<みえ平成史>旧宮川村の台風21号豪雨 災害備え語り継ぐ

【大杉谷地域への唯一の経路が河川増水で崩壊した(大台町提供)】

平成16年9月、グアム島西南西海上で発生した台風21号。列島への接近に伴い三重県内では28日夕方から29日にかけて激しい雨が降り続け、県南部を中心に土砂災害が相次いだ。人的被害は死者9人、行方不明者1人に上り、一部損壊や浸水を含め6246世帯が住宅被害を受けるなど、平成では過去最悪となる被害を生じた。

津地方気象台のまとめによると、日本海側に停滞する前線に流れ込む南からの暖かく湿った空気と、日本の東海上にある高気圧の東風が合流し、非常に活発な積乱雲が発生。紀伊半島を北上して局地的に大雨となった。28日午後2時の降り始めからの総雨量は尾鷲で863ミリ、紀伊長島町三戸で1180ミリ。旧宮川村では29日午前8時40分から1時間に139ミリの猛烈な雨が降った。旧宮川村(現大台町)では、宮川流域で崖崩れや土石流が発生し、住宅が流されたり土砂に埋没するなどの被害が発生。高齢者(65歳以上)を中心に七人が犠牲となり、2人の重傷者も出た。家屋や道路、公共施設など被害額は合計約220億円に上った。

被害拡大の要因として、台風前から続いた降雨で地盤が緩むなど複数の気象条件が重なったことや、過去に大きな災害がなかったことによる準備不足と避難勧告などの災害対策活動の遅れが指摘された。町は19年9月、特に被害の大きかった滝谷地区に慰霊碑を設置。災害への備えを現在も語り継いでいる。