<44>海の博物館

 今回は鳥羽市にある海の博物館を紹介します。
 三重県は、1000kmを越す全国でも7番目に長い海岸線を有する県です。本州だけで見れば山口県に次いで2番目。その長い海岸線の中には、伊勢湾の内湾、志摩半島のリアス式海岸、そして熊野灘の外海など、さまざまな表情を見せる海があり、そこに140もの漁村が存在します。古来から生活・文化のあらゆる面で海とかかわりが深い県で、海からの恵みが豊かな文化を形成してきたと言っても過言ではありません。
 海の博物館に見る、三重と海の関わりの一端を紹介しましょう。

◆鳥羽(志摩半島)といえば、やっぱり海女でしょ
 2年半前、NHK朝の連続テレビ小説で「あまちゃん」が放送され、海女がブームになりました。しかしドラマの影響か、海女=東北地方と思われているのが実態のようです。
 しかし、日本一海女が多いのは三重県の志摩半島です。
 鳥羽市・志摩市の志摩半島一帯はリアス式海岸が発達し、岩礁が多く、海藻や岩場に棲む伊勢エビ、アワビなどが豊富にあるため、それらを素潜りで獲る海女漁が発達したといわれています。平成22年の統計で志摩半島には27地区で761人の海女がいました。全国2位の石川県能登輪島は197人。志摩半島が圧倒的に多いのが分かります。
 海女漁では、資源管理のため一定の大きさ以下のものは獲らないというルールがあります。右下写真はアワビと「スンボウ」というものさしです。スンボウに溝が切られていて、ここにはまる大きさ以下のアワビは海に再び戻していました。このように獲りすぎない工夫をして資源を守っていたのですね。だからこそ海女漁が1万年近くも続いてきたのです。




◆鳥羽湊は日本有数の港だった
 館内には、鳥羽港の歴史について紹介するコーナーもあります。その中に、興味深い番付表が展示されています(右写真)。これは「国々みなとくらべ」といって、江戸後期の文化・文政年間(1804〜1830年)に作られた全国の港のランキング表です。よく見ると、「志州鳥羽」が見事、西の関脇に位置付けられています。長崎や堺、下関、博多といった名だたる港町と肩を並べる存在だったことが分かります。
 でも、なぜ鳥羽が全国でも有数の港だったのでしょうか?
 それは、全国から物資が集まる大坂から、一大消費地・江戸へと物資を運ぶ際、海路を通ることになるのですが、鳥羽を出ると静岡県の伊豆半島まで、立ち寄る港がなかったからです。当時の回船は帆で動かしていたため、風まかせでした。伊豆半島まで一気に駆け抜けるためには、日和を見ていい風をとらえなけれなばらず、鳥羽湊やあるいはその南の的矢湾は、風待ちの港として多くの舟が入りました。日和待ちのため長く滞在することを余儀なくされるなどしたため、辺りに多くの宿ができ、大変なにぎわいになったそうです。

◆海将・九鬼嘉隆と日本丸も展示
 戦国時代、日本一の海将として知られた九鬼嘉隆に関する展示もあります。嘉隆は、鳥羽城を根拠地に日本一の海軍を組織し、織田信長、豊臣秀吉に仕え、海から天下統一に貢献しました。朝鮮出兵(文禄の役)の時には、長さ33mの当時最新最大の船を作り、「日本丸」と称して日本水軍を統率する役目を担いました。その模型も展示されています。櫓の数100挺を越す、超巨大な船でした。

 海の博物館には、船や漁具など非常に多くの海に関する資料が展示されています。三重県の海は、それぞれの土地でそれぞれの特徴があり、獲れる魚介も豊富で、その魚介の数だけ漁法も漁具も発達させてきました。そのあたりの詳しい内容は、2月7日付の伊勢新聞「博学」で紹介します。

 次回の「博学〜博物館で学ぶ〜」は、相差海女文化資料館(鳥羽市)を紹介します。WEBは2月13日(土)更新、新聞特集は2月14日(日)掲載予定です。

<施設案内>
開館時間9:00〜16:30(12月1日〜3月20日)
9:00〜17:00(3月21日〜11月30日)
休館日6月26〜30日、12月26〜30日
観覧料一般大人800円、小中高生400円
団体(20〜99名)大人720円、小中高生320円
団体(100名以上)大人640円、小中高生280円

鳥羽市浦村町大吉1731-68 〒517-0025
TEL 0599-32-6006 / FAX 0599-32-5581
http://www.umihaku.com/
伊勢自動車道伊勢ICからパールロード経由、車で約40分
JR・近鉄鳥羽駅よりカモメバスで約35分
平日は「海の博物館東」バス停下車、徒歩約10分
祝祭日は「海の博物館前」バス停下車、徒歩すぐ





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