心地よい展示品と庭園 ― パラミタミュージアム (05.5)

左から岡田卓也氏、1人おいて辻輝子氏、小嶋千鶴子氏

 連休も半ばとなりました。有意義な休暇の過ごし方の一提案をします。

 東名阪自動車道・四日市インター下車、湯の山街道沿いにありますパラミタミュージアムを訪れてはいかがですか。以下はウェブサイトより。

 パラミタミュージアムは、自然豊かな鈴鹿山脈を背景に四季折々に美しい町・三重県菰野に2003年3月開館しました。

 池田満寿夫の陶彫「般若心経シリーズ」をはじめとする多彩なコレクション群と、魅力あふれる企画展を両輪に、展覧会を開催してまいります。

 美術館併設のパラミタガーデンでは、地元鈴鹿に植生する山野草が彩る里山での散策をお楽しみいただけます。周辺観光地の行き帰りに、お気軽にお出掛けください。心よりお待ちしております。

 館名の「paramita(パラミタ)」はメインコレクションの池田満寿夫「般若心経シリーズ」にちなんで、梵語(ぼんご)の「波羅蜜多(はらみった)=迷いの世界である現実世界の此岸(しがん)から、悟りの境地である涅槃(ねはん)の彼岸に至ること」に由来しています。

 小中学生は無料です。午前9時半―午後5時半、年中無休。庭園も一見の価値があります。

 私も仕事柄、欧州の富豪の個人美術館を見せていただく機会があります。
これほどの建物規模と内容のある美術館は少ないです(よくある例としては、何が主眼か分からぬばらばらの収集になってしまっています)。

 イオン元社長岡田卓也氏の姉であり、四日市市の岡田屋を日本のイオンに、卓也氏とともに育て上げた小嶋千鶴子氏の、眼光紙背に徹する鑑識力と財力がここまでのコレクションを完成させつつあるのかとの感があります。

 常設の、天才池田満寿夫の「般若心経シリーズ」の陶彫は、展示方法・ディスプレー・照明が一体となって素晴らしいです。
最近の大型美術館・博物館は見て回っているうちに、どうしたことか気持ち悪くなってくる建物が多いです。空調、展示室の天井高、容積の関係でしょうが。

 このミュージアムはそんな心配はありません。展示と庭園が見学者に心地よい博物館なのです。
私の師である芸術院会員、池原義郎早稲田大学名誉教授は「死んだ博物館と生きている博物館」ということを話してくれたことがありました。

 かつて集めた収集物をローテーションに沿って展示するだけの、カンピンタンの展示をするだけになってしまった、いわば化石展示の博物館。
一方では現代に問題意識を持ち、次々に企画展を実施し続ける博物館。

 パラミタミュージアムは生きているミュージアムです。

 広く江湖にお勧めする次第です。
現在、「辻輝子展―彩陶の美」が企画展で行われています。
これがまた素晴らしい。こんなにもきれいな陶があるのかというものです。

 なにしろ天皇皇后両陛下が辻さんの陶芸をすこぶるお気に入りで、両陛下が皇太子殿下・妃殿下であられた折、2度にもわたって、東宮御所で個展を開いておられたのです。

 美智子妃殿下(当時)がたいそうお気に召して、2カ月間手元に置かれたという水指しも展示されています。
これは辻さんのお弟子さんの個人所蔵ですから、今見ないと再びお目にかかることは難しいですね。

 なお、辻輝子さんは伊豆の伊東市で陶の華美術館を開いていましたが、85歳になられたのを機に、350点の所蔵をすべてパラミタミュージアムに譲られました。
「先生、よござんしたですね」というのが、4月1日の企画展オープニングに駆けつけたお弟子さんたちの異口同音の言葉でした。

 個人のコレクターたちに散逸するのでなく、こんな立派な美術館に所蔵されて一般の多数の方の目に触れるのですから、作品も生きていきます。

 これだけのコレクションを新たに収蔵したミュージアムを持つ三重県民も「よござんしたね」です。