大観小観

2017年3月29日(水)

▼津地検は、入札情報の漏えいを指摘されて中断していた同庁舎諸設備運転監視等業務の入札公告を再開した。調査の結果「そのような事実は認められなかった」。なーんだ、先の知事公舎改修工事の談合情報で、調査した県の「談合の事実は確認できなかった」と変わりないじゃないか、と肩すかしを食らった心地がする

▼地検も、自身の調査能力に絶対の自信を持っているに違いない。外部の第三者を交えた調査について「内部で必要な調査ができたため、必要ないと判断した」。監察室が関係者に聞き取りした結果である。その立場をそんたくしたか

▼ヤメ検の父と事務所を構えた息子の弁護士が昔、法律雑誌に書いていた。父は依頼者によくだまされるという。最強の捜査機構を背に被疑者に対面してきた父にとって、自分にうそをつく人間がいるとは考えてもみないらしいという

▼昭和六十年、米国のおとり捜査を見て「こんなことをしなくても」と雑誌『文芸春秋』に書いていたのは金雅仁前警察庁長官。情理を尽くして罪を悔いる気持ちを呼び起こす取り調べ能力に絶大なる自信をもっていたのである

▼ところが最近はそれが通じない時代になった。黙秘を続けて、自白が得にくく、上部への突き上げ捜査が進まない。だから通信傍受法の対象拡大や司法取引一部導入の法改正を歓迎するというのだが、いわゆる団塊の世代の退職で、取り調べ能力の継承断絶ということもあるのだろう

▼その警察の組織力の上に乗っかった地検の調査能力となると、聞くと見るとは大違いの張り子の虎ではあるのかもしれない。

2017年3月28日(火)

▼地価公示で「サミット開催による地価への影響はなかった」という不動産鑑定士の代表幹事のコメントを紹介したら、地価下落にサミットの影響はないが、太陽光パネルは大いに影響していると志摩市の知人から連絡がきた

▼山は削る、住宅地の空き地や空き家を解体するなどで全国で問題になっている。県では一昨年十一、十二月、そのほか里山や休耕田、野鳥飛来で知られる沼地などに浮体式が設置されたと景観被害の視点から取り上げられた

▼災害発生や地域とのトラブルはなかったかを問われ廣田恵子雇用経済部長が「災害発生などの事例というのは把握はしておりません」。九月に発生した伊賀市の市道隆起がメガソーラー建設に因果関係があるとして県が開発中止を求めていたことが表面化したのは翌年一月だ

▼志摩市の「伊勢志摩国立公園を大切にする市民の会」が同月、「環境や観光資源の劣化は許さない」と市にメガソーラー計画反対を要望したが、市は、建設地約十カ所で「汚濁水が発生し海域などに流出していた問題がある」

▼近所で伐採が始まるとほぼ間違いなくソーラー敷設。家の両方向をパネルではさまれた気の毒な家もあるそうだ。追われたイノシシがゴミ集積所を荒らし、市民生活を脅かす。緑豊かなついのすみかの前に巨大パネルが出現する悪夢を見てぞっとするという

▼市は近く条例を作る方針。県の廣田雇用経済部長も制度創設を「近く国に提言する」。「近く」が県民感覚と一致していればめでたいが、知人らはすでに何十件という許可済みの計画が実行に移される日を恐れている。

2017年3月27日(月)

▼電動車いすに乗った女性がホームから転落し電車にはねられた近鉄久居駅について、本紙が「同駅に転落防止用の柵はない」とあったが、一部全国紙は「ホームドアはない」。ホームドア、つまり可動式ホーム柵は県内に一つもない

▼目下、終端駅で「お客様の転落を防止するための固定柵の整備を進めています」と近鉄のホームページにある

▼視覚障害者の転落死亡事故が相次いでも県に関連事象、施設を点検する動きがないのは点検先がないためだろうが、視覚障害者にはもともと冷淡なのかもしれない

▼初めて手話通訳を導入した記者会見で鈴木英敬知事は「障害をお持ちの方にも広く県政の情報を知っていただきたいというふうに思って」。視覚障害者のことが頭の片隅にでもあったらなかなか言えないせりふだ

▼全国最下位だった障害者雇用を法定雇用率達成にまで上げたのは鈴木知事の功績だが、雇用率は達成しても県庁に視覚障害者職員は一人もいないということ、すなわち「雇いやすい障害(者)」だけ雇用されていたとしても知事のアンテナにはかからないのではないか

▼東京・地下鉄や近鉄大阪線の事故のあと、県が「私たちにできること」をホームページに掲げた。乗降客が少ないので国のホームドア整備方針を満たすのは無理だから、効果は劣るがホームの端を知らせる点状ブロック「内方線」の整備を支援するという。視覚障害者を住む場所で差別するのはやむを得ないということだろう

▼視覚障害者にとって危険な県は車いす利用者はむろん、お年寄りや子どもにも危険な県だということである。

2017年3月26日(日)

▼国会証人喚問で安倍昭恵首相夫人付き職員のファクスを読み上げられて、菅義偉官房長官はよほどカッときたのだろう。資料はすべて破棄から一転、ファクスのコピーを配る異例の対応に出て、電話番号、メールアドレスの個人情報が表示されたままに気づいて慌てて削除を要請。翌日の衆院予算委員会で謝罪するはめに

▼公表の結果も「そんたく以前の『ゼロ回答』」という官房長官の思惑通りには進んでいない。頭に血が上ると冷静な判断などできないものに違いない。関与はあったかなかったか。多分に心の中の部分も加わるから、県の場合、外形で見極めている

▼平成十八年施行の「一定の公職にある者等からの要望等に関する取扱要領」通称口利き禁止要領である。「一定の公職にある者等」に規定し、それらから県職員に寄せられた「要望等」はすべて「口利き」だ。まず国会議員、県議会議員、市区町村長らで、その秘書、親族、代理人ら。知事もその親族もだ

▼「私自身まず起こり得ない」がと当時の野呂昭彦知事。「今後知事が替わっても制度は続いていく」。一期途中で「今後の知事」を想定したわけではむろんないが「多分全国でも実効性ある口利き禁止」と自慢の要領だった

▼鈴木英敬知事は先の会見で昭恵夫人について「私人とはいえ」という前提を付け、自分で説明する必要性をにおわせながらも「やっぱり私人としての国会審議とかへの影響とかをご配慮されているんだと思います」。全国有数の口利き禁止要領を統括する知事としては、それを踏まえた私人、公人の発言があってもよかった。

2017年3月25日(土)

▼各界各層の利害調整の主業務の一つである政界は、本音を貫くには建前を構築をしなければ周囲の協力は得られない。経済界は、互いに利害得失を前面に打ち出して交渉の場に臨まなければ、真の信頼関係は築けないのではないか

▼「働き方改革」をテーマにした「雇用創造懇話会」で、県が午後休を取って家族と夕食を共にする取り組みを紹介したのに対し、県商工会議所連合会の岡本直之会長はプレミアムフライデーとともに「家で食事をしていたのでは何の意味もない」とばっさり

▼「旅行や外食をしてもらえるようにすべき」と続けたのは、同会長が近鉄を経て三重交通グループホールディングス代表取締役会長である立場を考えると、何とも分かりやすい

▼初のプレミアムフライデーの二月二十四日、本紙が主な団体企業の様子を報じたが、三重交通は「早期退社などは特に呼び掛けていない」と回答。提唱した側としては、目的は単なる半休にあらず、それを利用し旅行など「個人消費喚起キャンペーン」にあることをお忘れなく、ということだろう

▼対する鈴木英敬知事は今日はプレミアムフライデーの話ではなく、などとは言わない。「企業や従業員にとって柔軟性のある改革が大事」と、働き方の問題に軸足を置きながら「雇用経済部が(担当する県の取り組みが)外で消費していないというのは確かにあまり良くなかった」

▼責任を一部門に転嫁することで歩み寄りののりしろを広げる。一定の成果、実績を積んだ政治家に成長したと自任するだけのことはある。遊泳術はもはや押しも押されもされない。

2017年3月24日(金)

▼二十一日の県議会本会議で、財源難を受けて鈴木英敬知事の給与や職員の期末勤勉手当を削減する予算案などが可決されたと報じられたが、議会の政務活動費二割削減については触れられていなかった。まとめた中村進一議長にしてみればいささか不本意だったかもしれない

▼代表者会議を構成する会派内で「意見が分かれ」(中村議長)少数会派からも「お茶を濁すようなやり方」「複数年やるべき」「議員報酬も」など「さまざまな意見」(同議長)があったというが、一つも採用されなかった。いわゆるニュース価値がそれほどあるとは判じられなかったか

▼政活費内訳の個人分十八万円、会派分十五万円のうち、削減は会派分からで、個人分にメスを入れてないという空気も反映したか

▼かつては第二の財布≠ネどと言われて余得を満喫した政活費だが、情報公開や有権者の目が厳しくなってくると、さて何に遣えばいいかに悩むのか、平成二十七年度四月分は、交付額約四百万円に対し返還額同二百六十五万円で返還率同64%。二割削減が多少議員活動や身を切る思いになるのかどうか

▼「大変ありがたい」とコメントした知事も「財政の健全化に向けた議論」がされていることに対してで、中身については「僕のほうから申し上げる立場にない」と警戒厳重を極める。一期目は議会費削減も公約に入れていたが、二期目は「政治家一年生に見合った処遇」などを理由に半減した自身の給与さえ「一定の成果、実績を踏まえ」旧に復した

▼政治家として経験を積むことは県民にとっていいことばかりでないようだ。

2017年3月23日(木)

▼一つの新聞でありながら面によっての正反対の見出しに、何だか読者に申し訳ない気がしてくる。公示地価である。一面が「二十五年連続下落」で、三面が「住宅地九年ぶりに下げ止まり」

▼県内と全国の違いなのだが、報じる立場でさえこんな気持ちになる。「サミット影響みられず」と報じられた鈴木英敬知事の気持ちはさぞやと同情する。調査した不動産鑑定士の駒田真人代表幹事に「開催地周辺で新たな道路や施設の建設といった土地価格に影響を与えるような取引は見受けられず、サミット開催による地価への影響はなかったと判断している」。きっぱり言い切られている

▼志摩市阿児町の普通の勤め人の知人が言っていた。「サミットで何が変わったということもないが、道路がよくなったことが、よかったと言えばよかった」。「道路がいやにきれいになっちゃってて」と、志摩市間を最近往復した津市の知人。道路整備が地元投下予算の大半で、そのための県の未曽有の緊縮財政だと思っていたが、単なる道路の化粧直しで、土地の価値向上には何の役にも立っていないらしい

▼昭和天皇の県巡幸で昔、県職員幹部らに語り伝えられた話がある。沿線沿いの見苦しい¥Z宅、建造物などに白い布をかけたそうだ。世界の元首≠轤迎え、発想おのずと似てくるのかもしれぬ

▼「高齢者施設の虐待過去最多」は同じ日の紙面の平成二十七年度全国虐待調査結果の見出し。県内は「家庭内が大半占める」で、施設の虐待は七件と少数ながら前年度比四件増で「過去最多」。こちらは、同じでない方がよかった。

2017年3月22日(水)

▼精神科病院での身体拘束や保護室などへ隔離が、調査を始めた平成十年以来、初めて一万人を突破したというが、調査項目に拘束が加わったのは同十五年からで、厚生労働省は今後、疾患の内容なども聞いて増加要因を分析するという

▼随分のんきな調査の進展だが、これを厚労省の緩慢と見るのは早計かもしれない。神奈川県相模原市の障害者殺傷事件の五年前、同県横浜市で「知的障害者ホーム建設、絶対反対」の看板を掲げた住民運動で、断念に追い込まれている

▼「民間施設への無断侵入」「地域の不動産価格低下」「子どもの安全、自由な遊びの妨げ」を主張し運動をリードしたのは民生委員も兼ねる自治会会長で、市は障害者や家族への配慮を説くだけ。新聞も「看板が問題視されたら」と静観。記事化は相模原事件後だった

▼同時期同地域ですんなり開所した施設もあり、反対運動を見て白紙撤回されたケースもあった。「看板が地域に受け入れられ『自分の近くに障害者は住んでほしくない』と思っている人がいる現実をあぶりだした」という母親の声を地元紙記者は伝えている

▼日本の精神医療は治療より他害への対応が重視されてきた側面があり、精神科病院の役割に社会防衛を含んできたことは否定できない。開放型治療を試みてきた県立こころの医療センターも、平成十九年の面会室での交際相手絞殺事件以来、管理体制は厳しくなった

▼拘束や隔離は人権侵害という指摘と治療に強制力を伴っても人権侵害とは言えないという考えの間で、厚労省はゆるゆる動向を見極めていくつもりかもしれない。