<18>パラミタミュージアム(菰野町)

 第18回目の「博学〜博物館で学ぶ〜」は、菰野町にあるパラミタミュージアムの紹介です。岡田卓也氏の姉で、岡田屋、ジャスコ、そしてイオングループ発展の礎を築いた小嶋千鶴子氏が、同時代を生きた素晴らしい作家の作品を収集し紹介しようと平成15年に開館した美術館です。
 このページ「博学WEB」では、館名の由来ともなった故・池田満寿夫氏の「般若心経シリーズ」ほか、「すごい」と思わずうなってしまう美術品を紹介しましょう。
 2日(日)付け伊勢新聞「博学」コーナーでは、現在開催中の「第10回パラミタ陶芸大賞展」を中心に展示内容を詳しく紹介します。

◆展示のメーンは「般若心経シリーズ」
 メーンの展示となっているのは、故・池田満寿夫氏の「般若心経シリーズ」(写真)です。これは平成7年、京都大丸で「池田満寿夫 般若心経の世界展」として発表されたもので、池田氏晩年の最高傑作と言われるものです。「パラミタ」という館名も、般若心経にある「波羅蜜多(はらみった)」のサンスクリット語読みから名づけられたものです。
 池田氏によると、「陶作品は土を固め、炎で焼き、破壊されて土に戻る。その中に輪廻転生を見出し、陶こそが般若心経を表現するのにふさわしいと感じた」という。現代の仏教美術としてそれを表現したのがこのシリーズです。

◆これぞ匠の技!江里佐代子氏の「截金(きりかね)」の技法
 常設展では現代を代表する作家の優品が数多く展示されていますが、その中で筆者がひときわ目を奪われたのは、江里佐代子氏の「截金」の技法です(写真)。
 写真を見ていただいて分かるでしょうか。これは細く刻んだ金箔で装飾を施すというもので、もとは仏像を金箔で装飾する技法だったのを、茶道具や室内装飾など現代の工芸品に採りいれました。その金箔の細さは驚きです。刻まれた金箔は細さ0.1mmほど。金色の細い線にしか見えません。
 この細い「金の線」を作るには、金箔を7枚重ねて竹製のナイフで1本1本細く切り分けて作るという細かな作業が必要です。言葉で説明すると単純そうですが、そう簡単なものではありません。熟練の技が必要です。これぞ匠の技。一見の価値ありです。
 ほかにも日本最初の女流陶芸家・辻輝子氏の陶芸作品や小嶋三郎一氏の絵画など、優れた作品が数多く並んでいます。ぜひミュージアムを訪れて、観てみてください。

◆鎌倉時代の貴重な仏像も
 平成21年、鎌倉時代の十一面観音像(写真)が新たにパラミタミュージアムで公開されました。四日市市内の旧家にあったものですが、調査の結果、快慶の弟子・長快の作という、極めて重要な仏像であることが判明したのです。
 承久元(1219)年、快慶が長谷寺本尊像を復興させた際、その余材を使って長快が1/8に忠実に縮小し、再現したものがこの像です。
 この像は長らく興福寺にありましたが、明治9(1876)年に記された記録を最後に行方不明となっていました。四日市市内のある旧家に興福寺の請来仏として伝えられ、以後厚く信仰され受け継がれてきました。そして調査の結果、興福寺にあった長快作の仏像と判明。百年以上の時を経て、再び日の目を見たわけです。
 信仰の対象となっていて大切に受け継がれたためか、鎌倉時代の作でありながらとても保存状態がよく、きれいな形で残っています。

 鎌倉時代から現代まで、工芸品、美術品として最高級のものが観られる。これがパラミタミュージアムの大きな魅力でしょう。ゆっくりとじっくりと観ていただきたい。

 次回は、津市香良洲歴史資料館を紹介します。WEBは8月8日(土)更新、新聞特集は8月9日(日)掲載予定です。

<施設案内>
パラミタミュージアム
開館時間9:30〜17:30
休館日12月28日〜1月1日、展示替え期間
観覧料 個人大人1,000円(4枚セット3,000円)
大学生800円 高校生500円 中学生以下無料

三重郡菰野町大羽根園松ヶ枝町21-6 〒510-1245

TEL 059-391-1088 FAX059-391-1077
http://www.paramitamuseum.com
近鉄大羽根園駅より徒歩約5分
東名阪自動車道 四日市ICから車で約15分





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