<27>式年遷宮記念 せんぐう館

 今回は伊勢神宮・外宮前にある式年遷宮記念 せんぐう館の紹介をします。
 10月16日は伊勢神宮で最も重要な祭り・神嘗祭が行われます。それに合わせる形で、伊勢市内では伊勢まつり(10・11日)、神嘗奉祝祭(14・15日)、初穂曳(15・16日)が行われ、市内一帯は奉祝ムードに包まれます。
 ということで、今週と来週の2回にわたって伊勢神宮関係の博物館、せんぐう館と神宮美術館を紹介しましょう。
 まず今回はせんぐう館から。このページ「博学WEB」と10月4日付伊勢新聞「博学〜博物館で学ぶ〜」コーナーとで、せんぐう館から学ぶ伊勢神宮のすばらしさを紹介してみたいと思います。

◆歴史上の人物が深くかかわった式年遷宮
 展示室の中に、式年遷宮の歴史を紹介しているコーナーがあります。年表形式のパネルがあって、式年遷宮1300年の歴史を一気に学ぶことができます。
 式年遷宮を制度として定めたのは天武天皇です。それに基づいて第1回の式年遷宮が持統天皇4年(西暦690年)に執り行われました。
 当初式年遷宮は、内宮で先に行い、その2年後に外宮で行うのが通例でした。しかも神宮で最も重要な祭り・神嘗祭に合わせて建て替えが行われていたのです。
 その後600年近く、ほぼ20年のサイクルで式年遷宮が行われてきましたが、1300年代前半、後醍醐天皇による建武の新政あたりからそのサイクルが崩れてきます。
 6月に「博学」コーナーで斎宮歴史博物館を紹介した時にも、後醍醐天皇以降本格的な武家社会が到来したことなどもあって斎王制度が終焉を迎えた、と紹介しました。このあたりで、長い間続いてきた天皇家と神宮のバランスが崩れたのでしょうか。しかも応仁の乱という戦乱もあり、100年以上も遷宮が行われなかったこともありました。
 その後、遷宮の復活に尽力したのが織田信長でした。天正13(1585)年に第41回の式年遷宮を行い、この時から内宮・外宮の遷宮を同じ年に行うこととなりました。以来、現在に至るまでそのスタイルで引き継がれています。
 こうして見ると、教科書に出てくる歴史上の人物が式年遷宮の節目節目に登場することが分かりますね。

◆自給自足、自然の摂理に適った神宮祭祀
 伊勢神宮では、神様へ供えるお食事などすべて自給自足をしていることをご存知でしたか?伊勢市楠部町に神宮所有の神田(神宮神田)があるのは有名ですが、この神田で日本人が食で最も大切にしてきた米を、五十鈴川の水を使って清浄に育てています。ここで採れたお米が1年間のお祭りなどに使われます。
 塩は同市二見町にある御塩浜の塩水でつくり、季節に応じた野菜や果物は二見町にある神宮御園で栽培しています。ほかにも干鯛、鰒、麻布など、御料地内ですべてまかなっているのです。
 その他、材木も神宮林内で生産しています。ヒノキを200年計画で育てていて、いずれは御遷宮用材として使う予定です。
 この、木を植えるということは川の浄化にもつながり、きれいな水となって上流から平野部や海まで流れます。清浄な水がいい米づくり、いい野菜づくり、いい漁場づくりにつながります。すべて自然の摂理に適ったこと。
 神宮の中で行われていることは、農耕を通して自然と向き合ってきた古来からの日本人の姿そのものなのです。

 次回は、式年遷宮記念 神宮美術館を紹介します。WEBは10月10日(土)更新、新聞特集は10月11日(日)掲載予定です。

<施設案内>
式年遷宮記念 せんぐう館
開館時間9:00〜16:30
休館日第4火曜日(祝日の場合翌日)
観覧料一般300円、小中学生100円、団体(20名以上)200円

伊勢市豊川町前野126-1 〒516-0042
TEL0596-22-6263 FAX0596-22-6264
http://www.sengukan.jp
伊勢自動車道伊勢西ICより車で約10分
JR・近鉄伊勢市駅下車徒歩約5分





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