<まる見えリポート>認知症対策の改正道交法 免許返納で事故抑止へ

【運転免許証の返納手続きをする高齢者ら=津市の県運転免許センターで】

【運転免許証の返納手続きをする高齢者ら=津市の県運転免許センターで】

 高齢者の認知症対策を強化した改正道交法が三月十二日に施行された。交通事故に占める高齢者の割合が全国的に増加傾向にある中、運転免許証の自主返納の機会が増すことで事故抑止に期待がかかる一方、日常の足として代替手段となるサービスの拡充が求められる。

(県警・小林哲也)


 県交通企画課によると、六十五歳以上の高齢ドライバーが第一当事者となった人身事故の割合は全体の19・8%(平成二十八年)で、過去十年間にわたり右肩上がりで連続して増え続けている傾向という。

 改正道交法では、七十五歳以上の高齢運転者を対象に、臨時認知機能検査と臨時高齢者講習を新設。信号無視や一時不停止など、認知機能低下時に起こしやすい違反行為があった場合には、臨時認知機能検査が義務付けられ、運転に影響があると判断された場合は実車と個別指導計二時間の臨時講習を受ける必要がある。

 また三年に一度の免許更新時の認知機能検査時や、前述の臨時検査時に認知症の恐れがあると判断された場合、医師による臨時適性検査の受診か、主治医による診断書の提出が必要となり、結果次第では強制的に免許取消しの対象となる。

 県運転免許センターによると、運転免許証返納時に配布される運転経歴証明書が公的な身分証明書として使用できるようになった平成二十四年四月を境に、運転免許証の返納数は増加傾向にあるという。

 特に昨年秋ごろからこの春にかけて、返納数は前年比一・七―二・四倍近く増えており、同センターの冨山悦秀副センター長は「改正に向けて高齢者の事故が報道される機会も増え、家族が心配するようになったのでは」と分析する。

 同センターでは改正道交法の施行に伴う需要増加に備えて、日曜日の免許返納手続き受付を開始。開設した一月八日から三月十二日までに四十件の利用があった。現在は午後二時半から一時間限定の受付だが、利用者増に応じて人数や時間の拡大も検討するという。

 増加傾向にあるとは言え、三重県の免許返納者の割合は全国で見ると決して高くはない。二十七年中の運転免許保有者に対する返納者の割合を示す返納率は、三重県が1・22%で全国ワースト一位だった。背景には代替手段となる交通手段に対する不安がある。

 こうした事態を打開しようと、県は二月二十四日から、免許返納者への特典付きサービス提供事業所を紹介する「運転免許証自主返納サポートみえ」を立ち上げ、ホームページなどを通じて参加事業所を募集している。十八日現在、交通機関や小売店など二十事業所が参加を表明している。

 このうち三重交通(津市中央)では三月一日から、運転免許証の自主返納者を対象とした割引サービスを開始。路線バス利用時に運転経歴証明書を提示することで同伴者一人まで運賃を半額にできるほか、従来あった免許返納者を対象とした割引定期券「セーフティパス」に、一カ月間と三カ月間用を追加した。四月一日からは、関連会社の旅行商品の割引サービスも期間限定で開始予定という。

 自治体では、松阪市が三月一日から市内を走るコミュニティバスについて、三重交通と同様に運転経歴証明書所有者に対して同伴者一人まで半額とするサービスを開始。明和町では七十五歳未満の年齢制限付きで、四月一日から運転経歴証明書所有者のコミュニティバス利用の無料化を開始する。

 しかしこうした一部を除くほとんどの自治体はまだ対策について検討中で、十分な着地点が見つかっていないのが現状だ。

 誕生日に合わせて十二日、妻と運転免許センターを訪れた津市河芸町千里が丘、無職伊藤義隆さん(87)は、一年前から返納の準備を進めてきたという。視力低下や家族の心配を受けて返納を決断すると、自ら運転を封印し、毎日のウオーキングで体力向上に努めてきた。

 伊藤さんは「ハンドルを持つとどうしても自分の技術を過信してしまう。何かあってからでは遅いので、いい機会と思う」と法改正を歓迎する一方で、「車がないと不便なのは確か。自分は子どもがいるのでまだ手段はあるが、そうでない人のためにも、インフラ整備は必要」と強調した。

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