<25>大山玉宝美術館(志摩市)

 志摩半島の先端に、中国清朝の皇帝が愛用した超豪華な宝物が並んでいます。
 志摩市志摩町にある大山玉宝美術館。ここは中国より譲り受けた中国国宝級のお宝がずらり。しかも展示室入口には名古屋のシンボルにもなっている2体の巨大なしゃちほこもあります。「金のしゃちほこ」ならぬ「真珠のしゃちほこ」です(右写真)。約12万粒の真珠をちりばめたきらびやかなもので、度肝を抜かれます。
 でも、なぜ、志摩半島にこんなすごい宝物があるのでしょうか・・・それは9月20日付の伊勢新聞「博学」コーナーで解き明かします。
 この美術館を運営するのは、名古屋と大阪に本社を置く、真珠・宝飾販売会社の大山グループです。現会長の大山孝勇(たかお)氏が旧志摩町の出身で、大きな目玉のない志摩の地に多くの人が集まる場所を作って町のために尽くしたい、との思いで設立した美術館です。
 そして英虞湾を望む、美術館周辺一帯を「大山広苑」として整備し、同館のほかに志摩鈴ミュージアムなどの展示施設があります。約1000本の梅や桜、牡丹なども植えられていて、地域の方々の憩いの広場として活用されています。
 このページ「博学WEB」では、大山広苑内にある志摩鈴ミュージアムや広苑内の見どころを紹介しましょう。

◆1万5000点の土鈴
 これもまたなぜ、こんなところに?と思うような美術館です。大山玉宝美術館から坂を下りた海辺に志摩鈴ミュージアムがあります。
 ここには全国各地から集められた土鈴が約1万5000点も飾られています。見た目は普通の陶製の置き物のように見えますが、よく見ると実は鈴です(右写真)。本居宣長愛用の土鈴や、伊勢神宮の干支鈴など三重県ならではのものも展示されています。
 これらは神戸市の医師・山田旺氏が、日本の民芸文化の1つともいえる土鈴に魅せられ、全国各地にある珍しい土鈴を収集したものです。山田氏が高齢になったこともあり、大山会長が買い取ってこの地にミュージアムをつくり、管理しているのです。
 これだけ並ぶと、土鈴といってもいろんな形があるものです。そのいろんな形を楽しんでみてください。

◆志摩のために
 大山玉宝美術館のある大山広苑は、英虞湾を望む高台にあって非常に眺めがいいところです(写真上)。その頂上付近に「和楽園」という、石の彫像や巨大灯籠など「石」がメインのちょっと奇妙な庭園があります(写真下)。そこに1枚の案内板があり、大山会長自らが記した文章があり、ふるさと・志摩に対する思いがつづられています。

―志摩に住む人は、さまざまな海の幸に恵まれている。
 千数百年の歴史を伝える前島半島に伝承文化はあっても、形態文化に乏しいのはなぜだろうか。
 ・・・(中略)・・・
 志摩びとは、海を頼りの生業と歴史を重ねたが、どの事業も時代の変化とともに、潮風に乗って去って行った感慨が深い―

 志摩には何もない、何も残っていないという印象を持っていたようで、その点を非常に残念がっているようです。志摩に何か残りえるものを、形あるものを残そう、という発想から、このような形の庭園を思いついたようです。後世に残りえるのは「石の文化」以外にない、という考えです。
 梅と石が中心の庭園を歩いていると、大山会長の「志摩のために」の思いがひしひしと伝わってくるようです。

 次回は、伊勢志摩国立公園 横山ビジターセンターを紹介します。WEBは9月26日(土)更新、新聞特集は9月27日(日)掲載予定です。



<施設案内>
大山玉宝美術館
開館時間9:00〜17:00
休館日火曜日(祝日の場合翌日)
観覧料 一般1,200円
※大山広苑敷地内にある志摩鈴ミュージアムは600円
  大山真珠会館は300円、ギャラリー優悠は300円

志摩市志摩町越賀1125大山広苑内 〒517-0704
TEL0599-84-1011 FAX0599-84-1012
http://www.ohyama-pearl.jp/museum/
伊勢自動車道伊勢西ICより車で約1時間30分





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