<地球の片肺を守る>キサンガニ編 コンゴ盆地の森林を測る

【日本が供与した車両と船外機が調査で大活躍】

ボンジュール。私は今、コンゴ盆地の心臓部キサンガニにて、コンゴ人の同僚数十人と間近に迫った森林資源調査の準備をしています。

この調査は、0・5ヘクタール程度の面積を区切って、そこに存在する全ての樹木について、樹種、本数、直径や樹高などを計測し、その材積(m3)そして炭素蓄積(トン)を調べるというもの。それをコンゴ全体で数百カ所ほど行って、衛星の画像と一緒に分析することで、「地球の片肺」がどれだけ二酸化炭素を貯蔵しているかを推定しようとする試みです。

文章で書くと数行ほどで終わってしまう森林資源調査ですが、その実施には大変な困難を伴います。調査する場所は無作為に選ばなければいけません。網の目のように道路が張り巡らされた日本でも大変なこの調査を、日本の約3倍の面積を有する未開の森林地帯で実施しようというのです。

今回は5チームを編成し、各チームがそれぞれ1カ所ずつ、計5カ所で調査を行うことになりました。

あるチームはボートで丸1日コンゴ川を下って調査場所に向かわなければいけないとのこと。それだけではありません。やぶを伐開し小道を作る作業員、野営の際には料理人なども雇う必要があります。調査地域の村の酋長(当地ではチーフと呼ばれています)には砂糖やマッチなどを持参して調査をするための許可も得なければいけません。

安全面を含め、さまざまな制約があるため、私は彼らと行動を共にできません。従って、今回は中継基地となるキサンガニにて、コンゴ人同僚が行う調査の準備を支援しました。

「調査場所まで乗り合いバスとバイクで丸3日かかる」、「ボートの燃料は1000リットルは必要だ」…同僚から次々と寄せられる想定外のコメントに目を丸くしながら「もっとしっかり精査しろ!」と繰り返す、そんなやりとりの連続で、ついに声もかれ果ててしまいました。

気候変動の報告書に記された「森林減少によって年間〇〇トンの温室効果ガスが放出」の裏側では、こういった想像を絶するような調査が行われているのです。

今回のキサンガニ出張では、日頃滅多に見かけない日本人がやって来たということで、州政府から知事に表敬するように指示がありました。「コンゴ盆地の森林は地球の宝。その保全のために日本がこうして支援を行っていることを、ぜひ理解してほしい」そう知事にコメントし、固い握手を交わしました。

【略歴】大仲幸作(おおなか・こうさく) 昭和49年生まれ、伊勢市出身、三重高校卒。平成11年農林水産省林野庁入庁。北海道森林管理局、在ケニア大使館、マラウイ共和国環境・天然資源省、林野庁海外林業協力室などを経て、平成30年10月から森林・気候変動対策の政策アドバイザーとしてコンゴ民主共和国環境省に勤務。アフリカ勤務は3カ国8年目。