<検証・三重県予算>10月から保育無償化 待機児童ゼロ、道のり遠く

【幼児教育・保育の無償化が始まる保育現場=津市内の子ども園で】

10月から始まる幼児教育・保育の無償化。保護者の負担軽減につながるが、なぜか三重県は「今まで保育所を利用していなかった保護者からの利用申請が増えるかもしれない」(少子化対策課)と焦りを見せる。

〝焦り〟の背景にあるのは、平成31年度に「待機児童ゼロ」を達成すると掲げている「みえ県民力ビジョン」の目標だ。

一方、無償化されれば幼い頃から子どもを保育所に預けて職場復帰を目指す保護者が増える。そうなれば、保育所は増加する保護者の需要を受け入れることができず、待機児童が増えるという構図だ。

県内の待機児童は平成27年度当初の時点で98人に上った。県は段階的に待機児童を減らし、31年度はゼロにすることを計画。保育士を目指す学生に資金を貸し付けるなど支援策を進めてきた。

しかし、待機児童の解消は計画通りには進まなかった。30年度は四日市▽名張▽亀山▽菰野▽明和―の3市2町で待機児童が80人発生。保育施設はあっても保育士が足りないことが主な理由だ。

県によると、保育士の半数が7年未満で離職。昨年7月の調査では、資格を持っていても保育所では働かない「潜在保育士」が約1万1000人に上った。多くは賃金や残業など労働環境への不満を抱えていた。

保育士の離職防止や潜在保育士の復職が求められるが、残業や長時間労働の解消といった勤務環境の改善で保育士をつなぎとめることしかできないのが現状だ。

31年度当初予算案で打ち出したのは、保育士の仕事と家庭の両立を応援する上司「ホイクボス」の普及活動。県内の3施設をモデル園に指定し、業務改善のアドバイザーを月に1回ほど派遣する内容だ。

業務内容の見直しだけでなく、県内3市には保育士の業務を補助する「保育支援者」を配置する。掃除や片付けなど保育士の資格がなくてもできる業務を担うことで、保育士の負担軽減を図る。

ただ、ホイクボスの普及も保育支援者の配置も実施対象が限定的で、待機児童解消への道のりは遠い。「無償化が始まる10月よりも早めに申し込む人も出てくるのでは」(県職員)と早くも白旗を上げ始めている。