大観小観

2017年2月27日(月)

▼「いやあ、県職員は実にすすどい(鋭く賢い、すばしこい)」と感嘆したのは知事就任間もない北川正恭氏。当選から予算編成作業開始の短期日なのに、施策に生活者起点、さわやかなど「私が好む言葉がちりばめられている」

▼そんなことを思い出したのは、県議会一般質問で、奥野英介県議が新年度予算案について「ポストサミットが目立ちすぎ」と批判したと報じられていたからだ

▼重点事業を「ポストサミット」「命と暮らしを守るソフト・ハードのインフラ整備」「未来を担う人づくり」「少子化対策」「スポーツ推進の本格展開」「諸課題への的確な対応」の六本の柱に分類した中で、「諸課題への的確な対応」に含まれる事業が三つなのはご愛嬌(あいきょう)として「ポストサミット」は四十事業で断トツ。次の「命と暮らし―」の二十七事業に大きく差をつける

▼うち東京五輪・パラリンピック向けの農産物認証促進や移住、就職促進、地域活性化など雑多。直轄道路負担金など、なぜポストサミットか、首をひねるものも少なくない。ポストサミット事業として唯一、県政だよりにあげられていた女性会議は見当たらない

▼IT(情報技術)を重要政策に位置づけたら、各省庁の概算要求がIT関連ばかりになったと言ったのは森喜朗首相(当時)。東日本大震災復興予算の中に沖縄の国道整備事業などがあったように、予算獲得のためトップが好む言葉をちりばめるのは公務員の習性、能力というものなのだろう

▼奥野県議は続けて「夢がない」とも批判している。貧すれば鈍す―こちらは、能力に限った話ではない。

2017年2月26日(日)

▼国会の焦点に浮上した学校法人への国有地格安売却問題。小学校名に自身の名前を使われ、安倍晋三首相が「驚愕した」と言えば、昭恵夫人は名誉校長就任を辞退するなど疑惑、疑念は深まるばかりだが、新聞の方も、朝日新聞が「売却経緯、異例ずくめ」と見出しに書けば、毎日新聞は「土地取引、異例尽くし」

▼「ずくめ」と「尽くし」。朝日新聞の「異例」は原則公開の売却価格を非公開にした上、報道されると一転公表したことや、売買の約束をして定期借地契約を結び、売買に改めて分割払いにしたこと

▼また、土地内のごみ撤去費見積もりを入札にかけずに国土交通省大阪航空局に委託し、撤去費用を含む売却価格を設定しながら撤去するかどうかは学校任せのこと

▼毎日新聞の「異例」はそれらに加え、売却以前にごみ撤去費用として学校側に支払った分を売却価格から差し引くと二百万円で売ったことになる疑問も指摘。内容的に両紙に違いはないようである

▼辞書によると「ずくめ」は「その物ごとだけである意」で、「づくし」は「その類を全部ならべ挙げる意」。いろいろな山菜を具材にした「山菜づくしの料理」とは言うが、マツタケだけで焼き物、吸い物などを作れば「マツタケずくめの料理」

▼土地取引を一つのものと見るか、あの取引もこの取引もと見ているかでの両紙の違いとなるか。昭恵夫人は学校での講演で「主人も素晴らしいと思っている」と言ったそうだ。来県の際のあいさつで「主人に伝える」と言ったことは以前書いた。「主人ずくめ」「主人ずくし」。いや、「主人頼み」か。

2017年2月25日(土)

▼おや、どうかしちゃったのかと思わず首をかしげたのが、プレミアムフライデー開始を前にした鈴木英敬知事の記者会見である。定時退庁と有給休暇の取得を呼び掛ける電子メールを職員に送っただけ、という。いつもの乗りのよさがなく、写真もいつもの満面の笑顔に象徴される覇気はない

▼前日の県議会代表質問でも、あれほど情熱を込めた三重テラスの見直しを提言され「検討していく」。立つ鳥跡を濁さず、ではなかった、一石二鳥―すなわち消費の喚起と働き方改革を狙った政府、経団連いち押しの施策である。ポストサミットの観光客誘致につなげる発想が出てきてもいい気がする

▼週休二日制が始まったころ「花の金曜日」、略して「花金」と呼ばれ、金曜日は心浮き立つ日だった。そのころ『金曜日の妻たちへ』という不倫がテーマのテレビドラマが大ヒットし、こちらは「金妻」といわれたが、そんなトレンドのせいかもしれない

▼「花金」はもはや死語と言われるが、宮崎県日南市の崎田恭平市長が部下の二十代の女性に「会いたかった」などのハートマーク入りのメッセージを送り、誤って登録していた市職員複数に一斉送信した。「金妻」は健在

▼崎田市長は仕事と子育ての両立に理解のある上司「イクボス宣言」をしたことで知られ、昨年二月のMIE地方創生ベンチャーサミットで来県、鈴木知事らとシンポジウムに出席している。親交浅からぬか

▼同サミット直前は、知事が公開で応援していた育休宣言の宮崎謙介衆院議員(当時)に不倫が発覚した。憂鬱にもなろうというものかもしれない。

2017年2月24日(金)

▼伊賀市立保育園の送迎業務の一般競争入札で、官製談合を疑う市民の調査要望を受けて市が関係課に聞き取り調査した結果は「職員による情報漏えいの事実は確認されなかった」だった

▼この種の調査で「確認された」というケースは聞かないが、市入札談合情報処理要領によると、談合情報が「具体的内容」の場合、市公正入札調査委員会に通報する、とし、設計金額に極めて近い落札予定金額など「談合に関与した当事者以外には知り得ない情報が含まれている場合」、同委に報告するとある

▼問題の業務は九日に入札し、十日に契約。調査要望は十三日。結果は分かってからの要望で要綱の規定には当てはまらないが、例年より百万円低い最低制限価格なのに、落札金額はそれを三万五千円上回っただけ。例年なら失格になる金額だ。どうしてそんなことができたのかと調査要望した市民は言いたいのだろう

▼市は最低価格引き下げについて「運転手の人件費を正規雇用から短時間労働者の給料額に引き下げたため」と説明している。この条件変更を落札業者が知っているとしか思えないのはなぜかは、むろん市の説明では氷解しない

▼伊賀市は指定管理者制度で運営する忍者屋敷や芭蕉記念館について、職員の低い給料に抑えられて人材が定着しないとして市の直営に戻すことなどが議論された。文化施設に同制度はなじまないとして当面、学芸員らの身分保障と永続的勤務体制が申し合わされている。運転手の給与などは下げても構わないというのもあまりにご都合主義。同一労働同一賃金の精神に反する気はする。

2017年2月23日(木)

▼「いじめはなかったと聞いた」と、ぶら下がり会見で鈴木英敬知事。十七日に列車にはねられて死亡した中二男子のことだが、自殺の疑いがある中で、津市教委は事故後、中学校に聞き取り調査し、いじめの有無や出席状況を確認したというが、わずか三日間で結論は出ていて報告は知事まで上がっていたらしい

▼続く「全く何の兆しもなかったとは考えにくい」というのは、従って、前日の前葉泰幸・津市長の「インターネットの普及などで教員が子どもらと目を合わせて会話する機会が少なくなってきている」という指摘と呼応する。まったく気がつかないとは、何ともふがいない教員だと言っているのだ

▼県や県教委が重視している「命を大切にする教育」が「子どもたちにきちんと響いているのか」「教育の仕方も重要」と、鈴木知事は厳しい。前葉市長は生徒の心の安定・安心に「教員の多忙化の解消」「教員が子どもらと向き合う環境づくり」を強調。時間差一日の掛け合い漫才のようだが、市長就任一年目にいじめ問題への対応が原因とされる中学校長の自殺事件に遭遇し、知事ほど学校現場に厳しくはできないのかもしれない

▼文部科学省が子どもの自殺について原因を毎年調査し、対応しているのに対し、教員の自殺が年間二十、三十人の県で、原因を調べようともしない県教委に「命の大切さの教育」を重視している痕跡は、ないようなものだろう

▼生徒への定期的なアンケート調査100%の県で、いじめ件数は年々大幅に伸びている。いじめはなかったの結論ありきで早々の幕引きをしてはなるまい。

2017年2月22日(水)

▼津市の中学二年生の男子が列車に引かれて死亡した事件で、生徒の携帯に自殺をほのめかすような記述があったという。原因の調査が進められているようだが、前葉泰幸市長が教育現場について「教員が子どもらと目を合わせて会話する機会が少なくなってきている」と分析していた

▼生徒が何を考え、何に悩んでいるか、教員が分からなくなってきているということだろう。原因に「インターネットの普及など」をあげているのは、生徒がスマホに熱中しているためということか。教員の多忙化を解消する仕組みづくりが「教員が子どもらと向き合う環境」になるとも

▼教員側と生徒側とがそれぞれの事情で距離がどんどん離れていると言っているようでもある。学力向上で「自己肯定感が高まっていく」というのが、昨年の中学生集団暴行死事件を受けた鈴木英敬知事の認識。学力向上からはみ出した児童生徒はどんどん自己肯定感を失っていくと言っていることでもあるから、市長の分析と底流ではつながっているのかもしれない

▼前葉市長は教育相談員などの増員で対応していくという。県も新年度予算案でスクールカウンセラーなどの充実に力を入れているから、こちらは軌を一にする

▼非常勤職員で問題を回避しようということだろう。「教員と子どもが向き合う環境をつくる」(前葉市長)考えと相反する気がするが、スクールカウンセラーなどは学校長の指揮の下で、教員との連携が強調されている

▼学校に筒抜けになる機構に相談に行こうとする生徒がほとんどいないことは、津市の調査を待つまでもない。

2017年2月21日(火)

▼「いじめ調査四割以上非公表」という共同通信の調査で、「いじめ調査は過渡期にある」と指摘する大学教授の肩書が「ある自治体で(第三者委員会の)委員長を務めている」とあったのに_が緩んだ。「委員名さえ公表しない自治体がある」と記事にある。そんな自治体の委員長かなと思ったのである

▼県が情報公開条例制定に取りかかったころ、諮問機関の会議、会議録は法定、私的を問わず原則公開の方針だったが、運用段階に入り、プライバシーの侵害などの適用除外事項以外に「会議の公正かつ円滑な運営に支障」が非公開理由に加わった。公開すると、なぜ会議に支障がでるのか。委員が「言いたいことが言えなくなる」と公開を嫌うからだ

▼「名前がでると後が怖い」と暴力団の被告を裁く裁判員の心境に似た事情が、委員にあるのだろう。審議が政策へ影響を与えることは法で定められている。責任を問われぬのが前提の意見に政策が左右されていいかは問われてもいいのではないか

▼県人権施策基本方針策定の審議会に携わったことがある。担当部長が「厳しい議論ばかりで大変。一番しんどいんではないか。ほかの審議会は楽」という趣旨の発言をしていた

▼そんな審議会でも、一度決めたことを「県議会の予算審議にかかわる事案で諮問外だった」と会長が「運営ミスを陳謝」して白紙にされたことがある。事務局の強硬な反対で修正されたことも。事務局の意向で、当事者外の委員の態度が徐々に軟化していく

▼「いじめ調査四割以上非公表」は、公表を嫌う教育委員会だけの責任でもない気がする。

2017年2月20日(月)

▼「入るを量りて出ずるを制す」は家計の基本だが、国や地方自治体の予算編成は「出るを量って入りを制す」が原則。支出に応じて収入を確定するのだ

▼「環境保全基金」という本来の使い道ではない基金から一般会計に繰り入れる「異例の措置」に鈴木英敬知事は「税収が減ったりしたからといって(支出を)一気に減らすことはできない。できる知恵を出してルールの範囲内でできることをしてきた」

▼胸を張って言えることかどうか。「出るを量って入りを制した」ようには見えないのだ

▼各部局の予算請求に55%のシーリングをかけたことは、むろん「出るを量る」一環。達成すれば、収入は確定できる成算があったことを意味する。県職員、教職員の給与削減で歳入不足を賄おうとしたことも成算≠フうちに入っていたと考えるべきだが、交渉の経過でいったん撤回する動きを見せるなど、腰が定まらない。結果、当初予算編成に間に合わず、そのために環境保全基金から繰り入れるというのでは、まるで自転車操業の趣だ

▼ネーミングライツ(命名権)の導入可能施設拡大方針を十七日明らかにしたのもちぐはぐ。財源探しとして導入した施策のはずが、予算編成日程と関係なく進めるのでは、収入確保に「あらゆる手を尽くしているとは言い難い」という県職労の指摘が事実になる

▼歩道橋への導入は昨年打ち出したが、掲載禁止対象としている屋外広告物条例の改正もまだらしい。「適用除外」にできるが、収入が歩道橋整備に充てることが前提だが、これもルールの範囲内と強弁するつもりかもしれない。