<35>愛洲の館

 真剣白刃取りの「柳生新陰流」という剣法は有名ですね(実は真剣白刃取りではなく無刀取りというのが正しい)。その柳生新陰流を含めた約200の剣術流派の元祖ともいうべき「影流」という剣術を編み出した人物が、三重県南伊勢町から出たのです。その人物とは、愛洲移香斎久忠(あいすいこうさいひさただ)です(右写真)。
 室町時代中頃、南伊勢町にある五ヶ所城を拠点にしていた豪族・愛洲一族に生まれた移香斎は、幼少から剣術の才能があったと伝えられています。全国へ剣術修行に出た途中、宮崎県日向市の鵜戸神宮にある岩屋の中で剣術修行に励んでいる間に悟りを開き、影流剣術を編み出したとされています。移香斎は当時剣の達人として知られ、全国を歩いて剣術指南をし、全国各地で弟子を育て、彼らがまた新たな流派をつくるなどして、移香斎の教えがひろがっていったのです。
 今回の「博学〜博物館で学ぶ〜」は、移香斎を記念して造られた、愛洲の館を紹介しましょう。何と、館内には剣道場もあるのです(右写真)。毎年12月にはここで「愛洲移香斎杯少年剣道大会」も行われます。
 11月29日付の伊勢新聞「博学」コーナーは、愛洲移香斎という人物の一生をたどってみます。このページ「博学WEB」では、同館周辺の愛洲移香斎にまつわる名所を紹介します。




◆土塁、空堀などが残る五ヶ所城跡
 愛洲の館の裏山には、移香斎が生まれた五ヶ所城の跡があります。愛洲一族が約200年間拠点を構えた城で、今は跡地となっています。主郭周辺には空堀や土塁などがきれいに残っていて、中世城郭の面影がいたるところで感じられます。
 城館跡があったとされる場所には「五箇所城跡」の碑(右写真)と、剣祖・愛洲移香斎を讃える記念碑が建っています。毎年8月にはこの場所で、移香斎を顕彰する「剣祖祭」が行われ、全国から選りすぐりの剣の達人たちが集まり、演舞が披露されます。

◆これは大変!「鍛錬の段」
 愛洲の館から、裏山にある五ヶ所城跡へ通ずる1本の階段。その名は「鍛錬の段」といいます(右写真)。その名が示しているように、鍛錬をするには最適なところです。何せ段差が急で、少しでも気を緩めると足を踏み外しそうです。しかも一気に駆け上るとすぐに息が切れますので、あまり無理せず上るのをおすすめします。
 辺り一帯は竹林となっていて、林の中に入ると閑けさが訪れます。鳥の鳴き声、虫の声、風で竹が揺れる「さやさや」という音。自然の中にいるのを感じられて、疲れも吹き飛びそうです。
 移香斎も、このようにして足腰を鍛え、剣術修行に励んでいたのでしょうか?

 次回は、川越電力館テラ46(川越町)を紹介します。WEBは12月5日(土)更新、新聞特集は12月6日(日)掲載予定です。

<施設案内>
愛洲の館
開館時間9:00〜16:00
休館日12月29日〜1月3日
観覧料 一般大人250円、小・中・高生150円
団体大人200円、小・中・高生120円
(団体は20名以上)

度会郡南伊勢町五ヶ所浦2366 〒516-0101
TEL 0599-66-2440 FAX 0599-66-2441
伊勢自動車道玉城ICから車で約45分
JR一身田駅から徒歩約15分
三重交通バス五ヶ所バスセンター下車徒歩約10分





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