<42>松阪商人の館

 前回に引き続き、松坂商人にまつわる博物館を紹介します。今回紹介するのは、松阪商人の館です。
 ここは、江戸時代に紙や木綿の商いで大富豪となった小津清左衛門家の住宅をそのまま一般公開したものです。現存する敷地面積は330坪(1,120u)もありますが、明治時代の見取り図から推測すると、もとはその2倍近い面積を持っていたと考えられています。
 前回紹介した長谷川家といい、今回紹介する小津清左衛門家といい、松坂商人の豊かさ、すさまじさは半端ないものです。
 1月23日、同館近くの松阪市本町に、小公園「豪商ポケットパーク」がオープンします。この機会に豪商のふるさと・松阪を訪れて、かつては江戸で一世を風靡した松坂商人たちの素晴らしさを肌で感じてみてはいかがでしょう。

◆紙商小津屋の誕生
 小津家の祖先をたどっていくと、伊勢国司北畠一族の木造氏に仕えた三好隼人佐長年に始まるとされます。3代目長弘は、もとは森島家を名乗っていましたが、父の代から武家を捨てて松坂城下に住んでいました。
 長弘は18歳の時、江戸大伝馬町の一等地に大きな拝領地を持つ佐久間善八の店に奉公しました。ここは江戸でも有力な紙問屋で、ここでの経験が後の紙商・小津屋が生まれる素地となったのです。
 奉公生活9年を経た時、隣家の紙商が店を譲る申し出があった時、長弘がその後継者として抜擢されたのです。ただ、ただの奉公勤めでは開店資金などあるわけがなく、地元松坂出身の小津三郎右衛門道休から200両の大金を借りるなどの支援を受け、承応2(1653)年江戸大伝馬一丁目に店を構えました。地元松坂で「小津屋と名乗ると繁盛する。めでたい名だ」と言われていたことから「小津屋」の屋号をつけ、以後小津清左衛門家を名乗りました。

◆常に長者番付上位  同館にはいろいろな文書類が展示されていますが、中でも相撲番付表のような文書がおもしろい(右上写真)。これは江戸時代後期の天保年間に出された「大日本持丸長者鑑」という当時の長者番付です。江戸中の富豪という富豪をランク付けしたものです。
 この中の、真ん中やや左側に「伊勢 小津清左エ門」と書かれているのが分かるでしょう。西の関脇(2番目)の位置にあたります。江戸の中でもかなり上位にランクされていたのですね。また、明治に入ってから作られた「東京 紙商店一覧鑑」という文書も展示されています(右下写真)。この中では一番真ん中、行司のセンターに名が刻まれています。江戸(東京)の紙商の中では筆頭格だったのです。
 この種の長者番付は、江戸時代に何度も出されましたが、小津清左衛門家は常に上位にランクイン。日本の中でも指折りの大富豪だったのです。
 ちなみに「大日本持丸長者鑑」の中では、三井家は別格の扱い。ほかにも田畑屋、大和屋、長谷川家など、伊勢商人がいくつも名を連ねています。一時期江戸日本橋のほとんどを占めた伊勢商人たちの活躍ぶりが一目で分かります。

◆豪商のまち松阪を歩く
 松阪商人の館(小津清左衛門旧宅)と同じ並びには、これまた松坂出身の豪商・三井家の発祥地があります(右上写真)。江戸で呉服業界に大革命を起こした三井高利の生まれ故郷でもあり、江戸の豪商の筆頭格ともなった「越後屋」三井家の代々の邸宅があった場所です。
 その斜め向かいに、冒頭で紹介した「豪商ポケットパーク」が完成します(右中写真)。写真はまだ工事中の頃の写真ですが、豪商のまち・松阪のシンボル的な施設となります。
 1本西の通りは魚町で、前回紹介した旧長谷川邸の広大な邸宅があります。その真向かいに、松の木が象徴的な小公園があります。ここが本居宣長の生誕地跡です(右下写真)。
 魚町・本町の松阪市中心部は、教科書にも出てくる有名な歴史的人物が居を構えていた一帯です。ゆっくりと歴史散歩してみてはいかがでしょう。

 1月24日付の伊勢新聞「博学」コーナーでは、松阪商人の館の展示から見た松坂商人の豊かさについて紹介します。土蔵から地下金庫が見つかり、それが展示されているのですが・・・。
 次回の「博学〜博物館で学ぶ〜」は、朝日町歴史博物館を紹介します。WEBは1月30 日(土)更新、新聞特集は1月31日(日)掲載予定です。






<施設案内>
松阪商人の館(旧小津清左衛門住宅)
開館時間9:00〜16:30
休館日月、祝日の翌日、年末年始
観覧料一般大人200円、小・中・高生100円
団体割引(20名以上)、松阪市歴史民俗資料館との共通入館券もあり

松阪市本町2195 〒515-0081
TEL 0598-21-4331
伊勢自動車道松阪ICから車で約10分
JR・近鉄松阪駅から徒歩約15分
松阪駅より三重交通バス・本町バス停下車徒歩約2分
市街地循環バス(鈴の音バス)左回り乗車・プラザ鈴バス停下車徒歩約3分





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