<47>松浦武四郎記念館

 今回は松浦武四郎記念館の紹介です。
 2月28日(日)に、同館で「武四郎まつり」が開催されます。「北海道の名付け親」として知られる松浦武四郎(右写真)ですが、彼の残した功績はそれだけにとどまりません。蝦夷地(北海道)の探検家として、地誌家として、ルポルタージュ作家として、はたまたアイヌの人たちに寄り添うヒューマニストとして、さまざまな才能を発揮した人物です。この人物は一体何と形容すればいいのでしょうか?ともかく多才な人物だったと言えます。
 「武四郎まつり」は、そんな武四郎の功績をたたえ、同館オープン後から毎年開催されている祭です。遠く北海道からもアイヌの古式舞踊を披露にやってきます。ほかにもアイヌ文化体験コーナーや北海道の物産や飲食物を販売するコーナーもあって、武四郎が歩いた北海道との交流を深める場ともなっています。
 武四郎は生まれも命日も2月。それにちなんでこの時期に開催されるのですが、と同時に松阪に春を呼ぶ祭ともなっています。松阪の春を武四郎とともに感じてみましょう。

◆北海道では超有名人
 武四郎は、蝦夷地を6回探索するなど、北海道の各地をくまなく調査して歩きました。現地のアイヌの人たちとの親交も深かったようで、現在でも北海道では有名人です。
 今も人気があるのは、武四郎がアイヌの人たちに寄り添い、アイヌの人たちのために尽力したからでしょう。初めて蝦夷地に降り立った28歳の時、この地は松前藩の領地でした。米作に適さない北国では、コメの代わりに豊富に獲れる魚を納めさせたのですが、アイヌの人たちに強制労働を強いたりして疲弊している現状を目の当たりにし、その現状を『人物誌』という書籍にしたためるなど、当時の状況に憤慨していました。結局この本が出版されたのは明治後となりましたが、アイヌ人たちが北海道の地で本土の人たちと同様安心して生活できるよう、力になろうとしていたのです。ヒューマニストとしての武四郎の一面が垣間見られます。

◆北方探索家としてのきっかけは、実は生誕地にあり
 松浦武四郎は文化15(1818)年2月6日、現在の松阪市小野江町に生まれました。現在もその旧宅が残っていて、松阪市の史跡に指定されています(右写真)。今は車の通りも少ないひっそりとした一角となっていますが、武四郎が生まれた当時はここが伊勢街道で、人通りの激しいにぎやかな道でした。全国各地から伊勢神宮へ参拝する旅人が大勢通り、幼いころから全国の様々な人が家の前を往来していました。
 江戸時代は、現在に比べて人の移動は少なかったため、自分の国や自分の村以外の人と接することはほとんどなかったのですが、そんな中で全国各地から来る人たちと接する機会があったということが、少年武四郎が外の世界に興味を抱くきっかけとなったようです。16歳で突然家を出て江戸に向かったのですが、見つかって家に連れ戻される、なんてこともありました。17歳から全国を巡る旅に出て、19歳の時には四国八十八ヵ所霊場をすべて制覇しました。
 そんな中、26歳の時。日本で唯一世界に開かれていた長崎を訪ねた時、ロシアが南下政策で蝦夷地をねらおうとしているという情報に触れたことが、その後の人生を決定づけました。北方の危機にあることを悟った武四郎は、すぐさま北方の探査を決意し、蝦夷地に向かいました。
 松阪市小野江町に残る旧宅が、外の世界に目を向けるきっかけになり、また北海道探索のきっかけとなった場所でもあるのですが、今はその面影もなく、訪れる人も少なく、歴史の面影だけを残してひっそりとたたずんでいます。北海道では有名な武四郎ですが、生まれ故郷の三重県に来ると知名度が高くありません。地元民だからこそ、偉大な先人がこの地から生まれたことを知ってもらいたいですね。

◆一体この人物は何者?
 松浦武四郎はさまざまな顔をもつ、多才な人物でした。
 北海道の探索家、探検家として知られているのはもちろんですが、著作物も非常に多く、全国を旅してまわった後には『西海雑誌』という書物を執筆しましたし、北海道探索に関する資料は151冊も著しました。作家として、またアイヌの人たちの窮状をしたためたルポルタージュ作家としても力を発揮しました。どれをとっても優れたものですが、どの断片を切り取っても武四郎という人物の一面でしかなく、この人物は何と称していいのか分かりません。この人物の奥深さ、なかなか表現できませんが、うまく伝えられたでしょうか。

 2月21日付の伊勢新聞「博学」コーナーでも、松浦武四郎の半生を詳しく紹介しています。幕末に蝦夷地を探索した武四郎は、その情報を幕府に送り、その情報が幕府の北方警備対策に非常に影響を与えたのですが、影響を与えたのはそれだけではありません。その内容は・・・どうぞ新聞特集をご覧ください。

 次回の「博学〜博物館で学ぶ〜」は、美杉ふるさと資料館(津市)を紹介します。WEBは3月5日(土)更新、新聞特集は3月6日(日)掲載予定です。

<施設案内>
松浦武四郎記念館
開館時間9:30〜16:30
休館日月曜日(休日の場合は翌日)、祝日の翌日、年末年始
観覧料 一般大人310円、小中高生200円
団体大人200円、小中高生100円
※団体は20名以上

松阪市小野江町383 〒515-2109
TEL 0598-56-6847
FAX 0598-56-7328
http://www.city.matsusaka.mie.jp/
東名阪自動車道久居ICから車で約10分
近鉄伊勢中川駅東口より徒歩約50分(タクシーで約7分)





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