開発が市道を隆起させた。一ヘクタール以上の大規模開発で県が介入できるというのはめでたい。通常それ以内で浮体式などはルールそのものがない。廣田恵子県雇用経済部長は「基準を全国知事会が国に進言すると聞いている」と、泥棒捕らえて縄をなうみたいなことを言った。四日市公害で国より厳しい条例を作った教訓は生きていない。

2017年1月14日(土)

▼現在地に軸足を置いて片足をそっと新天地に突き出す。トントンと二度、三度、軽くたたいてからちょっと体重かけてみる。そろりそろりと重心を移していく。田川県政の後半はそんな印象だから、最後の事業となった世界祝祭博覧会(まつり博)にしても、世情「田川亮三知事の政治生命がかかる」と評されたことに本人が一番戸惑っていた

▼危機感も強かったろう。事務局が大会起案書に尾崎彪夫副知事を総責任者に充てて同副知事に回したら、中林博出納長への変更を指示した。最終起案書を見て田川知事が「尾崎はこれを見たのか」と二度、尋ねたと言われる

▼「尾崎よ、お前もか」―逃げたと思ったのではないか。そう言うと、本人は「わしは事業をやったことがないでな。中林が適任だと思った」

▼秘書課長から次長ポスト二つを経て部長経験なしで特別職の企業庁長へ。出納長、生え抜き副知事に昇り詰めたが、終始秘書課長≠セったと言われた。冷静で繊細、思い切りよく、裏方として知事の政治生命にかかわりそうな事象、人物を嫌った

▼まつり博もその一つ。そんな尾崎氏の行動で、田川知事が「まさか」と驚いたのが知事選出馬。「そんな性格ではないと思っていた」と言うのは、地位を襲う人物を嫌う権力者の本音か、その気なら引退の仕方に配慮したのにという悔恨か

▼有力者に迫られ「引けなくなった」というのが、わずかに聞いた出馬の弁。いよいよ尾崎時代の到来ですねと水を向けたら「尾崎時代か。本当にくるのかねえ」とさめた表情で遠くを見た。どこまでも、理性の人だった。合掌。

2017年1月13日(金)

▼それを言っちゃあおしまいよ―は映画『男はつらいよ』シリーズでフーテンの寅さんが吐く名せりふ。ケンカが極まり、おいちゃんが「出てってくれ」と言うのに対して放つ。たとえ本音や真実、日ごろの思いでも、口にすれば長年の伴侶との間でも修復不能なことになる

▼日中も賭けマージャンを繰り返していた福岡県飯塚市の市長と副市長が辞意を表明した。発覚して陳謝した記者会見で「賭けないでマージャンをする人がどれぐらいいるのか、逆に聞きたい」なんて言ったのだから、後から「賭け事は一円たりともいけない」と修正しても市民は収まりはつかなかったろう

▼市長がおもしろいことを言うのは少し前の大阪などばかりではない。平成十九年四月の三重県中部地震の時、伊賀市長はゴルフコンペを優先し、夜の懇親会にも出席したが、自身が本部長の市災害対策本部には顔を出さなかった。市議会で陳謝したが、なぜ戻らなかったかの質問に「マナーを重視する競技であり、途中で中止する場合は断りが必要」と答え、議場を憤慨させた

▼市民らの抗議が殺到したことで最近知られるのは青森県黒石市。自殺した中二女児が津軽手踊りを舞う写真が記憶に新しいが、撮影したのはアマチュアカメラマンで、市の写真コンテストで最高賞に内定したが、取り消された。「本人の辞退」というのが市の説明で、本人にそう市が因果を含めたというのが地元紙の報道だ。翌日、市長は会見で遺族に謝罪し賞に復している

▼鈴鹿市の給食中止撤回問題に酷似するが、市長が承知か知らなかったかの違いはあるようだ。

2017年1月12日(木)

▼募集方法を見直して応募を呼び掛け、また県内就職を検討している学生に個別的に働き掛けるという。読み違った施策はたとえ初年度でも改める心がけはいい

▼奨学金の一部を肩代わりする事業である。定員二十人に応募は十四人。問い合わせは七十件というから、一口に言えば魅力がなかったということだろう

▼なにしろ、事業の正式名称は「地域と若者の未来を拓く学生奨学金返還支援事業」。明日への視界がパッと開けるようだが、募集要項では、若者の県内定着のため「条件不利地域への居住等を条件」に返還額の「一部を助成する」。落差が激しい。鈴木英敬知事の言葉を借りれば、経済産業省内にあったという「タコ部屋」、その語源である非人間的過酷な労働環境に、北海道開拓のため数年間、放り込まれる印象を持たれないか

▼上限百万円で、四年間居住して三分の一支給、残りは八年後だ。「地域の未来を拓く」について何の記述もなく、従って未来を描きようもない地域を、社会への第一歩の地に選ぶ気になるかどうか。また、就職を「検討している学生」はいいが、決まってしまえば対象外。応募への「Q&A」はダメだしのオンパレード

▼「日本学生支援機構第一種奨学金又はこれに準ずる奨学金」が対象で、七割以上が利用している有利子の「第二種奨学金」は「対象となりません」。「準ずる」の説明はなく「詳しくは、お問い合わせください」。Q&Aは利用の親切のためか、ふるい落とすためか

▼確かに今の募集要項では「わらにもすがる」気持ちにならなければ、応募する気にはなれまい。