2019年4月7日(日)

▼「大きな会合で雰囲気にのまれた」のが「事実とは異なる」ことを言った理由なのだという。だとしても、脳裏にまったくない言葉まで口から出まい。福岡県知事選候補者の応援集会で、山口県下関市―北九州市の下関北九州道路計画について「総理や副総理が言えないから、私が忖度した」などと発言した塚田一郎副国土交通相が辞任した

▼安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相の地元を結び「安倍麻生道路」などと言われている。まったくの作り話なら何ともタイムリーなブラックユーモアだが、麻生財務相は「副大臣の忖度ぐらいで決まる話ではない」。「たまたま副大臣になった人にそんな力が」という与党関係者の声も伝えられている

▼政務三役の一翼を担う副大臣が形無しだが、だからこそ、なにくそという気になってつい口が滑ったか。政務三役さえ決定に参画できずに決まっていく不思議さに、これが忖度かと思い当たることがあったのかもしれない

▼下関北九州道路は平成10年、東京湾口道路など全国6ルートの「海峡横断プロジェクト」として閣議決定された。敗れたのが伊勢湾架橋を含む伊勢湾口道路である。昭和39年の国連のワイズマン地域開発調査団が提唱した歴史ある第二国土軸で、下北道路などとともに平成6年、地域高規格道路候補路線に指定されたが、大詰めでぽっと出の東京湾口道路に敗れたとされる

▼「政治力がなかった」と関係者は当時ささやきあった。20年に凍結された6ルートのうち下北道路の1ルートだけが復活した。「安倍麻生道路」というのも分からなくはない。