今回は、大紀町にある大内山動物園を紹介しましょう。
山深く静かな大内山の緑の中にある小さな動物園です。
かつては脇正雄さんという方が自宅庭にクマやシカなどの動物を飼っていて、一般にも公開していたものでした。脇さんが死去し、閉園の危機にあったのを、知人の会社経営者山本清號さんが引き継ぎ、私財を出してリニューアル。平成21(2009)年に新たにオープンしました。
現在では約70種400頭の動物たちがいて、休日は家族連れでにぎわっています。
さて、この大内山動物園、いったいどんな動物園なのでしょうか?
◆さまざまな境遇の動物たち
ここで飼われている動物たちは、保護のために引き取られたものがほとんど、というのがこの動物園の大きな特徴です。
たとえば、右写真のシカたち。交通事故や狩猟で負傷したもので、それらを同園が保護したものです。柵の前に、ここにやってきたいきさつが書かれた看板(右下写真)が掲げてあり、ちょっと哀愁を誘います。
こんな感じで、ここにいる動物たちはさまざまな境遇を経て、保護されたものが多いのです。主なものを挙げると、他動物園が閉園して引き取り手のなかった動物、個人で飼っていたが入院して世話できなくなったため引き取ったサル、住宅街で迷子になっていたところを保護されたブタ(左下写真)、神社や住宅の屋根裏で生まれたが、育児放棄されたアライグマ(右下写真)など・・・さまざまな境遇の動物たちばかりです。
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◆飼育員たちの献身的な保育で驚異的な回復
こうした動物たちは、心や身体に傷を負ってこの動物園にやってきたものばかり。しばらくの間は管理棟など、来園者から隔離された専用の部屋に移され、保護されます。時に飼育員が自宅に連れ帰って人工的に保育するものもあるそうです。
こうした献身的な保育の成果でしょうか。展示されている動物たちは人なつっこくてかわいらしいです。そばを通るだけでエサを求めて近づいてきます(右写真)。
◆動物たちにとっても快適な空間
動物園では、柵や飼育部屋など、木造でつくっていますが、これはリニューアルの際、近くの山で伐り出した木材を使って作ったものです。大内山の深い山々を背景に、木の質感が映えて、非常にきれいな景観をつくっています。
そう。大内山は自然豊かできれいな空間です。園内の水は、近くの川から引いた自然のままのきれいな水を使用しています。この快適な空間、きれいな水、そしてきれいな景観。このような恵まれた中で動物たちは心身の傷を癒しながら育っているのです。ここは動物たちにとっても快適な空間なのでしょう。
◆動物愛護のため
大内山動物園は、保護すべき動物の引き取り依頼がある都度入手するため、計画的に動物を入手しているわけではありません。さまざまな種類の動物がやってくるため、その分エサもさまざまなものを用意しないといけません。通常の動物園よりもそういった面での費用がかさんでしまいます。
1匹でも多くの動物がいきいきと暮らせ、1匹でも多くの動物の命が救われること。これが大内山動物園のモットーでもあります。
入園料1,500円は、この手の動物園にしては割高感はありますが、この金額で1匹でも多くの動物が救われると思えば、それほど高いものではないでしょう。動物愛護のための金額と思って、快く入園してほしいものです。
4月10日付 の伊勢新聞「博学」コーナーでも、大内山動物園を紹介しています。
入口を入ってすぐのところにツキノワグマがいます。今はとても元気な姿を見せていますが、このクマも保護されてこの動物園に運ばれたものです。その境遇が何ともかわいそう。その詳しい内容は・・・10日付の新聞特集をご覧ください。
次回の「博学〜博物館で学ぶ〜」は、六華苑・旧諸戸清六邸(桑名市)を紹介します。WEBは4月16日(土)更新、新聞特集は4月17日(日)掲載予定です。
<施設案内>
大内山動物園
開園時間 | 9:00〜16:30(4〜9月) 9:00〜16:00(10〜3月) |
入園料 | 一般大人1,500円、子供500円 |
回数券 | 大人15,000円、子供5,000円(11枚) 15名以上の団体の場合、動物へのエサやりをサービス |
駐車場 | 平日無料、土日祝日500円 |
度会郡大紀町大内山530-4 〒519-3111
TEL 0598-72-2447
http://www.oouchiyama-zoo.com
紀勢自動車道紀勢大内山ICから車で約5分
JR大内山駅から徒歩約20分
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