2018年11月15日(木)

▼15件の性的暴行を重ねたとして、強姦(ごうかん)致傷などで津地裁は裁判員裁判で初めて無期懲役の判決を下した。昨年は三人の女性に対して乱暴して強姦致傷などに問われた男に懲役20年の判決が出ている。裁判員裁判の量刑は厳しいという評もあるが、強姦罪を110年ぶりに見直した改正刑法の効果は出てきているといえるか

▼昨年の懲役20年判決は、三人のうちの一人、16歳の少女に包丁を突きつけて自宅へ連れ込んだ逮捕監禁致傷罪が加わっている。今回の無期懲役では、件数の多さと腹部を殴るなど抵抗を抑圧しようとした際の三件の強姦致傷罪が特記され、それぞれ「相当に重い位置づけ」「突出していて悪質」という事件の全景を構成する重要な要素になっている

▼無期懲役を言い渡した田中伸一裁判長は被害者の心情に思いやりながらも「強姦致傷三件の傷害結果は重大とは言えないが、他の事件でも同様の結果が生じる可能性は十分あった」と述べた。先の懲役20年の判決でも、平手一男裁判長が「傷害の程度は重くないが、多大な精神的苦痛でその後の生活にも悪影響を与えた」

▼性的暴行と、その際の致傷とのどちらに量刑を決めるカギがあるのか。致傷があったから重刑となったので、なかったらもっと軽くなったと言っている気がした。改正刑法で性交の定義は広がったが、被害者の同意不同意の判断より性器に偏重し、司法の性の見方は旧態依然といわれる。致傷があるから合意ではないという論理を組み立てようとしてはいないか

▼取り調べが二次被害を招く旧態依然は断ち切らねばならない。