2019年5月26日(日)

▼「母親が離婚した後、内縁の男が同居するようになり、加害者となって発生した児童虐待事例」だと報告書は語る。数多くみられ特異ではなく「特殊性にとらわれることなく、再発防止に教えられることは少なくない」

▼母親の内縁の夫から暴行を受けて遺体で見つかったブラジル籍の六歳女児の事件ではない。平成22年に鈴鹿市で発生した小一男児虐待重篤事件での県の検証委員会の報告である。教えられることの第一は、鈴鹿市への転居前の居住地(県外)から情報がなかったことである

▼第二に、姉兄が顔にあざなどの傷を受けていることが学校で問題視されていたのに、休みがちな小一男児のことは誰も気にしなかった。顔の傷について、姉が「階段から落ちた」、兄が「覚えていない」と話すことに緊急性を持とうとしなかった。学校、市の家庭児童相談室、北勢児童相談所は相互に情報を伝え合ったが、情報の意図が不明でどの機関が責任を持つか、最後まであいまいだった

▼要保護児童対策地域協議会も何度か協議したが協議するだけ。姉が弟の危機を学校に通報し、北勢児相が警察官と家を〝訪問〟するまで12時間を費やした。「医学的意味は小さくない」として、なぜ立ち入り調査ではなく「家庭訪問」かと報告書は指摘する

▼関係機関の連携が不十分で今後「同じ経緯をたどって悲劇を起こすことは断じてあってはならない」と結ぶ。外国籍女児の虐待死事例を検証する県の委員会の村瀬勝彦委員長(弁護士)は委員の一人。なぜ同じ経緯をたどったか、解明と今度こその再発防止に期待がかかる。