「何でも感謝」の気持ちで − 伊藤順子さん


【「出会いは宝物」と話す伊藤監査役=桑名市大福の桑名電気産業で】

 「出会いは宝物。いろんな出会いが、人生を豊かにするのよ」とほほ笑む。「そして、忘れてはいけないのが『何でも感謝』の気持ち」。穏やかな笑顔が、周りの空気も和ませる。
 2歳の時、両親やきょうだいと共に満州に渡った。戦時中は何の苦労もない生活を送っていたが、終戦後は一変。日本へ引き揚げるために乗ったはずの貨物列車だったが、アパートのような所に収容され、約1年間過ごした。生活は厳しく、たくさんつらい思いをした。残留孤児になりかけたこともあり、当時の記憶を思い出すと涙が出てくる。再び触れ合えたときの母親の肌のぬくもりは、今でも鮮明に覚えている。
 ある日、突然の通知が来て、大きな船で1週間以上かけて帰国することができた。2年後にはシベリアに抑留されていた父親も、無事帰ってきた。
 「素晴らしい両親だった」と2人を誰よりも尊敬し、感謝している。「朝に感謝、夕に感謝。おごらず謙虚であれ」といつも父親から聞かされてきた。その言葉は今でも自分の中で大切にしている。そして、母親の頑張る後ろ姿をずっと見てきた。そこから「生きる力。命の大切さ。どんなことにも負けない精神力をもらった」と振り返る。
 現在は桑名市国際交流市民アドバイザー委員会の副会長として、日本語学校で日本語の指導に当たっている。「毎日充実していて、今はそれが楽しい」と満ち足りた表情を見せる。
 「1日に感謝して、寝る。その繰り返しでありたい」と、日々を大切に生きている。

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