<検証・三重県予算>県作製の啓発品 「紙袋」に効果あるか

【県の予算で作成した「啓発用」の紙袋=三重県庁で】

伊勢志摩サミット、三重とこわか国体・とこわか大会、インターハイ、リニア中央新幹線、動物愛護推進センター、観光キャンペーン―。三重県関連のイベントや事業で、たびたび登場するのが「紙袋」だ。

おおむねA4用紙より少し大きいぐらいだが、中には少し幅広のサイズもあったりする。いずれも本体は雨水などにぬれないようコーティングを施し、樹脂製の取っ手も付いている。立派な造りである。

一部当たり作成に90円ほどがかかるという。財源は県の一般会計予算や県が負担金を支出する団体の事業費など。つまり税金だ。「極めて厳しい」とされる財政状況でも、なぜ紙袋を作り続けるのか。

紙袋を発注する部署に尋ねたが、全員が「啓発に必要」と答えた。イベントや街頭啓発でチラシなどを入れて配布しているらしい。受け取った人が紙袋を手に街を歩けば、啓発の効果があるのだという。

しかし、これらの紙袋を手にする県民を、記者は一度も目にしたことがない。一方で、よく見かけるのは公文書を入れて持ち歩く県職員の姿。それも、屋外ではなく県庁や県議会議事堂などの庁舎内だ。

「啓発品」と称して「職員用」として使っているのでは。そんな疑いを抱いた記者が県庁内で調べた。さすがに「職員用」と言い切る部署はなかったが、そう感じざるを得ない声が職員から寄せられた。

「結構な量が集まってくる。一つあれば十分だが」と話すのは、県庁で勤務する中堅職員。ある若手職員は「持って外を歩けば一目で公務員だと分かってしまうので使ったことはない」と切り捨てた。

職員らの間で「よく見る」と話題に上がっていたのは「人権」の紙袋だった。県人権センターが約20年前から毎年度、9千部を発注している。人権に関する講演会などの参加者に配布しているそうだ。

ただ、不自然なのは9千部のうち3千部はセンターではなく、県庁に届くということ。各部に所属する人権危機管理監が受け取るそうだが、センターは紙袋の最終的な行方について把握していなかった。

それでも、センターは「紙袋の効果はある」と言い切る。31年度当初予算案でも作成費用に約90万円を計上した。「見直しを検討したことがあるか」と問えば、こう返ってきた。「おそらくない」

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「乾いたぞうきんを絞っているようなもの」(県職員)と表される県の予算編成。限られた予算をどう生かすのか。本当に切り込める余地はないのか。五回の連載で検証する。