<地球の片肺を守る>大統領選挙 今まさに「民主化」の途上に

【所狭しと掲げられた選挙の横断幕】

ボンジュール! 今回は昨年12月末に実施された大統領選挙をテーマに書かせていただきます。

私が現在派遣されている「コンゴ民主共和国」は、1960年に「コンゴ共和国」としてベルギーから独立して以来、これまで3人の大統領が、いずれもクーデターや暗殺などを経て誕生してきました。

こうした中、今回の大統領選挙は、現職カビラ大統領が、憲法で定められた最長任期を終えた後、選挙を2度(期間にして約2年間)延期した中で行われました。現職大統領が憲法上の制約から立候補しなかったため、「選挙を通じた政権交代」を実現できるかが最大の焦点となりました。

そうして迎えることとなった今回の大統領選挙。選挙延期、結果の不正操作、選挙の無効化による再選挙…あらゆるシナリオが想定される中、当初心配されていたような大きな混乱もなく選挙が実施され、少し遅れましたが、1月下旬に野党候補の一人が新大統領として選出されました(選挙結果の不正操作などに関する異議申し立ては棄却)。

この選挙結果に対し、早速、日本政府も外務省談話で祝意を表し、山田外務政務官が当地を訪問、当選を果たした次期大統領ほかと会談を行いました。

私はコンゴ政府のスタッフであり、今回の選挙結果についてコメントする立場にありませんが、「選挙を通じた政権交代」という所期の目的が平和裏に達成できたことについては正直、大変安堵(あんど)しました。

今回、このコラムを書くにあたって、何気なくインターネットで「民主主義」を調べてみました。「政治学では一般に自由で公正な選挙が定期的に行われていることが民主主義の最低限の条件」とのこと。

そういった意味では、コンゴは今まさに「民主化」の途上にあると言えるのでしょう。では、日本はいつ頃、民主化を実現したと言えるのか。いずれにしても、国の誕生からたった60年、この国の今後の発展を、少し距離を置きながら、冷静に温かく見守っていきたい、改めてそう思いました。

実は今回の大統領選挙では、私たち国際協力の専門家は安全上の問題から、2週間ほど日本への一時退避を強いられました。先日の新大統領の就任をもってその措置が解除され、関係者はキンシャサに帰還することができました。

大統領選挙への対応のため、当地で留守番役だったJICA事務所長の掛け声の下、少し遅めの新年会? が企画され、久しぶりに皆の笑顔が集いました。

【略歴】大仲幸作(おおなか・こうさく) 昭和49年生まれ、伊勢市出身、三重高校卒。平成11年農林水産省林野庁入庁。北海道森林管理局、在ケニア大使館、マラウイ共和国環境・天然資源省、林野庁海外林業協力室などを経て、平成30年10月から森林・気候変動対策の政策アドバイザーとしてコンゴ民主共和国環境省に勤務。アフリカ勤務は3カ国8年目。