<33>一身田寺内町の館

 今回の「博学〜博物館で学ぶ〜」は津市にある一身田寺内町の館を紹介しましょう。同館周辺では11月15日(日)に「一身田寺内町まつり」が開催されます。
 一身田寺内町は、室町、安土・桃山、江戸時代を通じて高田本山専修寺の門前町として栄えたところで、今も古い町並みが残り、当時のおもかげを残しています。
 15日付伊勢新聞「博学」コーナーでは、一身田寺内町の歴史について軽く紹介します。この「博学WEB」では、高田本山専修寺を中心に、一身田寺内町周辺に今も残る昔のおもかげを紹介します。ぐるっとゆっくりめぐって約1時間。趣深い寺内町散策に出かけてみませんか?

◆高田本山専修寺あってこそ
 「一身田」という地名は非常に珍しい地名ですが、その由来は、奈良・平安時代に功績のあった貴族に一代限りで領地(田)を与える制度があったのですが、その1代限りの田という意味だったと考えられています。その後平安時代は斎王に与えられた領地となり、鎌倉時代には伊勢神宮の荘園「一身田御厨」となっていました。
 この地が栄えるようになったのは、15世紀末、高田本山専修寺が建立してからのことです。もともと真宗高田派本山専修寺は栃木県真岡市にありました(現在は本寺専修寺)が、高田派10世真慧上人が東海方面に布教するため、神宮荘園であった一身田に無量寿院という御堂を築きました。これが後の高田本山専修寺です。この地は伊勢街道と伊勢別街道の交わる地点だったこともあり、人々も集まり、周囲に寺や商店が並ぶようになり、にぎわいを見せるようになりました。
 高田本山専修寺は、万治元(1658)年、藤堂藩2代藩主高次の四女が門主に輿入れするに際し、藩が西側の土地を寄進しました。その後、御影堂や如来堂などが建立され、現在の形になりました(右写真)。
 三重県内には現在国宝は4点しかありませんが、そのうち2点が専修寺にあります。さらに国指定重要文化財が18点あるなど、数多くの文化財を有する県内きっての名所です。

◆環濠がめぐる
 右写真は、津市観光協会が作成した一身田寺内町のマップです。これを見ても分かるように、一身田寺内町は環濠がぐるっとめぐっていて、現在もほぼ完全な形で残っています。
 かつては環濠には3カ所の橋が設けられていて、その内側に門がありました。朝6時に門が開き、夕方6時には門が閉じるようになっていて、警備体制もしっかりと整っていました。






 そして伊勢街道と伊勢別街道が寺内町の中を通り、ここで交わっていました。寺内町北東にある赤門は伊勢街道の名古屋、江戸方面の出入口(右写真)で、ここから南に道をとると黒門に出て、伊勢方面に向かいます。寺内町の西側には桜門があり、ここが伊勢別街道の京都方面の出入り口となります。




◆古い町並みを行く
 ほかにも室町時代の能面などの文化財を有する一御田神社や、門前に寺が並ぶ寺町など、古い時代のおもかげが環濠の中に残っていて、散策しているだけでも楽しいです。古い町並みも残っていて(右写真)ところどころに道標やあるいは案内板があって、歴史探訪を楽しめます。
 ちなみに一身田寺内町の館も、もとはお寺があったところです。同館の前に松の木がありますが、これも当時のおもかげでしょう。こんな感じで、歩いているとふとした発見がありそうです。そんな魅力があるのが一身田寺内町といえますね。

 次回は、三重県人権センター(津市)を紹介します。WEBは11月21日(土)更新、新聞特集は11月22日(日)掲載予定です。

<施設案内>
一身田寺内町の館
開館時間9:30〜16:00
休館日月曜日(祝日の場合は翌日)12月29日〜1月3日
観覧料無料

津市一身田町758 〒514-0114
TEL 059-233-6666
http://jinai-yakata.com/
伊勢自動車道津IC、芸濃ICから車で約15分
JR一身田駅から徒歩約5分
近鉄高田本山駅から徒歩約20分






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