<まる見えリポート>伊勢志摩の地域防災 ドローン活用へ実験

【実証実験で使われているドローン。画面は、ドローンで撮影した志摩市志摩町和具地区の上空映像=鳥羽市池上町の鳥羽商船高専で】

【実証実験で使われているドローン。画面は、ドローンで撮影した志摩市志摩町和具地区の上空映像=鳥羽市池上町の鳥羽商船高専で】

 伊勢志摩地域で、住民と地域防災の専門家が連携し、小型無人機(ドローン)を災害現場で活用するための実証実験が進んでいる。実験に協力している自治会は、被災状況の確認や家屋に取り残された住民の捜索などでの活躍を期待しており、導入を検討中。専門家は「避難生活では『状況が分からない』ことが多大なストレスを生む。どんなにひどい被災状況でも、人は現実を知れば前に進める」と指摘している。

(伊勢志摩総局・倉持亮)


 実証実験は、災害弱者支援を専門とする愛知県立大学(名古屋市)看護学部の清水宣明教授(感染制御学)と、鳥羽商船高等専門学校制御情報工学科の江崎修央准教授らが中心となり、昨年から始まった。

 伊勢市東大淀町(おいずちょう)のまちづくり協議会と、志摩市志摩町和具の自治会の協力を得ながら両地区で、どのコースを飛ばせば、集落の被害情報が得やすいかなどを調べる試験飛行に取り組んでいる。両地区での実験は、今年夏ごろまでに終える予定。清水教授によると、地域独自で被災状況を確認しようとする試みは、全国的にも珍しいという。

 ドローンは、落下事故や犯罪への利用が危険視される一方、小回りが利く機動性から、災害現場での活用方法が全国的に検討されている。昨年の東日本豪雨では、国土地理院がドローンを飛ばし、被災状況を確認。撮影した映像を同院のホームページや動画投稿サイト「ユーチューブ」に上げた。

 清水教授らが伊勢志摩地域で検討しているドローンの運用は、広範囲の被災状況を調べるものではなく、各集落単位で活用する方針。使用するドローンは一台約二十万円で、自治会などが購入できるものを選んだからだ。このドローンには高解像度のカメラ(4K解像度)が搭載されており、一台で半径二キロ四方をカバーでき、二十五分ほどで調査を終えられるという。

 ドローンをめぐっては、昨年十二月にドローンの飛行ルールを規定した改正航空法が施行され、空港周辺や人口密集地、高度百五十メートル以上の上空を飛ぶ際は、国土交通大臣の承認が必要となった。東大淀地区は、陸上自衛隊明野駐屯地が近くにあるため、実証実験の際は、国交相へ飛行許可願を出すという。

 災害時の運用では、住民が避難所に逃げた後、道路の寸断や家屋の倒壊など、地区の被災状況の確認や、逃げ遅れた人がいないかなど、捜索・救出活動での活躍に期待を寄せる。撮影した映像はインターネット上の情報共有サービス「クラウド」に上げることで、誰でも見られるようにする予定だ。

 落下事故の危険性についても考慮している。江崎准教授は「事故原因の大半は、手動操作の誤り」と指摘し、生徒らが、ドローンを自動飛行させるためのプログラムを開発している。また、バッテリーが一定値以下になれば、ドローンは飛ばした場所に自動で戻ってくるため「自動飛行で落ちることはまずない」と強調する。

 清水教授は「東日本大震災では、避難生活のストレスで多くの人が体調を崩した」と述べた。その上で「ドローンは地域の新たな目。高齢者が多い地区でも自分たちで被災状況を確認できる。『知らない、分からない』ことが最も恐ろしく、知ってしまえば人は前に進める」と力を込める。

 今後は、行政の協力が得られれば、伊勢や志摩の各自治会にドローンを配備し、各地区の情報が市の災害対策本部へ集められるような仕組み作りも検討していきたいという。

 元自衛官で東大淀地区まちづくり協議会の向井芳夫事務局長(65)は「大型の自衛隊機では低空飛行ができないので、小回りが利くドローンは災害時の情報収集において非常に有効。実証性が確認できれば、なるべく早期に購入すると共に、市や消防、警察、自衛隊などの防災担当者を集めた勉強会も開き、運用方法を検討していきたい」と語った。