<50>松阪市立歴史民俗資料館

 JR名松線でめぐる博物館の旅も、早くも起点駅・松阪駅にたどりつきました。今回は松阪駅から歩いて約15分。国史跡松坂城跡にある松阪市立歴史民俗資料館を紹介しましょう。
 この資料館は、松阪市内の文化・歴史・産業を紹介する施設で、常設展示では松坂城跡や江戸時代の商人館の展示のほか、松阪木綿、伊勢白粉など松阪を代表する産業についての展示があります(右写真)。そのほか、同館では年4回企画展を開催していて、現在は「昭和の絵葉書コレクション」という企画展を開催中(6月5日まで)です。
 その数ある展示の中から、ここでは松坂城跡について面白エピソードを紹介しましょう。

◆焼失前の松坂城が分かる写真があった!
 同館が建つ松坂城跡は、明治10(1877)年の二の丸御殿の火災によって焼失しました。その際、図面などあらゆる紙資料が失われたため、かつての建物がどのようだったか、今となっては分かりません。そのため、復元しようにもできないのです。
 しかし、まだ建物があった頃の松坂城を撮影した写真が、東京国立博物館に所蔵されていました。同館展示室に、その写真が展示されています(右写真)。今となっては当時の松坂城を知る唯一の資料で、貴重なものです。
 東京国立博物館にあるその写真ですが、実はもとはどこを撮影したものか不明でした。とあるお城研究の方がこの写真を見た時、「これは松坂城だ」と指摘したことから、これらの写真が松坂城のものと判明したそうです。
 ありし日の松坂城を知りえたのも、その指摘された方のおかげですね。

◆資料館そのものが国の登録有形文化財
 同館の建物は古風な木造建築で趣のある建物ですが、これは明治45(1912)年、皇太子殿下(後の大正天皇)が松坂城跡を行啓するのを記念して建てられたもので、国の登録有形文化財に指定されています。当初は飯南郡図書館(当時は飯南郡松阪町だった)として使われていました。有志の人たちの寄付によって建設が進められましたが、その中には小津清左衛門家など豪商一族も名を連ねています。建設総額は6,164円。現在の資産価値に直すと約1億円の資金が集まったのです。
 昭和53(1978)年、市制施行45周年を記念してこの建物は歴史資料館として生まれ変わりました。平成9年9月、国から登録有形文化財に指定されました。文化財などを収蔵展示する資料館の建物そのものが文化財、というのは珍しいものです。歴史文化豊かな松阪ならではのことですね。

 3月20日付 の伊勢新聞「博学」コーナーでは、松阪を商都へ発展をもたらした松阪木綿と伊勢白粉について詳しく紹介しています。
 松阪木綿を一躍有名にしたのが、江戸時代の織物では珍しい縦縞(松阪縞)です。縞模様の柄を織るというのは当時高度な技術を要するものでしたが、その高度な技術を可能にした要因の一つが、伊勢神宮の存在とも言われています。が、その詳しい内容は・・・20日付の新聞特集をご覧ください。

 次回の「博学〜博物館で学ぶ〜」は、本居宣長記念館(松阪市)を紹介します。WEBは3月26日(土)更新、新聞特集は3月27日(日)掲載予定です。

<施設案内>
松阪市立歴史民俗資料館
開館時間 9:00〜16:00(10月1日〜3月31日)
9:00〜16:30(4月1日〜9月30日)
休館日月曜日、祝日の翌日、年末年始
観覧料一般大人100円、小中高生50円
※20名以上の場合団体割引あり。松阪商人の館との共通割引入館券あり

松阪市殿町1539 〒515-0073
TEL 0598-23-2381
伊勢自動車道松阪ICから車で約10分
JR・近鉄松阪駅から徒歩約15分





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