2019年1月1日(火)

▼豚コレラ発生に伴い岐阜県の豚の殺処分は旧年中に終わったが、感染経路は未解明で、イノシシ感染源説まで広がりつつある。イノシシにとって迷惑なことではないか

▼豚コレラは世界で猛威を振るうが、半分近くの感染経路が分かっていない。多くは人や物、家畜の移動が原因で、イノシシ感染源説は比較的新しい。岐阜県畜産研究所まで汚染されたが、イノシシの接近は確認されていない

▼農林水産副大臣が「飼養衛生管理基準の徹底が不十分。大きな油断があった」と岐阜県を非難した。同省調査で、専用の衣服や靴の着用が不徹底で、糞便が付着したり、野良ネコが住みついて子豚や胎盤を食べていたという

▼嗅覚が鋭く、地中のイモやキノコなどを難なく探して強力な鼻で掘り起こしてしまう。イノシシは三重県の獣害被害でもトップ。憎むべき害獣ではある。平安以前の建立とされる外宮の末社、伊我理神社の祭神は伊我利比女命(いがりひめのみこと)で、由来は「猪狩」。イノシシを狩る女神だ

▼猪突猛進、イノシシ武者など、見下しているかのことわざが知られるのも嫌われ者だからだろうが、実際は警戒心が強く、知恵が回るという。安倍晋三首相は昨年の神宮での年頭会見でイヌ年にちなみ「声なき声に耳を傾けて感覚を研ぎ澄まし、国の進むべき道を見定める」と語ったが、結果はイノシシ武者的な手法が目立った。今年は「決してひるまず、国益めざしてまい進する」と言ったりはしないか

▼世界は自国ファーストの荒波に揺れる。猪突猛進より警戒心と知恵を巡らしてほしいと年頭に当たり願う。