大観小観

2016年5月25日(水)

▼難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者で、日本ALS協会副会長が参院厚生労働委員会で参考人として意見陳述した。衆院厚労委で拒否され、社会問題となったのは周知の通り。両院制のよさが発揮された

▼自民、民進両党とも予期せぬ展開だったに違いない。代わりに出席した常務理事が「福祉に最も理解ある厚労委員会に障害があることで排除された」とする副会長のメッセージを代読し、批判が盛り上がった。厚労省もこの展開を読めなかったということであり「深刻な国のありさまを示している」というメッセージはどんぴしゃりだった

▼ALSは運動神経の異常で筋肉が使えなくなる病気で筋ジストロフィーは先天性で筋肉自体が壊れていく。どちらも筋肉が萎縮していく。筋ジス患者の観察記録を読んだことがある。医療の進歩に感謝しつつ、医療への不信もまた強いという。同病者への観察と理解、連帯も深い。日本の難病、障害者施策に熟知し、現状への注意喚起を促す好機ととらえたのかもしれない

▼民進党の参考人招致の提案に、自民党は「時間がかかる」とも言ったのだろうが、別の法案の審議入りを要求。民進党は野党共同提案の保育士らの賃金を引き上げ法案を優先し、参考人は断念したらしい

▼政治的駆け引きの一環であり、福祉施策同士が土俵に上げられ二者択一を迫られる。どちらも政治の世界では日常的に繰り広げられてきたことに違いない。その中で何気なく見捨てられてきた中に、当事者の血の叫びがあることを自民、民進両党と厚労省は、改めて思い知らされたのではないか。

2016年5月24日(火)

▼国立研究開発法人「防災科学技術研究所」が管理、運用する地震・津波観測監視システム(DONET)について坂本竜彦三重大教授(海洋地質学)が「過度な期待を寄せることなく、参考程度にとどめ、気象庁からの情報を判断基準に据えるべき」

▼先行した和歌山県で潮の満ち引きデータの入れ忘れという初歩的ミスで津波発生の誤報を発信するなど、ソフト・ハード両面で未解決の課題が十分つぶしきれていないということらしい。県防災企画・地域支援課は平成二十九年度以降の導入を見込んでいたが、伊勢志摩サミットで急きょ前倒ししたという。「以降」がどのくらいかははっきりしないが、南部地域への展開は「できれば二、三年ぐらいではやりたい」

▼現場としては思いもよらぬ早期導入だったようで、昨年度中に整備し、本年度早々にも実地訓練の予定が、目下システムの動作試験だけにとどまっている。「各国首脳など来訪者の安全・安心の確保に向けた対策」(鈴木英敬知事)という思惑通りいざというときに機能するかどうかは不透明だが、今回の対象を伊勢志摩地域に限定して、次に全県に展開する二段階方式を採用したことについて、知事は伊勢志摩サミットという急を要するものがあり「まずはそこで効果を試してみて、より効率的な形で全県展開」していくという

▼「時期尚早」は先刻承知。伊勢志摩サミットに集う首脳らでまず試してみて、効果がありそうなら県民のために本格的に導入すると言っているように聞こえる。県民の安心安全と命を守る知事として、頼もしく感じなくもない。

2016年5月23日(月)

▼宛名が白紙の領収書で私的飲食を政治資金で支払う事務所の仕組みは「先輩の国会議員の方にやり方をお伺いして、そういうものなのかと思って始めました」と舛添要一都知事

▼昔五年余の係争になった鈴鹿市の市長も、のちの参院議長の後援会などを財布¢繧りにして政治資金を環流させたことについて「議員の方の指導を受けて」と話していた

▼市議の問い合わせに、議員事務所は、後援団体承認の印を押していながら「一切関知しない」と答えたと議会で報告。本紙の取材には「うちを巻き込まないでくれ」

▼その参院議員が政治資金報告書を巡って疑惑に問われた話は聞かない。舛添知事がお伺いした先輩議員も同じだろう。指導した側は裏技であることを承知して使い、指導された側はそうとは知らずにおおっぴらに使うという違いか

▼家族旅行費用の政治資金収支報告書計上もそうだ。かつてその鈴鹿市長も、出身大学が同じ首長同士の会のねぶた祭り見学企画に夫人同伴で参加し、公費で宿泊費などを支払った。「市長である自分の見聞は市政に反映される。市長の行動はすべて公務」などと言っていた。夫人の交通・宿泊費などは「むろん私費」と言ったが、当時市長交際費に公開義務はなかった

▼鈴木英敬知事夫人の美保さんが県体協副会長として体協を代表し、リオ五輪出場の水球選手を激励した。舛添知事夫人はファミリー企業の代表で、二人で話をした時の飲食代は政治資金で支払うのか問われていたが、県体協への補助金を夫婦で話し合うことはあるか。日本はあいまいがまかり通る国である。

2016年5月22日(日)

▼伊勢志摩サミット主要会場の賢島へ、二十一日から立ち入り規制という。おや、いままで自由だったのかという気もするが、最終一歩手前の段階から最終段階へ、警備レベルを上げるということだろう

▼志摩市が二十四時間検問態勢に入ったのは五月十日前後。車を誘導する警笛がひっきりなしに鳴り、夜間はヘリコプターの爆音が響く。海上や住宅地での低空飛行などの訓練が続く

▼列車、バス、船舶の運行、航行規制が加わるようだが、規制情報を巡っては列車の運行規制報道で鈴木英敬知事が「情報管理の徹底を」と外務省に不満を漏らしたことがある。すでに地元では周知の情報でもあったから、円滑な住民生活のための情報提供という視点は二の次ではあるのだろう

▼JR東海がコインロッカーとゴミ箱の封鎖を二十日から始めると発表した数日前、JR西日本の金沢駅でコインロッカーが封鎖されていた。近鉄特急の列車内ゴミ箱も早い段階で「サミット・セキュリティーのため」の張り紙とともに使用停止

▼広がる規制に「早く平常に」と願う市民も少なくないが、テレビのインタビューに「市民として協力は当然」と主婦がにこやかに答えていた。県警の森元良幸本部長が「日本警察全体の力量が問われる」とした上で「県民の安全安心を守り抜く」。恩着せがましく、住民感覚との違和感はぬぐえない

▼津駅構内で、目が合った警備の警察官が軽く会釈した。警察は硬直なキャリアと対応に柔軟なノンキャリアの二重構造というのは海保幹部の話。現場が住民との協力関係を重視しているのは確かなようだ。

2016年5月21日(土)

▼政治資金の「公私混同」問題で釈明に追われる東京都の舛添要一知事が「与党の幹部からも厳しい指摘が出ていることは真摯に受け止めます」。前々日の共同通信加盟社論説研究会で、自民党総裁特別補佐で党都連会長代行の下村博文氏が「語弊があるが、因果応報的感じがしている」と言っていた

▼「公私混同」問題そのものは「あまりにセコい」。サポートしようもないそうだが、文部科学大臣を辞めることになった新国立競技場の整備計画白紙撤回当時の自分と重ね合わせているのだ。「相当バッシングされましたから」

▼とりわけ舛添知事の追及は厳しく「信賞必罰をやらないなら組織は腐りきっていく。それができない長は辞任して下さい」と言い切った。「ちょっと違うんじゃないか」という思いが今も消えていないのだ

▼発言の背景に、建設費を巡る都の高額負担に「国の施設ではないか」という舛添知事の反発がある。下村氏によると、そもそも都が臨海部に都立のメーン会場建設を計画。高額予算抑制方針の国際オリンピック委員会(IOC)の難色で改築時期を迎えていた国立競技場と抱き合わせにした

▼石原慎太郎知事(当時)と東京五輪組織委員会会長の森喜朗元首相との関係の中から成立した話で舛添知事も承知。反発は「都民に対するパフォーマンスとしか思えない」

▼何にでも森氏が絡んでいるものだが、「公私混同」問題では党や都議会で離任を求めはしないそうだから江戸の敵は長崎でとはならぬ気がする。せめて「パフォーマンス批判」で自ら応報を買って出ているつもりかもしれない。

2016年5月20日(金)

▼解散の「か」の字も考えていない、と衆参同日選で繰り返す安倍晋三首相。美男におわす。堂に入って「よっ、シンゾー」と大向こうから声が掛かりそうな国会劇場≠ナある

▼「戦争法廃止」と野党が言うたび自民党の支持率が上がる国際情勢。消費税問題は経済対策に関わるとすれば、同日選を阻むのは熊本地震の余震の行方だけみたいなことを下村博文・党総裁特別補佐は言う

▼憲法改正の国会発議を実現できる情勢見極めは首相の脳裏に常にあると、全国のベテラン記者らがよってたかってうんちくを傾けてくれる中に「お宅で開催するサミットだって」というのがあった。我が家になぞらえてくれたのは光栄だが、その記者の情報網では、首相の希望開催地の筆頭は広島だった

▼被爆地からG7が核への意思表示となれば、一気に日本が核廃絶へ主導権を握る。同日選のこれ以上の舞台はない。「オレは構わないよ」とオバマ米大統領は言ったと、話はおもしろくなるが、米政府とほかに一国、異論が出て断念。話は現実に引き戻される

▼「悠久の歴史をつむいできた伊勢神宮」のある地が次善の策で、「そのほかでは首相にとって何のメリットもない」

▼ひしめく違憲判決と切り結んだ小泉純一郎氏と違い、安倍首相は先の式年遷宮に史上二人目、戦後初の首相として参列。軽やかに政教分離の垣根を越えていく

▼広島と伊勢。二つの有力舞台を得て政界に緊張が走るのは当然だが、政局予想は当たらぬのがセオリーともいう。卑近な理由で、なしの方に乗りたい気がするが、むろんセオリー通りの確率は大きい。

2016年5月19日(木)

▼教職員を会員とする人権団体の役員会で、会長が言った。「最近はインターネットによるいじめが深刻な問題になっています」。一昨年だが、全国学力・学習状況調査の結果が三年続きで全国平均を下回り、鈴木英敬知事はその原因の一端を語った。「例えばスマホを使っている時間が、全国の中学生と比べて長い」

▼警察もひところに比べ、子どもたちが携帯電話で有害サイトへアクセスすることを封じるフィルタリング機能の導入を言わなくなった。児童生徒を陥れるネット犯罪への警戒がやや一段落し、行政、警察の関心の中心が誹謗中傷やネット依存に向けられる中で、中学二年生の女子生徒に対する誘拐等の罪に問われた三十三歳の男性に対する津地裁第二回公判はどう映ったか

▼携帯電話のアプリを使い、被告は「愛し合っていても親が誘拐と言えば誘拐」など言葉巧みに女子生徒を誘い出し、「車に乗ったらアプリをアンインストールしてSIM(カード)を抜いて」など、知識を駆使して証拠隠滅を図っている。女子生徒は同級生からの嫌がらせや教諭、家庭との関係に悩み、口車に乗ったという

▼いじめ書き込みや、学力への差し障りなどとは別の深刻な問題が、スマートフォンを巡って起きている。同級生の嫌がらせに対し、教諭も家庭も無力だった現実をうかがわせ、教育現場の欠陥を露呈している感さえある

▼学テ結果が向上した昨年も、ネット依存割合に変化はなかった。仮想空間でなければ心を開けぬ児童生徒が増えているということではないか。学力との関係で考えればいいという問題ではない。

2016年5月18日(水)

▼昨年は二部への陥落の危機を乗り越えて八位だったが、国体で優勝して気を吐いた。今季も八試合を終えて八位。まずまずかなと見ていたが、そんなのんきなことを言ってはいられないのがプロスポーツというものなのだろう

▼サッカー女子なでしこリーグ一部の伊賀FCくノ一がまだ二年目の金鐘達監督をシーズン途中解任。その驚きも消えぬ間に、新監督に前日本サッカー協会女子委員長の野田朱美氏と電撃契約。昭和五十九年〜平成八年の日本代表。背番号10を澤穂希さんに引き継いだことで知られる。トッププレーヤーながら現役時代はアルバイトで遠征費を稼ぎ、引退後は海外移籍を希望する選手のための強化費を協会に掛け合った

▼「『魂のこもったプレー』『推進力』というくノ一のストロングポイントにポゼッション(支配率)や戦術を加え、やる側も見る側もワクワクするようなサッカーを作っていきたい」と語る。女子の団体競技で共通すると思うのだが、これが、あのなでしこかというような試合が同じ大会の中でもある。一昨年優勝した浦和レッズレディースが今季最下位。個々の能力以上にチーム一体の意気や呼吸が力の源泉であることを物語る

▼監督のチームづくり、指導力が問われるゆえん。契約は今年末まで。「一つでも順位を上げる」が今の目標なのは当然だが、「目標はあくまで日本一」とも。また「女子指導者を増やすためにも成功事例をつくりたい」。女子サッカーの先駆者として険しい道を切り開く。より高みを目指す。思いは、なでしこ新監督の高倉麻子さんと同じなのだろう。