<4>四日市公害と環境未来館

 第4回目の「博学」は四日市公害と環境未来館を紹介します。3月21日に四日市市立博物館に併設して新たに設置されたものです。昭和30年代に発生した四日市公害の歴史と教訓を未来に伝え、二度と同じ過ちを繰り返さないよう情報発信をするための施設として設立されました。
 前回紹介したように市立博物館は解説も資料展示もありませんが、四日市公害と環境未来館に入ると資料も解説も急に多くなります。それだけ内容も展示物も豊富ですので、2〜3時間くらいかけてゆっくりとご覧になるのをおすすめします。
 ここでは四日市公害などについて簡単に紹介します。4月26日付けの伊勢新聞朝刊では、四日市公害の名を知らしめた公害裁判について詳しく紹介をしていますので、そちらもぜひご覧ください。

◆四日市公害(四日市ぜんそく)って
 特に若い人たちには「四日市公害(四日市ぜんそく)」といってもピンと来ない人もいるかもしれません。今から約50年前、戦後の高度経済成長に伴って四日市市に石油化学コンビナートが形成された頃のことです。工場から大量にガスが排出され、その中に含まれる二酸化硫黄(亜硫酸ガス)が大気汚染を引き起こし、周辺住民にぜんそくにかかる人が発生しました。これが四日市公害です。
 ぜんそくとは、普通の風邪以上に激しい咳が出るのが特徴で、ひどい時には激しい発作を伴うこともあります。気管支にできた炎症によって気道が狭く硬くなることで引き起こされるものです。右写真のように、正常な気管支(写真左)は気道が広いですが、炎症が起きると幅が狭くなり、長期化すると症状もひどくなって、写真右側のようにほとんどふさがれてしまって呼吸困難に陥ったりもします。ちょっとした刺激でも発作が起きやすくなります。
 今では大気汚染対策がなされていて新たな患者は発生していません。それでも現在(平成27年3月31日)でも394名の認定患者の方がいます。四日市公害は完全に終わってはいないのです。

◆全国で有名となった公害裁判をリアルに伝える
 昭和30年代は全国的に公害の被害が拡大した時期でした。そんな中で、四日市公害が「四大公害」と言われるほど有名になったのには訳があります。大気汚染で、日本で初めての公害裁判が行われたからです。裁判の行方は全国的に注目を受け、報道関係者も殺到しました。
 裁判の内容は、その一部始終を映像と体験談でまとめた「公害裁判シアター」(26日付伊勢新聞で詳述)や、コンピュータで体験談などを検索できる「情報検索コーナー」(右写真)で分かりやすくまとめられています。当時の状況などをリアルに伝えていていますし、生の声ゆえに心に重く響いてきます。

◆全国の公害も学ぼう
 博物館1階の一角に、ちょっと見つけにくいところですが、全国の公害に関するポスターとパンフレットを設置しているところがあります。四大公害に数えられた水俣病(熊本県)やイタイイタイ病(富山県)、新潟水俣病(新潟県)に関する資料が並んでいます。ぜひ立ち寄って手にしてみてください。
 公害という悲惨な歴史を繰り返さないためにも、公害について広く深く学び、未来の美しい日本のため、「博学」となっていただきたいものです。

 次回は、伊賀焼伝統産業会館を紹介します。WEBは5月2日(土)更新、新聞は5月3日(日)掲載予定です。

<施設案内>
四日市公害と環境未来館
開館時間 9:30〜17:00
休館日月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始ほか
観覧料 常設展および四日市公害と環境未来館は無料
プラネタリウム 一般540円、高・大生380円、小・中生210円
        団体(20名以上)2割引き、障がい者は5割引き
ほか特別展、企画展期間中は、別途観覧料あり

四日市市安島1-3-16 〒510-0075
TEL059-354-8065 FAX059-329-5792
近鉄四日市駅から徒歩約3分
JR四日市駅から徒歩約20分





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