川竹津市議を難ず (99.2)

 二月九日付の伊勢新聞によると津市議会一期目の川竹大輔市議が高知県庁に迎えられるそうです。本人自ら橋本高知県知事を訪ねて、売り込んだそうです。

 津市民からは「あの人は変わっているからしょうがない」と好意的に受け入れる声もあります。一方、四年間公職者として給与を受けていて何らこれといった実績を築き上げることもできず、さっさと転身する身勝手さにあきれる市民も少なくありません。いわく「税金である給与のただ食い男」とか「世渡り上手で口が上手な者の得する世の中ですね」。

 私は氏に何の恨みもありませんし、三重県の六十九市町村の千人を超える議員さんの一人である川竹氏にいちいちかかずりあいになっている暇もありません。ただ氏個人の問題だけにとどまらず、広く日本を覆っている無責任な政治家(若者)の独りよがりな風潮の一端が露呈していることに注目して感想を述べてみたい次第です。

 川竹氏にとってはとんだ迷惑かもしれませんが、「新風を巻き込む」役割が最後に受動的ではありますが、果たせるかもしれませんから、もって甘受すべきではないでしょうか。青島東京都知事は再出馬しないことを表明したのはご承知の通りです。都政を何一つ改革できず、最大の都民のための決断は「不出馬宣言」だったと言う情けないものでした。彼を揶揄(やゆ)したこんなざれ歌をインターネット上で見かけました。

ちょっと冗談のつもりで出馬
いつのまにやら都知事様
気がつきゃ支持者は皆離れ行く
これじゃあ再選できるわけ無いよ
わかっちゃいるけど止められない

 彼が作詞した「スーダラ節」にうまくはまります。
都知事のところを市会とか県会あるいは町会に置き換えてみてはいかがでしょう。来る統一地方選挙に、選挙民として望む心構えが少しは変わるでしょうか。川竹氏は平成五年東大教養学部を卒後、十一カ月ほど朝日新聞社に勤めた後退職しました。津市において唐人踊り保存会を結成し、平成七年二十五歳で市議に初当選しました。もっとも落選者は一名の選挙でしたが。

 ジーンズ、スニーカーで登庁するなどユニークな行動も若さのせいもあり好意的に温かく受け入れられていました。それは将来への期待感であったわけです。しかるに何の成果も出すことなく、津市議を踏み台にして、己の保身・栄達をちゃっかりと図る達者さにはあきれます。しりぬぐに橋本高地県知事を引っ張り出す巧みさは見事なものでさえあります。

 近ごろこのような若者を散見します。高学歴である▽弁舌は巧みである▽さわやかな容姿の持ち主でもある▽仕事はいまいち物足らないというかピント外れなことが多い-という若者たちです。もちろんこのような人たちは民間企業ではすぐ見破られて追い出されますから、行き着くところは、公務員ということになります。

 新聞記者としても見習いに毛が生えた程度で終わり、市議会議員としても、一期勤めただけで辞め、気がついたら三十代に入りかかっている「極楽とんぼ」みたいな存在にしかみえません。高知県で公務員をやった後はまた選挙に立候補するのでしょうか。
ハルバースタムの名著「ベスト&ブライテスト」の冒頭に、長老政治家がケネディやマックジョージ・バンデイ、マクナマラらの若きエリートたちを危ぶんでこういう意味の言葉を述壊する場面があります。「彼らのうちのだれ一人として、選挙民を一軒ずつ訪問してその声を聞いたことが無い」。
それをもじって言わせてもらいますと、「彼らは(川竹氏は)一度もまともに働いたことがない」ということになります。

 アメリカやヨーロッパでは、公務員や官僚のことを国家社会に寄生するパラサイト(寄生虫)であるという考え方があります。氏のごとき生き方は、漱石が小説で表現した「高等遊民」と呼ぶと分かりやすいのかもしれません。しかし夏目漱石の時代の「高等遊民」は自己責任において自分の財産を基に遊民していた高等な人たちであったのです。決して納税者の上にあぐらをかいて役得を決め込んでいたわけではありません。

 氏が中心になって行われた津市内のフリーマーケットにおける運営は不手際が重なり、支離滅裂の状態であったと参加者から聞いたことがあります。フリーマーケットの運営ひとつリーダーシップを発揮できないものが高知県でいかなる祭りのネットワークをつくり上げていくのか危ぶみます。津市の市会議員さんは立派な方が多いと私は信じています。高知に氏が赴かれて、不手際、怠慢が続きますと「本当に県都・津の市議会員だったのか」と津市議の低評価にもつながります。

 氏が私の苦言に猛奮発して、地道な努力をすることから再出発してくれない限り、危惧(きぐ)は的中するでしょう。「人間はなかなか変わるものではない」というのが氏より二十一歳年上の私の経験から来る見方でもあります。
高知県は人口八十一万一千人とわが県より百四万人ほど少なく、県民所得も沖縄に次ぐワースト二位の貧しい県です。くれぐれも高知県の税金を食いにきたと言われぬよう努力していただきたいと願う次第です。

 かの県には高知新聞という有力な県紙があります。弊紙も同じ日本新聞協会加盟社であり、共同通信加盟社でもあり、毎月のように役員さんと交流があります。
氏の件は今後も高知新聞さんを通じてウオッチングさせていただき、県民、市民の皆様に報告させていただくことを約束して、別れのはなむけとします。

好漢、地道な努力をせよ。
海外留学に逃げるな。