<48>津市美杉ふるさと資料館

 JR名松線は3月26日、全線運転を再開します。平成21年の台風18号災害の影響で、家城〜伊勢興津駅間が運休しておりましたが、約7年ぶりに運行されます。
 ということでこのコーナーも、3月の1ヵ月間は名松線沿線にある博物館を紹介しましょう。その第1回目は、終点伊勢興津駅から車で約10分。津市美杉ふるさと資料館の紹介です。
 津市美杉町は、今では山奥の交通の不便なところというイメージですが、いやいや、歴史をさかのぼるととてもとても重要な場所でした。伊勢本街道という大きな街道がここを通っていて、人々でにぎわっていたのです。大坂・奈良方面と伊勢とを最短距離で結ぶ街道だったからです。今も旧街道筋にはかつての宿場の面影が見られます。
 そしてこの交通の要衝の地に、室町時代には伊勢国司の北畠氏が居城を構え、約240年間、政治・軍事の中心地でした。資料館には当時の城館を復元した模型が展示されています(右写真)。
 津市美杉ふるさと資料館の展示とともに、輝かしい美杉の歴史を振り返ってみましょう。

◆明らかになりつつある北畠氏の居館跡
 美杉の歴史は、北畠氏の存在を抜きにして語ることはできません。伊勢国司、そして後に南伊勢の守護大名として約240年間統治した北畠氏が美杉の地に城館を構えたのです。今では信じられないかもしれませんが、この山深い静かな里が、伊勢国の政治の中心地だったのです。
 資料館のやや北に北畠神社がありますが、ここが北畠氏の居館跡です。発掘調査の結果、中世城館としては最古の石垣が発見されました。室町時代当時、石垣はとても珍しいものでした。しかもレーダー探査で、長さ約90mにも及ぶことが判明するなど、北畠氏の勢力の大きさがここから読み取れます。各種土器や青磁などが出土しました(右写真)。今もこの周辺は発掘調査が進められ、北畠氏城館の姿が徐々に明らかになりつつあります。
 ちなみに、北畠神社には庭園がありますが、ここは北畠氏が城館を築いていた当時のまま残されているものです。秋の紅葉が見もので、夜間ライトアップなども行われます。

◆侮れない、伊勢本街道のにぎわい
 北畠氏がこの地を居城に選んだ理由の1つは、伊勢本街道という街道があったからだと言われています。
 この伊勢本街道。歴史は非常に古いです。街道として整備はされていなかったと思われますが、飛鳥時代には奈良県の榛原(現在の宇陀市)から美杉を通って伊勢に向かう道はあったようです。平安時代には都から伊勢をめざす参宮客が数多く通り、10世紀頃の記録では宮川の洪水で約10万人が立ち往生した、と記されています。
 江戸時代には、幕府の宿場制度によって整備され、興津や上多気など、美杉町内にも宿場町がつくられ、大いににぎわいました。

◆歴史の表舞台に何度も登場する美杉
 伊勢本街道、そして北畠氏の居城など、歴史上重要な役目を果たした美杉ですが、それだけで歴史は終わってはいません。
 戦後、復興需要で美杉地域からもヒノキが大量に伐り出されました。林業家や、製材屋など林業関連の産業が集積し、村中が活況を呈していました。一時期、美杉村が県内で最も豊かな村だったこともあるようです。
 そうした時期のことでしょう。昭和27年12月、美杉村の多気地区で大相撲の地方巡業が行われました(右写真)。多気場所といい、当時横綱の東富士が来たそうです。ご記憶のある方はいらっしゃるでしょうか?
 2年前には映画「WOOD JOB〜神去なあなあ日常〜」の舞台にもなったことで一躍有名になりました。バスツアーがいくつか組まれるなど、非常ににぎわっていたのは記憶に新しいところです。
 今はひっそりとした山村ですが、何度も何度も歴史の表舞台に出てくるところです。名松線再開を機に、また何か新たな歴史が刻まれるのかもしれませんね。

 3月6日付の伊勢新聞「博学」コーナーでも、美杉に本拠地を構えた北畠氏の歴史について詳しく紹介しています。戦国時代、北畠氏は織田信長によって滅ぼされ、240年続いた北畠氏の歴史は幕を閉じましたが、江戸時代に、ありし日の北畠氏城館周辺を描いた絵図があり(右写真)、資料館にも展示されているのですが、これがどうもおかしいのです。その内容は・・・どうぞ新聞特集をご覧ください。

 次回の「博学〜博物館で学ぶ〜」は、三重中央農協郷土資料館(津市)を紹介します。WEBは3月12日(土)更新、新聞特集は3月13日(日)掲載予定です。

<施設案内>
津市美杉ふるさと資料館
開館時間9:30〜17:00
休館日月曜日(休日の場合は翌日)、年末年始
観覧料無料

津市美杉町上多気1010 〒515-3312
TEL 059-275-0240
東名阪自動車道久居ICから車で約60分
JR伊勢興津駅から車で約10分
津市コミュニティバス・ふるさと資料館前バス停下車徒歩約1分





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