まる見えリポート 過大補助金、真相解明へ 松阪市議会初の百条委

【田中議員(手前)らが傍聴する百条委員会=8月29日、松阪市役所で】

7年前の松阪市下村町の自治会集会所改築で、工事の見積書と領収書がそれぞれ2種類作成され、自治会が高い方で市に補助金を申請し、安い方で業者に支払った問題を巡り、市議会は初の百条委員会を設けた。設置は、当時の自治会長で昨年の市議選で初当選した田中正浩議員を含め全会一致。問題化したのは市議選直前のため地元事情がちらつくが、真相解明と再発防止のため頑張ってほしい。(松阪紀勢総局長・奥山隆也)

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自治会は工事に971万円かかったとして補助金の交付を申請し、市は480万円を助成したが、実際の工事代は845万円で、自治会総会の会計報告に載っている。

7年前の工事だが、地元男性が昨年6月2日、市に情報提供して調査を依頼したところ、市当局に「かたくなに拒まれた」という。直前の同5月29日の市議選立候補予定者説明会に田中氏が出席した経緯が影響したかもしれない。

男性は今年3月1日、住民監査請求し、市監査委員は4月23日、市に対し是正措置を勧告。市は6月25日、自治会に本来の補助額との差額分に利息を上乗せした85万円を7月末までに返還するよう命じた。自治会は過大分を返還したが、利息の支払いは百条委の推移を見守って考えたいとしている。

市議会は男性が出した百条委設置を求める請願を可決し、8月9日に「地区集会所建設事業補助金交付事務に関する調査特別委員会」(6人)を設けた。

地方自治法百条に基づく百条委は証人尋問で話を突き合わせ、事実を確定していく。理由なく証言を拒否したり偽証した場合は告発できる強い調査権を持つ。今年度内に最終報告をまとめる予定。

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是正措置を講じた竹上真人市長は、「当時の自治会関係者からの聴き取りにより、着工後に増額変更がある可能性を見越して申請したこと、補助金制度に関する誤った捉え方をしていた旨の説明があった」としながら、「われわれの調査ではどこまで意図的になされたものなのか判明していない。2つの領収書が出てきたので結果的に不適切な受給であったと捉えざる得ない」と説明する。

ただ、企画振興部の家城斉和地域振興担当理事は「明確にだまし取る意思があったとは確認できなかった」としつつ、「知ってやったというところもあるので、その辺のことを鑑み、利息を徴収する」と話す。

一方、再発防止に向け竹上市長は「かなりの部分、性善説に立っていた。見積書の積算について営繕課とタイアップして妥当なのかチェックする」と改善策を示した。

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百条委の委員長には田中議員と同じ会派「無所属の会・みらい」の海住恒幸議員が就いた。百条委設置を決議した7月11日の本会議の討論で海住議員は聴き取り結果を交え、「工事を始めてみなければいくらになるか分からないと判断した屋根の傷みの追加発注をせざる得ない可能性があった。修正申告できないと思い込んでしまったと推測する」と述べながら、「実際は低かったのに修正しなかった。私も理解できない」として真相究明に向けて賛成している。

続いて討論した市民クラブの中島清晴議員は「1円たりとも税金を無駄にしないという高い理念を掲げ、山中光茂市政の下で事業仕分けが行われていた。行政側に忖度(そんたく)があったかは別にして、その時期に起こったことに大きな意味を持つのではないか」と指摘。中島議員は先月、2回目の議長に就いた重鎮で、見立ても大きい。

山中前市長は4年前、図書館改修関連議案が市議会で再否決された直後、突然辞職を表明。田中氏をはじめ山中氏支持者らが市議会解散請求(リコール)の運動を始めたが、署名が有権者の3分の1に届かず不成立に終わり、追い込まれた山中前市長は任期半ばで市政を投げ出し、辞職しなければ実施せずに済んだ市長選と市議補選の費用1億円弱を税金から支出させた。

中島議員は「リコール運動の時、議会は機能していない、市民目線になっていないと吹聴された。今はしっかり議会を機能させ、より権限の強い百条委員会を設置した上で徹底的に調査しなければならない」と痛烈な皮肉も浴びせている。