<37>ミキモト真珠島 真珠博物館

 今回紹介するのは、ミキモト真珠島 真珠博物館です。
 鳥羽湾内に浮かぶこの島は、もとは相島(おじま)と呼ばれた島でしたが、御木本幸吉翁が世界で初めて真珠養殖に成功した地ということで有名になりました。鳥羽市の中でも、鳥羽水族館と並ぶ一大観光地となっています。
 島には真珠博物館と、御木本幸吉記念館や海女の実演など多くの施設があり、遊歩道でつながっていてゆっくり観て回ることができます。
 このページでは、今注目を集める海女による実演コーナーと、御木本幸吉記念館に見る御木本幸吉の波乱の人生について紹介します。

◆昔ながらの白い磯着の海女はここだけ ―海女の実演―
 真珠博物館の正面に「海女スタンド」があります。1時間に1回、海女による潜水作業の実演が行われます(右写真)。現在では、鳥羽・志摩周辺の現役海女はウェットスーツを着て作業をしますが、昔ながらの白い磯着で海に潜るのはここミキモト真珠島だけです。
 かつては真珠養殖で海女の存在は必要不可欠でした。海底にもぐってアコヤガイを採取したり、核入れしたアコヤガイを海底に移したり、赤潮の時にはいち早く安全な場所に移すなど、重要な役目を海女が担っていました。
 現在では養殖技術が発達して海女の必要性はなくなりましたが、真珠養殖を支えた海女の活躍を記念して、同島では海女の実演を行っているのです。
 毎時20分頃から、3人の海女が海に飛び込んで、かつての潜水作業を観客に見せています。水面下6mの岩場まで潜って貝を拾う姿や、海女独特の呼吸法「いそぶえ」も間近で観ることができます。

◆うどん屋の店長から世界の真珠王へ ―御木本幸吉記念館―
 世界の真珠王として名をはせた御木本幸吉ですが、うどん屋の息子であったことは実はあまり知られていません。鳥羽市中心地にかつてあったうどん屋「阿波幸」(右写真)の長男として安政5年1月に生まれました。明治11年、20歳の若さで家督を継ぐと、父の許しを得て東京へ出ました。横浜で当時「ケシ」と呼ばれていた小粒の天然真珠が高値で売買されているのを見たのですが、これが後の幸吉の生き方を決定づけました。
 ケシ真珠は当時志摩地方の特産品でしたが、乱獲で資源が激減している時期でした。真珠が志摩地方の重要な産物になると見た幸吉は、アコヤガイの増殖に乗り出しました。
 ところがアコヤガイの増殖に成功はしても思ったように真珠は採れません。そこで人工的にアコヤガイの中で真珠を育てる真珠養殖を始めました。この事業に莫大な資金を投入したものの、赤潮で貝が全滅したりするなど思ったように真珠ができません。ほぼ全財産を使い果たし、生活は困窮を極めました。
 明治26年7月11日。最後の望みを託して相島にまいたアコヤガイの貝を開くと・・・妻・うめの「あっ」といううめき声。手のひらには1粒の半円真珠がありました。結果、5粒の真珠がここで生まれました。世界で初めて真珠養殖に成功した瞬間でした。
 真珠養殖の成功を見届けた妻・うめは、その3年後に32歳の生涯を閉じました。
 その後幸吉は英虞湾内の田徳島に移り、ここを拠点に真珠養殖を進めました。明治38年に真円真珠の養殖に成功。明治39年には東京・銀座の表通りに店舗進出。
 うどん屋から身を起こした御木本幸吉は、苦難の末に世界の真珠王へ。そんな波乱の人生を御木本幸吉記念館では伝えています。

◆御木本幸吉と伊勢新聞
 御木本幸吉記念館の展示を見ていると、古い伊勢新聞がいくつかパネル展示されているのが分かります。
 まずは明治11年6月6日の新聞(右写真)。幸吉が東京から鳥羽への帰り道に、道連れになった静岡の茶商が突然倒れたので、幸吉が持っていた薬「寶丹」を飲ませたところ意識を回復させた、という人命救助の内容です。この一件で新聞の威力を知った幸吉は、その後話題づくりをうまく商売に生かしていきました。
 明治11年12月4日付の新聞には、幸吉の父・音吉が、うどんの粉ひき機を考案した、という内容が掲載されています。
 伊勢新聞の創刊は明治11年1月17日。伊勢新聞も御木本幸吉翁とともに歩みを始めていたようですね。

 12月13日付の伊勢新聞「博学〜博物館で学ぶ〜」でもミキモト真珠島 真珠博物館を紹介します。どうやって真珠ができるのでしょうか?そのメカニズムに迫ります。
 次回の「博学〜博物館で学ぶ〜」は、伊賀流忍者博物館(伊賀市)を紹介します。WEBは12月19日(土)更新、新聞特集は12月20日(日)掲載予定です。

<施設案内>
ミキモト真珠島 真珠博物館
開館時間 1〜3月・11月8:30〜17:00
4〜10月8:30〜17:30
12月9:00〜16:30
休館日12月第2火曜から3日間
観覧料 一般大人1,500円、小・中学生750円
団体大人1,200円、小・中学生600円
学生団体 高校生700円、中学生500円、小学生400円

ミキモト真珠島 真珠博物館
鳥羽市鳥羽1-7-1 〒517-8511
TEL 0599-25-2028 FAX 0599-25-2655
https://www.mikimoto-pearl-museum.co.jp
伊勢自動車道伊勢ICから車で約20分
JR・近鉄鳥羽駅下車徒歩約5分
伊勢湾フェリー鳥羽港から徒歩約5分





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