サッカースタジアム建設に向けて

先日、三重県サッカー協会の岩間会長が鈴木知事と会談された。その中で、岩間会長は県内にJリーグ加盟条件を満たすスタジアムの建設を進めるにあたり、整備に向けた準備会を設ける考えを示され、県に対し準備会への出席を要請された。それに対し、鈴木知事は準備会に県も出席する考えを示し、サッカー協会の決断と取り組みに対して一緒に議論する旨を伝えられた。

三重県で活動する一人のサッカー指導者として、県内にJ1リーグの水準を満たしたスタジアムが建設されることを切に願う。そして、その実現に向けて私なりにできることを全うしたい。J1基準を満たすスタジアム建設が実現すればさまざまなメリット・効果を生み出し、三重県内に存在する課題の解決策として起爆剤的役割を担うことは間違いない。

政府は、わが国のスポーツの成長産業化を促進する起爆剤として「スポーツ・アリーナ改革」を柱の一つとして位置付けている(平成28年6月2日閣議決定)。そして、今年6月には、スポーツ庁と経済産業省の連名で「スタジアム・アリーナ改革ガイドブック」が策定・公表された。

このうち、『これまで我が国のスポーツは、教育的側面に重点が置かれていたこともあり、成長産業になりうるものとしての認識が低かったとの指摘がある。しかし、モノからコトへという経済価値の転換に沿った形で、従来の教育的側面に加え新たな産業としてスポーツの重要性が高まっている。地域における産業としてのスポーツは、小売、興行、建設、旅行、放送・新聞等、地域経済のさまざまな分野を活性化する可能性があり、スタジアム・アリーナはそのために必要な基盤である』という一節は非常に示唆的である。

以前もこのコラムの中で紹介したが、1999年からJリーグに参加しているヴァンフォーレ甲府についてみると、三重県の総人口の半分にも満たない山梨県でのホーム戦17試合の平均観客動員数は1万人を超え、18年間の飲食、宿泊、観光等を含めた累積経済効果は300億円を超える。このような成功事例を参考に、三重県でもJリーグクラブを生み出し、それに見合ったスタジアムの建設を急がねばならない。

スタジアム建設のためには当然ながら行政、クラブ、県民の皆さまが力を合わせることが必要になる。そして、各関係者の立場は違ってもスタジアム建設に向けて同じ方向を向いていなければ成功は難しい。そこで、各関係者が共通認識として有していなければいけないと私なりに考えた3つのポイントを挙げておきたい。

①構想段階から広域的な波及効果に重きを置き、県が抱える過疎・少子高齢・医療費の増大・労働力不足といった社会的課題の解決策となりえ、発信基地となるような計画立案をすること。

②スタジアム建設を長期的視野から世界戦略(世界へ発信・国内外から集客)の一環として捉えつつ、地域住民の憩いの場、および多機能複合型施設として三重県の新たなシンボルとなること。

③興奮や一体感といったスポーツが持つ価値を最大化することができ、地域を活性化させる持続的成長の核となるようなプロスポーツチームを育む拠点となること―である。

中田一三
中田一三

なかたいちぞう 1973年4月生まれ。伊賀市出身。四日市中央工業高時代に、全国高校サッカー選手権大会に3年連続出場。92年1月の大会では同校初優勝をもたらし、優秀選手に選ばれた。中西永輔、小倉隆史両氏と並び「四中工の三羽烏」と称された。プロサッカー選手として通算194試合に出場。現在三重県国体成年男子サッカー監督。