2019年3月14日(木)

▼うそつきの名人の話がある。1から10までうそで固めるのはよくないそうだ。9割本当のことを話す。真実味が増す上、うその上塗りでボロがでることもない

▼23年前、出荷した南紀みかんのパンフレットの素材に名古屋保健所からクレームがついた問題で、県農水商工部(当時)が処理を誤り、JA農協グループの抗議で地場産業振興の名目で約1億円の助成金を交付したことがある

▼当時の地場産業振興費は1団体の上限が約3千万円。1億円を3年に分け、石垣英一部長(同)は「振興費増額は私のかねての持論」。組織的隠ぺいはむろん〝堪忍料〟を税金でぬぐったとは認めなかった

▼うそつきの名人ならポンと手で膝を打ったかもしれない。事務処理ミスが相次いで入札を中止した県児童相談センターが、理由を「仕様書の見直し」にしていたのはどうか

▼センター幹部らが相談して決めたことで、本庁にも正しく報告していなかった。隠ぺいを報道陣に問われ「見直しを検討していたことも事実」として認めなかったが、それだけで入札を中止したかと突っ込まれ、口をつぐんだという

▼不祥事や事務処理ミスの再発防止策を県が公表して5日目。主導した鈴木英敬知事にはいい面の皮だろうが、うそつきの名人も「手際が悪くなったねえ」と苦々しい表情になったのではないか。鳥羽港改修を巡る公文書改ざんを思い出す向きも多かろう

▼せっかくの再発防止策がくず同然の印象になったのはご愁傷様だが、むしろ喜ぶべきか。再発防止策に多言はいらない。事に直面した時どうすべきかを徹底することだ。