<46>鈴鹿市考古博物館

 今回は鈴鹿市考古博物館を紹介します。
 2月21日(日)に同館では、「春まつり」が開催されます。近くにある菅原神社の「梅まつり」の時期に合わせて開催されるイベントで、勾玉づくり、火起こし体験などさまざまな体験を楽しるほか、市内のリコーダークラブによるコンサートや地元の方々によるハンバーガー販売などが催されます。まだまだ寒い鈴鹿ですが、春を感じに博物館に出かけてみませんか?
 さて、現在三重県の県庁所在地は津市ですが、古代(奈良・平安時代)、伊勢国の中心地は鈴鹿市でした。同市の広瀬町には、今の県庁に相当する伊勢国府が置かれました。また聖武天皇発願の国分寺・国分尼寺が置かれたのも鈴鹿市でした。国府と国分寺という重要な施設が鈴鹿市にあったのです。
 その伊勢国分寺跡のすぐ南の地に同博物館は建設されました。3階展望デッキから、その跡地を一望することができます(右写真)。現在史跡公園として整備が進められていて、西に鈴鹿山脈を望む美しい景色の中に、約1200年前の姿が浮かびつつあります。
 国府と国分寺を中心に、鈴鹿市の歴史を旅してみましょう。

◆明らかになった伊勢国府、伊勢国分寺
 伊勢国府跡、伊勢国分寺跡ともに発掘調査が行われ、当時の姿が徐々に明らかになってきました。
 伊勢国府跡の調査では、国府の中心的な施設である政庁の構造が明らかになりました(右上写真)。東西80m、南北110mの広さで、周囲に築地塀がめぐらされていました。正殿、後殿や東西脇殿を有し、屋根にはすべて瓦が葺かれていました。滋賀県に置かれた近江国府政庁とよく似た配置でした。伊勢国は当時大国に位置付けられていましたが、それにふさわしい建物構造だったようです。
 現在、国府跡は国史跡に指定されていて、案内看板などが設置されていますが、大分部が畑地になっています。遺跡はこの畑の下に埋まっています。しかし、もともと建物があった基壇の部分は高さ1mほどの高まりとして残っていて、当時のおもかげが少し残っています(右写真)。
 一方、伊勢国分寺跡の調査では、約180m四方の東大寺式の伽藍配置が明らかとなりました。南門、中門、金堂、講堂などの遺構が確認され、金堂と中門は回廊で結ばれていました。国分寺には七重塔を建てることが定められましたが、塔の跡は確認されませんでした。基壇部分が削平された可能性もありますが、果たして真相はどうだったのでしょうか?

◆古代伊勢国の中心地・鈴鹿
 奈良、平安時代の昔から、東海道は現在の国道1号とほぼ同じところを通っていました。現在の亀山市から鈴鹿川に沿うように台地上を通り、四日市市、桑名市へと抜けていきました。
 この、交通の大動脈・東海道が通っていたということが、この地が国府や国分寺の場所として選ばれた理由の1つだったことが想像されます。さらに、伊勢国は畿内から東国へ抜ける最初の国で、都を守るために亀山市関町周辺に「鈴鹿関」という軍事拠点が置かれたことからも分かるように、人・モノ・情報が行き交う中で、それらにしっかりと目を光らせないといけない、そんな重要な場所でもあったことでしょう。

◆古代の郡衙跡が博物館前に
 博物館建設に先立ち、建設地周辺の発掘調査が行われた際、大型の掘立柱倉庫11棟の跡が確認されました。しかも「コ」の字形に倉庫が整然と並んでいたのです(右上写真)。
 調査の結果、奈良時代初め頃のこの用地は河曲郡という地名でしたが、その河曲郡衙の正倉院であることが判明しました。郡衙とは郡の役所のことで、ここに建てられた倉庫には、付近の住民から税として集めた稲が納められていたのでしょう。
 博物館の前にも、当時の建物の柱穴を再現した模様が描かれております(右下写真)が、このような建物が博物館周辺にいくつも建っていたのです。
 四日市市の久留倍官衙遺跡が最近注目を受けていますが、鈴鹿の河曲郡衙跡の発見もそれに匹敵する成果でもあります。ぜひ注目してくださいね。

 2月21日付 の伊勢新聞「博学」コーナーでも、国史跡伊勢国分寺と国史跡伊勢国府跡の詳しい内容を紹介いたします。どうぞご覧ください。

 次回の「博学〜博物館で学ぶ〜」は、松浦武四郎記念館(松阪市)を紹介します。WEBは2月27日(土)更新、新聞特集は2月28日(日)掲載予定です。





<施設案内>
鈴鹿市考古博物館
開館時間9:00〜17:00
休館日月曜日、第3火曜日、祝休日の翌日、年末年始
観覧料 一般大人・学生200円、小・中学生100円
団体大人・学生150円、小中学生50円
※団体は20名以上

鈴鹿市国分町224 〒513-0013
TEL 059-374-1994 / FAX 059-374-0986
http://www.edu.city.suzuka.mie.jp/museum/
東名阪自動車道鈴鹿ICから車で約20分
JR河曲駅下車徒歩約20分
近鉄鈴鹿市駅よりタクシーで約10分





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