<1年を振り返って>過大補助金で初の百条委 松阪の集会所改築

【11月6日、百条委員会で証人として尋問を受ける田中市議(右)=松阪市役所で】

7年前の三重県松阪市下村町の自治会集会所改築で過大な補助金支出があったとして市議会は初の百条委員会を設けた。当時の自治会長だった田中正浩市議を証人に呼び、高い工事金額で市に補助金を申請し、安い額で業者に支払った経緯を尋問した。公費に対する意識の低さが浮き彫りになった。

自治会は工事に971万円かかったとして補助金の交付を申請し、市は480万円を助成したが、実際の工事代は845万円だった。

今年3月に地元男性から住民監査請求を受けた市監査委員は4月、市に是正措置を勧告。市は6月、自治会に対し本来の補助額との差額分に利息を上乗せした85万円を返還するよう命じた。自治会は過大分だけ返還し、利息の支払いは百条委の推移を見守って考えたいとしている。

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市議会は真相解明と再発防止のため百条委設置を求める男性が出した請願を可決し、百条委は8月に発足した。地方自治法一〇〇条に基づく百条委は証人尋問で話を突き合わせ、事実を確定していく。理由なく証言を拒否したり偽証した場合は告発できる強い調査権を持つ。

11月6日の証人尋問で田中氏は「845万円で契約したが、後から天井の真ん中が下がっているので梁(はり)も直すことになった。天井をめくってみないと分からないとされたが、その工事を含んで971万円」と話し、「補助金の申請は後で変更がきかないという意識があった。業者には考えられる高い方で市に申請してくださいと言った」と説明した。

工事は実際には845万円で済んだが、「奉仕作業の形で電気工事や撤去工事を自治会が手伝った。手伝うことで845万円で安くやってくれたという意識だった」と語った。

委員が「余分な補助金は本来返さなければいけない」と指摘して当時の認識を質問すると、田中氏は「その当時は間違いないと思っていた。監査委員から指摘を受け、あかんのやと思った」と述べた。

非公開の尋問で業者は「971万円の工事費を圧縮してほしいと自治会に頼まれ845万円に下げた。自治会が自治会内で報告した後に補助金申請は修正されるものと思っていた」と答えたという。

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田中氏は3年前の市議会解散請求(リコール)運動で先頭に立った。図書館改修関連議案の再否決後、山中光茂前市長が突然辞職を表明し、田中氏ら山中氏支持者らがリコール運動を始めたが、署名が必要数に届かず不成立に終わった。追い込まれた山中前市長は自身のキャッチフレーズ「1円たりとも税金をムダにしない」に反し、辞職しなければ実施せずに済んだ市長選と市議補選の費用1億円余りを税金から支出させ、任期半ばで市政を投げ出した。

田中氏は市議補選に出馬。補選に向けたビラの中で山中前市長は田中氏について「リコール運動では、準備の段階から署名運動まで裏方として、また多くの人々を結ぶ要役として懸命に活動されました。リコール署名は田中さんが居なければ実施まで至らなかったと思います」「心から信頼しています」と紹介している。結果は落選。昨年の市議選で初当選した。

リコールは失敗したが、思いは伝わったようで、現在議長を務める中島清晴議員は今年7月11日の市議会で百条委設置請願の採決を前に、「リコール運動の時、議会は機能していない、市民目線になっていないと吹聴された。今はしっかり議会を機能させ、より権限の強い百条委員会を設置した上で徹底的に調査しなければならない」と討論し、田中氏に真相をたださなければならない百条委設置に賛成した。

同市の自治会予算と住民協議会活動交付金は約2億3800万円に上る。市の審議会「住民自治のあり方検討会」が昨年発足し、市は自治会や住民協に地域組織の一本化や地域予算の一元化を提案した。市と住民組織の関係は転換点を迎えているだけに、今年度内にまとめる百条委の最終報告を注視したい。